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良質推理ゲーム『和階堂真の事件簿』のススメ ※ネタバレなし

例えば名探偵コナンや推理小説は好きでも、事件の真相・結末の予測はできないタイプの人。
脱出ゲームが好きでも、難易度の高いものをクリアできるというわけではないという人。
そのくせ謎が簡単すぎるとつまらなくてすぐに飽きてしまう、そんな人に向けて、今回ひとつのインディーゲームを紹介したいと思う。


和階堂わかいどうまことの事件簿 TRILOGY DELUXE

レトロなドット絵とハードボイルドなBGMの裏に張り巡らされたトリックを、貴方は見破ることができるだろうか。

『和階堂真の事件簿』紹介ページより抜粋
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000071632.html

もともとはスマホ版で配信されていた3つのエピソードと、さらに1エピソード足された合計4エピソードのセットだ。

Nintendo SwitchとSteamでプレイ可能。私はSwitchでプレイした。

王道舞台で予測できない結末を迎える4つのエピソード

刑事の和階堂わかいどうまことが関係する4つのエピソードから成り立っている。
刑事は少し武骨で、膝丈のコートを着た男。
いかにもな刑事像で、情報収集は自ら足で現場や関係各所を駆けまわって聴取していく。

エピソードひとつひとつの舞台設定はわりと王道で、推理モノとしての雰囲気づくりがしっかり構築されている。

怪しいカルト新興宗教との戦いを描いた【エピソード1 -処刑人の楔-】。
古い慣習が残る田舎の権力ある家での事件を描いた【エピソード2 -隠し神の森-】。
和階堂真に容疑がかかり、その潔白を証明するために奮闘する姿を描いた【エピソード3 -影法師の足-】。
嵐のせいで孤立した不気味な噂が流れる洋館で起きた事件を描いた【エピソード4 -指切館の殺人-】。

一見本当に王道で、二番煎じかと思う人もいるだろう。
ところがそうではない。舞台こそ王道だが、展開はやがて予想できない方向へ流れていく。

いきなり突拍子もないトンデモ設定は、それはそれで食いつきにくいというか人を選ぶことがある。この、王道から段々と予想できない方へ進んでいくストーリー展開がたまらず魅了される。

必要な情報を際立たせる洗練されたデザイン

グラフィックは見ての通り、いわゆるドット絵と呼ばれるものだ。
背景は緑がかったグレーで落ち着いた色で、その上に白と黒だけで作られた人物画が際立つ。

図:エピソード1の序盤
出典:Steamのゲーム紹介ページ

人物画はハイライトや影の概念はなく、黒いドットの線と白抜きだけで作られている。
昨今のAIが高度な絵を数秒で作る世の中で、必要最低限の情報量にそぎ落とされた絵柄だ。

だが刑事は刑事に見えるし、老人は老人、若者は若者、姿勢の良し悪しまでもが伝わる。
上の画像の場合、和階堂がコートを羽織って腰に手を当て、やや前かがみなのに対し、制帽を被った警官の姿勢の良さがわかる。

それから使う色数を押さえてあるため、事件現場の凄惨さや重要なポイントを示すビビットな赤色がわかりやすい。

このようにそもそものデザインが素晴らしいのだが、エピソードが進むにつれてさらに進化している。
例えばエピソード4では嵐で、薄暗い中雨が横殴りに降り地面を叩きつけ、雨粒が跳ね返る。そんな荒々しさがドット絵という細やかな表現がしにくそうな手法でも十分にわかる。

文章も素晴らしくて、登場人物たちはさほど長台詞を使わない。
しかし刑事は少々武骨だとか、高飛車な人物、弱っている人物、何か隠して良そうとか、短い文章でもその人物像が十分伝わってくる

短くても要点が伝わる文章を書く能力というのは、そのスキルを磨くための本が存在するほど、スキルとして磨こうとしないと洗練されない能力だ。

絵も文章も華美さは削りに削ってあるぶん、推理するために把握しておくべき人物像や証拠はしっかり伝わってくる。デザインとしての取捨選択が素晴らしい。

また絵柄はドット絵だが、文字はクリアタイプ(曲線部分が滑らかに見えるように作られたフォント)で、サイズも大きく可読性が高い。
レトロな雰囲気を持ちつつ、可読性や操作性は使いやすさ重視で人に優しい設計になっている。

雰囲気と演出を楽しみたいエンジョイ勢向け難易度

各エピソードは、証拠を集める捜査パートと、その証拠を整理して結論を導く推理パートを交互に繰り返す形で進行する。

捜査パートで集めた証拠は要点が端的にまとめられているほか、聞き込みが済んだ人物にはチェックマークがつく。つまり、まだ聞くべきことがある人物がいる場合はハイライトされる。

図:集めた証拠がまとまっているメモ
出典:Steamのゲーム紹介ページ

得た情報はここにまとまっており、逆に推理自体においては、このメモ内容以外のことはあまり気にしなくていい。

捜査パートでは、主人公のの脳内?で、壁に貼られた紙の問いかけに応じる形で証拠を整理し結論を導く。

図:証拠から答えを導く推理
出典:Steamのゲーム紹介ページ

このとき、問いと回答という形で証拠を整理するという前提のもとにメモを見ると、ちゃんと回答らしい文章になっている。
これは実際にプレイしてみないと伝わらないところなのでもどかしいが、問いと証拠のメモをちゃんと読めば、さほど迷わずに正しい証拠を回答として選択できるように工夫された文章の書き方になっている。

また、仮に選ぶ証拠を間違ったとしても、ペナルティらしいペナルティはないため、恐れず何度でもトライできる。

1エピソード約1時間という手軽さ

1つの事件が1つのエピソードで、その1エピソードあたりおおよそ1時間で終わる。2時間ドラマより短いが、中身は濃密だ。
前にも触れたが予測できないストーリーがエンディングを彩るし、その予兆が少しずつ途中から片鱗を見せる。

飽きずに最後までやり切ったらいつの間にか1時間、という感じだ。
手軽だからと言って、内容が軽いわけではない。濃密なのだ。

興味を持ったらプレイしてみよう!

Youtubeなどにも実況動画はあるが、まずは自分でいろいろ試行錯誤して解決まで導いてみることをおすすめする。

ちなみに、エピソードは1・2・3・4の順番通りにプレイすることを強くお勧めする

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