2023/08/22 人が恋に落ちる瞬間など見たことがない


羽海野チカ先生著「ハチミツとクローバー」が
全巻無料配信ということで、夜中にいそいそとケータイにかぶりついている。

ハチクロは実家に置いてきたもんで、なかなか読み返せず、久しぶりに読むと、(あぁそうそうこんなシーンもあったよね)と、懐かしい気持ちになる。

一巻で山田が真山を想って泣いているシーン、
「彼の恋もまたかなう事はないのかも知れない」
「ならばいつかこんな夕暮れに」
「彼も1人で泣くのだろうか」
「そんな事を思ったらまた涙が止まらなくなった」
わたしは好きな人をこんなに優しく想えるだろうか?
自分の都合で「好きだ」とか「さみしい」とか
「今は離れてても平気」とか思うけど、
相手をこんなに思い遣って想像する事って、
なかなか出来ないよな、と思った。

山田と森田の関係がとっても好きで、
一巻では森田を伸してるシーンも多くて好き。
いちいち美しい脚がスラリと見えたり、スタイルの良さが際立つ描き方、その隣に倒れる森田、
可愛くって愛しい
森田さんって常に自分勝手で協調性はないのに、ほんの些細な誰かの心の機微には目敏く敏感なところが好き。
そういう時の森田の描き方も本当に好き。
羽海野先生の絵、本当に命宿っててすごい。
大きく大胆に笑う森田さん、元気が出る。

「『世の中』なんて漠然としたモノに必要とされるより、『特定の誰か』に必要とされた方が、ヒトとして幸せなのでは?」
そうだよね。そう思う。

森田が兄馨に「お金 好き?」と聞かれて
一呼吸おき、はぐをふと思い出し、「うん」と返事するシーン。
あれは、何を考えてたんだろう。
はぐにどんな想いを馳せていたのだろう。

真山が山田をおぶって帰るシーン、
「何でオレなんかスキになっちまったんだよ」
とか言うシーン、本当に(真山腹立つー!!好かん!)という気持ちになる。
罪なやつだよ!本気で言ってるからね。

Chapter15の扉絵、大好きだった
大きくハグがいて、みんなが並んで歩いている。
同じ方向へ歩いているのに、違うところを見ている。
紅い紅いストロベリーフィールズ。

竹本のお誕生日に即席ツイスターゲームして、徐々に楳図かずおになっていくの好きだった。
束の間のギャグシーン、いろんなもののオマージュが多くて楽しいよね。ハチクロだけじゃなく、羽海野先生の作品全部そう。


竹本がはぐに「泊まっていって」と言われる晩
気になって家に寄った竹本に「甘栗たべたい?ナシは?」と咄嗟に手を取るところ、このシンプルな優しさ、それとも寂しさ?素直さとも言えるか、わたしの友人にとてもよく似ている。と思った。


真山が学祭前の陣中見舞い〜って、夜の学校に来て夜食奢る場面、みんなの「大好き〜」に乗じて真山に抱きつきたいのに、こんな時でも口に出せない山田。
いじらしい。
気づく真山、これまたいじらしい。
1人だけ目敏い男・森田が見兼ねて動き出す。
抱えた真山を乱暴に山田へ放る。
バグる山田。
可愛い。みんなが愛しい。
結局逃げた森田はマイペースに自分の作品へ打ち込んでる。
そんな森田を見て刺激を受けるはぐみ。
それを横で見てる竹本。
そうそう、これがハチクロ。
みんなが想っているのに、望む想いは自分に向いていない。
白い木片を竹本が見つける、
でもそれを形にするのは森田。
はぐのマグカップにこっそり仕込むのも、
ハグノートをちゃっかりちゃんと見てるのも、
そして自分で種明かししないのも、
森田の真骨頂で人間モテする所以。
ズルいよね、このめざとさ。
山田がお礼を言っても「何の事だい?」優しい。

