拙作の設定メモの蔵出し(東方二次創作)

いさしろ通

 自分は東方projectの二次創作をしております。
 拙作『兎は如何様な夢を見る』(東方創想話にて全編公開中)は、月の都で暮らす軍属の玉兎、鈴瑚と清蘭の様子を書いた作品になります。

 拙作を書いている時には設定を作り、メモに書き留めていました。けれども結局いろいろな都合で本編では深く書かなかった部分がいくつかあります。
 今回は、そんな設定のいくつかを蔵出しします。なんかもったいないと思ったので……。
 一応、設定集のようなものなので作品本編を未読でもお読みいただけます。

 基本的に、原作には存在しないのに自分が幻覚を見すぎた設定を掲載しております。そのため二次創作の色が強いので苦手な方はご注意ください!

 今回は、『①玉兎遠隔群体電波通信網』、『②玉兎の戦没者の森』、『③玉兎の訓練兵・同期11名』の3つについて蔵出ししていきます。

○玉兎遠隔群体電波通信網

 Lunatic Signal Cloud、ルナティック・シグナル・クラウド。省略してLSCやクラウドとも呼ばれる。
 玉兎が持つテレパシー交信能力をより効率的に運用するために整えられた、テレパシー補助機構。
 名称は機構設立時に公募され、当時綿海姉妹のところで暮らしていたとある玉兎のものが採用されたらしい。

 生来、玉兎は遠隔地にいる同種と交信する能力を持っている。集団で会話することはもちろん、個々で通じ合って限られた者だけで会話することも、受信したメッセージをリアルタイムではなく手紙の様に自由なタイミングで再生することもできる。
 しかし月の都など、玉兎が密集する地域ではメッセージが混ざり合い、うまく交信ができない問題も起きていた。

 そのような密集地域での混線の対策として作られたのが、玉兎遠隔群体電波通信網だった。複数の玉兎の術者が、交信用電波を整理するための術式を展開している。玉兎は、その術式の中へアクセスすることで、混線を予防しながら交信することができる。
 あくまでも術者は電波整理用の術式を作り出しているだけなので、何処からアクセスがあったかとか、どのような内容のメッセージなのかとか、そういったことの読み取りはそもそも技術的に不可能……ということにされている。

 一般的には専ら噂話やら、何気ない日常のメッセージのやり取りやらに用いられている。
 また、軍用など特定業務を目的にした玉兎遠隔群体電波通信網も作成されている。軍用玉兎遠隔群体電波通信網の術者は情報部門配属であることが多く、電波特殊技能兵として所属している。

 一般向けに運用されているLSCでは、近年『夢』の共有という文化が盛んになっている。玉兎たちが自分用に作った催眠をLSC上で配信し、他の玉兎も同じ催眠内容を体験できるという内容のもの。
 『夢』の内容は多種多様で、軍属の玉兎が戦地として赴いた地上や異界の景色を再現して穏やかに過ごせるように再構成したもの、想像力豊かな玉兎が深海を冒険する様を作ったもの、普通の玉兎が何気ない家族や友人とのやり取りを綴ったもの、独り身の寂しい玉兎が理想の恋人との甘々な生活を夢見たものなど、枚挙に暇がない。人気の高い催眠を配信する玉兎は人気配信者と呼ばれ、一定の支持層を得ているらしい。

 LSC上では必ずしも本名を名乗る必要はなく、クラウドネームと呼ばれるLSC上の名前でやり取りをすることも可能になっている。大抵の玉兎は本名でLSCにアクセスしているが、上記の『夢』の共有の配信者は個人特定を避けるためにクラウドネームを名乗っている。(あとは地上に脱走した玉兎の鈴仙も、偽名でLSCにアクセスしている)
 なお、クラウドでのおしゃべりに熱中しすぎて現実での生活がおろそかになる玉兎をクラウド中毒者と呼ぶ。

 地上浄化作戦後、地上に取り残された玉兎たちの中にはLSC上での交流しか寄る辺がなく、日がな一日LSCでのやり取りや、配信される『夢』への没頭で過ごし、地上での生活に移行していかない玉兎も多いとか。
 イーグルラヴィの電波特技兵も地上に残留したことから、部隊の軍用玉兎遠隔群体電波通信網はいまや地上用玉兎遠隔群体電波通信網となっている。そこは地上に残留した玉兎たちの憩いの場になっているとか。月とは異なる地上の文化に触れた影響か、24時間放送のラジオ番組なんかも出来上がっているらしい。

