見出し画像

ヱビスビール

[ 日本語雑話 ]

高校に入学したばかりの生徒に五十音図を書かせるのは、結構おもしろい。「ばかにするな」という勢いで書き始めた高校生は、ヤ行とワ行で大抵行き詰まる。

やいゆえよ

わゐうゑを


次にカタカナで書いてごらんと言うと、これがまた大抵行き詰る。

ヤイユエヨ

ワヰウヱヲ


次にローマ字で書いてごらんと言うと、混乱をきたす。

ti と chi
tu と tsu 
si shi
hi と fi
ってどっち使うの?
とそのローマ字の区別の意味がわからない。


次に、「いろは」を書いてごらんと言うと、大抵、途中まで書いて、最後まで行きつけない。

基本なのだが、意外とそういう基本を身につける機会がなかったかということがわかる。


カタカナの「」、「」を説明する時、前者は「ヰセキ農機」という例を出すのだが、殆ど分かってもらえない。

後者は「ヱビスビール」を出すのだが、これも微妙である。


ところで、「ヱビスビール」の「ヱ」はワ行なのだが、不思議なことにビール本体には「YEBISU」とヤ行で書かれている。「WEBISU」とか「EBUSU」とあってもいいところだ。


この事情をサッポロビールのHPでは次のように説明している。

Q.恵比寿駅のローマ字はEBISUなのに、ヱビスビールはなぜ「YEBISU」と書くの?
A.江戸末期から明治中期にかけて、日本語の外国人向け表示には「エ」を「YE」と表示したものが多くありました。例えば江戸Yedo、円Yenなどです。これは日本語を初めてローマ字表記したポルトガルの宣教師が、当時(16世紀)の日本人の発音を聞いて「YE」と表記したものです。しかし、日本語の「エ」の発音は、その後変化して江戸時代の間に「E」となったのに、外国人は16世紀の日本語表示のまま、「E」とするところを「YE」と書いていました。このため、日本人は最初「エ」は「YE」と書くものだと思ったようです。ヱビスビールも明治23年に発売以来、商標のローマ字は「YEBISU」であり、今日でもこれを踏襲しています。

一筋縄でいかないのが日本語である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?