葛西臨海公園の帰り、
遊覧船に乗りながらオルゴールが鳴っていて、
「懐かしいアニメの主題歌で」
「世界が美しいのは君をのせて回っているから、
という内容だ」と言っているけど、
今更ながら、あれはラピュタのことか。
あまり気にしていなかった。

森田さんがはぐにキスするシーン。
馬鹿だな、顔真っ赤にしてさ。
眠り姫だよ。
そしてロサンゼルスへ飛んでいくのさ。
(オレの欲しいモノ 全部
 手のひらにのせて
 その手を閉じもしないで
 乱暴に振り回して……)
この表現。
わたしだったら、
大切なものを掻っ攫われて、
自分がするように大切にしてあげもしない、
それをどんな風に思うかな。


Chapter24の扉絵
マーメイドあゆ
映画化した時、あゆは関めぐみさんが演じていたじゃないですか。わたしは本当に関さんのあゆが大好きで大好きで。
スタイルの良さ、目の力強さ、儚さ、幼さ。
この美乳マーメイドを見て思い出した。

あ〜〜〜〜
野宮さんが出てきた〜〜!!!!!
あ〜〜〜〜
山田とコンタクトを取ってしまった〜〜!!!!!
野宮さんはね、見た目がもちろんカッコよくて好きなんだけど、携帯を海に捨てちゃうようなところ、若さかもしれないけど、ほんとに気取ってる感じもなくて、その少し感じる冷徹さがまた、気を惹くよね。
いきなり長野に連れてっちゃうところも好き。
こんなことしても、ハズさないで正解みたいになっちゃうところ、カッコいいなと思っちゃう。


あゆが一斉プロポーズされて、
真山の気持ちを慮るところ。
花本先生が「努力するか、諦めるんだ」と言うけど、
(選択肢は本当は3つあったんだ)
(でも 2つしかないと信じていた方が道は開けるから)
(3つ目の答えを僕は 口に しない)
この最後の一つが何を指してるか分からないんだ。
努力も諦めも前向きなのか。
向き合うということなのか。
じゃあもう一つはなんなんだ。


野宮さん
意地悪に現実を突きつけて、傷付いたあゆを見て自分もきっと傷付いてる。
そういうところがなんか、器用なのに不器用で、いいよね。
そして、あゆを怒る森田よ。
あの男が怒るのはここだけでは?
あゆへの愛だよね。そして彼女の涙も掬い上げて手を取るの。愛なんだよ。あたたかい。

美和子さんや野宮さんたちがガラケーでコチコチとメールを打っているのを見て懐かしくて羨ましくなる。
一つ一つ面倒だけどたくさん打って消して改行して。
メール受信を知らせる音。
ノスタルジックですよね。う〜〜となる。

修ちゃんが、
「どの道も正しい、大事なのはどっちの道を選んでも それを『言い訳』にしないこと」と言う。
グサっとくる。
大人になるということは、自分の選んだ道に責任を持つことだと思う。

藤原設計事務所
山崎をダサくしよう大会が繰り広げられてるじゃないですか。
あの人たち、仕事ができる人たちで、いい大人で、それでいて全力で楽しいことにふざけていく姿勢、
かっこよくて憧れちゃうんだよね。

はぐが黄色と緑でチューリップを教える回、
説明も丁寧だし、講義内容もいいし、
モチーフも素敵で、わたしも受けたいなと思う。
花本先生が「子供が子供なのは、大人が何でもわかってるって思ってるところだ」って言う。
大人と言われれる年になってみて初めて理解できる。
大人なんて中身は大して子供と変わらない。
先生が言うみたいに、腰が痛くなったり、息切れしたり、そんなくらい。
大人だって、会えない人に想いを馳せて寂しくなる。
わたしも知ってる。

松島で棟梁が「不幸自慢禁止」といって六太郎を打つシーン。
ジーンとくる。
焦ったり心が狭くなったり追い込まれるとやっぱり物差しが全て自分の中身だけになってしまう。
全部自分の尺度で推測ってしまう。
だから、比べられない相手の境遇を勝手に比較して評価じみた事をしてしまう。
初めから比較できることなんかではないのに。
それを知って、自分の行動を制御できるか。
それが出来たら、大人への一歩じゃない?

