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【SH考察:008】神聖フランドル帝国はナポレオンによる帝政がモデルなのか

私は別記事※で、サンホラで<聖戦>と呼ばれる戦い、特にブリタニアとフランドルとの戦いは1500年代の話と仮定している。
しかし、現実のフランスが帝政化したのはもっと後、具体的には1800年代ナポレオンが台頭した時期だ。
そのため、作中の<聖戦>が1800年代であった可能性はないかを検証する。

※別記事はこちら


考察

いったん作中の流れに沿って、実際の史実と比較した。
先に表でまとめたものを見せるとこちら。

表:現実と作中の時系列比較(筆者作成)

フランドルがプロイツェンを滅ぼす

これは現実の国名で書き直すと「フランスがプロイセン(現ドイツの前身)を滅ぼす」となる。
1806年に、すでに1804年に帝政化したフランスはプロセインと戦い勝利。プロイセン全土を制圧、支配下に置いた。
帝政化のタイミングが違うのと、スイス(作中ではロンバルド)を滅ぼすのと順番が逆になっている。

フランドルがロンバルドを滅ぼす

これは現実の国名で書き直すと「フランスがスイスを滅ぼす」となる。
1798年3月5日、帝政化する直前のフランス共和国がスイスへ進軍。実質的に滅ぼし、フランスの援助のもと…というか傀儡化?した国が成立。
これ単体で見る限りは、史実と比較してもそこまで大幅な差はなさそう。

フランドルがカスティリアを滅ぼす

これは現実の国名で書き直すと「フランスがスペインを滅ぼす」となる。
1808年、すでに帝政化したフランスのナポレオンは、当時のスペイン王と園子を幽閉して自分の兄を王位につけるというムチャクチャを行う。
そのため、一応史実上、フランスはスペインの王位を奪ってはいる、という点で、作中の展開とは近い。
ただ、史実では、スペインはそのまま成すすべなく征服されたのではなく、がっつり独立戦争を起こして抵抗している。

帝政フランドルがブリタニアへ侵攻

これは現実の国名で書き直すと「フランスがイギリスに侵攻する」となる。1805年、すでに帝政化したフランスはイギリス上陸をもくろみ、ドーヴァー海峡そばに兵力を集める。
しかも、フランスは結局上陸する前に海戦で負けている。
これらの点から、作中とは戦うタイミングも展開も異なっている。

差異まとめ

これまでの流れから、類似点も相違点もあるため、それも羅列する。
念のため表も再掲。

表:現実と作中の時系列比較(筆者作成)

類似点:

  • スイス、イギリス、プロイセン、スペイン(および、それらがモチーフとなっている国)と敵対

  • 帝政化後にイギリス/ブリタニアに侵攻を試みるが失敗

相違点:

  • 国の侵攻順序が異なる

  • 現実ではほとんどが帝政化後に侵攻
    (個人的には、これは作中のほうが自然な流れだとは思う。複数の国を征服したから帝国化します、のほうが自然に感じる。ナポレオンは建前上、共和国の皇帝だよーという体裁で戴冠していて無理があるなと思った)

時系列以外で気になる点

作中の戦争は、国と国の間での宗教的な差異が影響しているように見える。
例えば、フランドルがブリタニア上陸後、グラスミアの戦いで、

殺す相手を愛する者や 祈る者がいることは忘れろ
邪教の使徒は根絶やしにしろ 眼を背けるなこれが<聖戦>だ

Sound Horizon. (2004). 聖戦と死神 第2部「聖戦と死神」~英雄の不在~ [Song]. On Chronicle 2nd.

と言っていたり、
ローザを庇ったアルヴァレスに対して、当時フランドルの捕虜でフランドル側として戦っているゲーフェンバウアーが

小娘といえど邪教の使徒、情けを掛けてやる必要などありわせぬ...

Sound Horizon. (2004). 聖戦と死神 第2部「聖戦と死神」~英雄の不在~ [Song]. On Chronicle 2nd.

と、フランドル側はたびたび「邪教の使徒」であることを理由に挙げている。
これらのことから、フランドルが他国に侵攻する理由として、異教を淘汰しようとしている可能性が挙げられる。

ただ、現実のヨーロッパで、宗教が主な要因で大きな戦争が起きるのは1600年代の三十年戦争が最後と言っていい。それ以降の戦争の主な要因は、宗教よりも利害関係になる。
このことから、作中の宗教を理由に掲げる戦争と、現実のナポレオンがいる1800年代を単純に結びつけることが難しいのだ。

結論

時系列でみても、戦争が発生した要因を見ても、そこそこ差異があるため、ナポレオン及びその時代背景を完璧にモデルにしたとは言い難い。
ただ、類似点もあるため、参考程度にした可能性がある。

現状、いったん作中の<聖戦>は1500年代とみなしたままにしておくが、もし今後新たな曲が登場して考えが変わったら、都度更新する。

―――

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他にもSound Horizonの楽曲考察記事を書いています。

更新履歴

2023/04/13
 初稿
2023/04/24
 サムネイル変更
2023/04/25
 微修正
2023/05/02
 歌詞引用元表記修正

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