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さっくり

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検証、考察、まとめなど、中の文章を読み飛ばしても内容把握に差し支えないもの。 また、小説は掌編以下が目安。
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2022年10月の記事一覧

休刊日の噂

「休刊日って実は業界の怨霊を鎮める祭日なんだって」 「スクープで恨まれるのは報道の宿命かぁ。違うの? なら誤報、偏向とかの恨み?」 「……休みなく酷使された配達員や設備の怨霊を祀るの」 「身内?! しかも祀るほどの恨み」 「てなゴシップはどう?」 「いや機械も人もメンテは大事だよ?」

ふわふわふわふわ

「ふわふわがふわふわなら、それは至高のふわふわだと思うの」 「まず言ってることがふわっふわなんだけど?!」 「だからぁ、ふわふわがふわふわなの」 「無重力の蒸しパンとか?」 「天女の羽衣とかよ」 「長毛猫の浮遊霊は?」 「それだったら仔猫の綿雲包みとかにして。何その毛深いユーフォーは」

フラッフィ・フィーバー

冬。動物のふわふわが極まる季節。 動物園はふわ三昧。個性豊かなふわふわ達が所狭しと犇いて。 「ほら、ふわふわだよ?」 愛しい人の燥ぐ声。待ち焦がれた時間。もうこれだけで込み上げてくる。 「幾ら好きだからって泣くことなくない?」 感極まって鼻水がするり。あれ、何だか身体がふわふわする。

ふわふわのきもち

「屋根まで飛んで壊れて消えないシャボン玉ってある?」 「あれ、金属チューブでストローで膨らませるの」 「風船玉! シャボン玉ほどふわふわしないけど」 「屋根までは飛ばないか」 「気持ちはふわふわするんだけどね。匂いが好きでずっと嗅いでたら親に没収されたわ」 「それ、親はひやひやだよ」

温かい地獄

「夜が明けて欲しくない」 「どした?」 「運動会なの。望まなくても格付ける全員参加徒競走の闇」 「足遅いのか」 「泣きそう」 「悔しくて?」 「それは努力した奴だけの言葉、びり晒して注目浴びるのが惨めだって」 「同じ境遇のブービーが救われるよ」 「その理屈、小学生に通じる?」 「厳しい」

悪足掻き

「止まるって案外難しいと思うんだ。まっすぐ立って微動だにしないのは達人の技だし、寝ている間にも心臓が動くし地球は回る。僕たちは静止を続ける方が難しい世界に生きている。日頃からこうも動き続けてるはずなのに、どうしてこんなに全身筋肉痛なんだ」 「いいからほら、ストレッチするぞ?」

シーズン対応

「衣替えとハロウィンの仮装だと何が違うの?」 「気候に合わせて過ごしやすい服に切り替えてたのが衣替え。ハロウィンで夏のゾンビや冬の妖精に扮する人がいるでしょ? あれは季節がある地域に住んでた時の名残なの」 「古典のコスプレじゃないんだあれ」 「その記録に残ったから今も見られるのね」

冬の備え

「山も里も日も星も、もうすっかり様変わりだ」 「どこもかしこも冬支度だね、シカ君」 「おやその声はウサギ君。僕の背中の白斑も結構薄くなったよ。って君ちょっと見ないうちに真っ白に?! 燃え尽きちまった、にしては毛深いな。何が君をそんな風に」 「シカ君は、今僕達が何の話をしていたと?」

衣替えどきどき

「衣替え。ちょっとどきどきする響き」 「見慣れないギャップってのはある」 「そうギャップ! 不釣り合いなほどに燃える」 「似合ってる方が良いんじゃなくて?」 「ギャップがあってこそでしょ。カップルが互いの服を交換するプレイなんだから」 「衣替えにそんな意味あるの? 本当にあるの?!」

火祭りの洗礼

「世に問うって行為は、実は行為そのものを世から問われているのよ」 「問うたはずが問われていたと?」 「問うたつもりが問わされてるの。問うつもりなんかなくてもね」 「どうしてそんなことに?」 「炎上騒ぎってあるでしょう?」 「あー、飛んで火に入る虫」 「虫が飛んだら燃やしに行くのよ」

浮気相手

「でさ、何で浮気したのか吐かせたの」 「うん。魔が差した?」 「そう。放っとけなかったんだって。初めは危うさに惹かれて」 「あー」 「一緒に居ると凄く安らぐ。心根が綺麗。今は一人を選べないくらい愛している」 「それよく平然と語れるよね」 「だって私の事だもの。浮気は私の方だったんだと」