この漫画の中で自分は誰に恋するかな、と今まで何度も思ってきてダントツで野宮さんだったのだけれど、久しぶりに読み返してみて、もちろん野宮さんやっぱり好きなのだが、晋さん、いいな。
言葉は多くないが、ちゃんと見えていて、優しくて、温かい。健全な大人だ。


山田が、りかさんと真山の背中を見て泣きながら特盛カツ丼を食べる。
(あなたがほかの人をどれだけ大事にしていても、それを見せつけられても)
「キチンと起きて」
(ポキリと折れずに生きて行けるように)
「せいいっぱい仕事をして」
「わたしの心がぐしゃっと潰れないように」
強くなる準備をしているんだ。
正確には、強くなんてなれないけど、これから転んでも立ち上がれるように、起き上がる練習をしているんだ。涙が出る。

結局声が聞きたくなって山田に電話する野宮さん。
山田の不自然な明るさ。
ちゃんと掬ってくれる。
そこから本当に車飛ばしちゃえるところが大人の強さ。子供には選べない選択肢。
時間が解決してくれる選択だけど、やっぱり自分が泣いている時にその選択肢を選んだ人を特別と思ってしまうのは当然。
誰だって選択に意味を持たせたいじゃん。
明るく振る舞う健気さに、抱きしめたくなって一晩車を走らせる野宮さん、山田にゾッコンで、愛しい2人。
「信じらんねぇっ」っていうのは、きっと自分に対しても言ってるんだな。
それでいて物理的にすれ違ってる2人。
本当に愛しい。 
好きな子の手を取ること、簡単だけど、簡単じゃなくて、とても大切なこと。

砂丘を2人で歩く。
「クツをお脱ぎよ」
「どうしようもなくなったら オレを呼びな」

山田が何度も何度も毎年律儀に思い出す。
真山の姿を探した学祭。
大人になると、こういう思い出できなくなるなぁ。
だから尚更尊く感じてしまうよなぁ。
事実から目を背けないで、苦くても不味くてもちゃんと噛んで飲み込もうとしてる山田。
一緒に笑ってくれる美和子さん。
わたし、美和子さんみたいになりたい。

Chapter57の扉絵
オフィーリアみたいで好き。
暗くて光っていて鮮やかな花。
終わりが始まる。

野宮さんが山田に、はぐの隣を歩けと言うところ、
彼は20代後半くらいだと思ってたけど、この頃には30代になっているんだな。
まだわたしより年上だ。


まさかの、はぐ拉致回からは無料で読むにはサービス登録が必要ということなので、ここまで。
実家に帰れば大切にとってあるコミックスがあるので、そちらでちゃんと結末を見届けます。

いわゆるエンタメというかサブカル(もはやサブではないかも)で1番好きで1番わたしというものを形作るピースとなっているものは、圧倒的に漫画と音楽で、お芝居や映画、本ももちろん大好きだけど、やっぱり何をおいても「好きなものは?」には「漫画」だな。

大好きな作品は何度でも読み返したいタイプで、
(そうそう、そうなんだよね)と思い出す感覚や、(これは新しい発見)という新たな一面との遭遇、
そして、何度見てもおもしろい!っていう感動。
この世には漫画家さんはごまんと居て、作品はさらにその何十倍も存在していて、素晴らしい作品に出会うたびに「もっと早く出会いたかった!」と思うのに、新しい作品に出会う時間を割いてまでも、大好きな作品は読み返したくなるもので。やはり今まで出会ってきた作品は素晴らしいものなんですよね。
こうやって1人で毎回感動してる。

では、また漫画の海を彷徨ってきます。

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