第155話:れんげみち:父の死
その日 僕の道を
陽があたたかく照らしていた
春が春らしく輝き始めた
田んぼのあぜ道
れんげが一面に咲いていた
おばあちゃんが乳母車を押し
おじいちゃんが鍬をかつぎ
おやじの引くリヤカーを
おふくろが押し
そうして時が
静かに流れていた
決して楽とは言えず
決して豊かでもなかったが
ただ静かに時は流れ
人のために生きることが当たり前だった
限りない
そして無自覚な善良が
そこにはあった
その生き方はちいさくて
何か別の
何か違う生き方があるような気がしたが
春の日