○玉兎の戦没者の森

 裏の月とも表の月とも異なる場所に存在する空間。
 表の月と裏の月の境界辺りに入り口がある。荒涼とした表の月のような場所を進むと、緑豊かな森が存在している。

 穢れがない月の世界では、物は永続であり、死んでもそれは状態が変化しただけとしか捉えられない。存在は永続なのだから、生きていても死んでいても同じことだ。月の民は生や死といった穢れの概念を忌避している。それだけに生きている状態と死んでいる状態になんら差はないという意識が根付いている。事故や不慮の怪我で起きた死は、本来そこまで忌避されない。
 しかし、戦没者となると扱いは少々異なる。かつて地上では、争いにより穢れが満ち、穢れは生命に寿命をもたらした。月の都における現在の価値観でも、争いは穢れをもたらすものとして、忌むべきものとされている。故に、争いにより死んだ戦没者というのは、忌避すべき穢れそのものであり、月の都から排されるべきものだった。

 戦没者となるのは、いつも奴隷階級の玉兎だった。戦没者となった玉兎たちは、二度と月の都に戻ることを許されない。穢れたものとして存在さえ亡き者にされた。月の民にとって、玉兎の命などその程度のものだった。
 その状態に異を唱えたのは、かつての功績から神性を得て、多少なりとも月の民の立場に近づいたトゥルイエ(兎児爺)と呼ばれる玉兎たちだった。
 彼らの訴えにより玉兎たちは、表の月とも、裏の月とも異なる地点に存在するが、確かに月の中に位置する異界に、玉兎の戦没者たちを弔う場所を設けることを許された。

 戦没者の森には、戦地で亡くなった玉兎たちの亡骸が可能な限り埋葬されている。そうでなくても、中心地に並ぶ石碑には戦死したすべての玉兎の名前が刻まれている。
 玉兎たちの亡骸がどう作用したのか、初めは何もなかった土地は、次第に緑豊かな森となっている。動物が生息しているのかは、よくわかっていない。
 死者たちのための空間でありながら豊かに息づいている木々の様子は、生命の生死と距離をとった月の都とは異質の空間になっている。

 なお、地上浄化作戦の失敗によってイーグルラヴィに所属していたほとんどの玉兎は地上に取り残された。その後、月日の経過によって兵士たちの穢れの除去には多大なコストがかかること、そもそも作戦に失敗した玉兎は不要であることから、残留兵たちが月に戻ることは絶望視されるに至った。
 月の都ではイーグルラヴィの兵士たちに月の兵士としての名誉を与えようとするために、戦死者として扱い戦没者の森の石碑に名前を刻んではどうか、という論も出た。これは玉兎の世論で大きく声が挙がったもので、月人たちも地上浄化作戦の裏の事情を知っているだけに、戦死者として扱ってもいいのではないかという意見が優勢気味だった。

 しかし地上浄化作戦の責任者だった稀神サグメが「玉兎たちは地上でまだ生きている」と主張(筆談)したことが決め手となり、イーグルラヴィ所属の玉兎は月の戦死者として扱わないことが決定したらしい。

○玉兎の訓練兵 同期11名

 鈴瑚、清蘭、鈴仙をはじめとする、玉兎の新兵訓練所のとある代の11名について。

◆優秀で自信家だった『彼女』
 名前は華育(Kaiku)。
 リーダーシップの持ち主で、玉兎の中ではそこそこの名家の出だった。すらりと整ったモデル体型をしている。
 訓練兵時代、はじめは周囲と衝突しがちだったが、少しずつ精神性も成熟していき、リーダーとして認められていった。
 訓練兵時代最後の総合成績順位は、11名中2位。指揮能力訓練の成績は安定して1位。
 同期の中で最初に戦死した。訓練兵時代を終えて、配属された部隊の初陣で戦死。最期の戦場では、華育も部隊も最善のパフォーマンスを発揮していたが、それでも覆せない状況の中死亡した。

◆穏やかで周囲の心配ばかりしていた【彼女】
 名前は芽有(Meiyu)。
 大兄弟の上半分のそのさらに真ん中に産まれ、小さなころから周囲に気遣って生きてきた。同期の中では一番の長身でとても見つけやすい。
 訓練兵時代も同期同士の仲介役を担っていて、どの同期ともうまくやっていた。
 訓練兵時代最後の総合成績順位は、11名中6位。
 同期の中で二番目に戦死した。三度目の戦場から帰る頃にはモノに話しかけるようになり、四度目の戦場で捕虜になる直前に自決。最期の戦場では、精神的不安定さから敵軍に捕捉され捕虜になりかけるが、友軍に迷惑をかけてはいけないという執念から無理やりな自決を行い死亡した。

◆夢想家でいつもぼーっとしていた《彼女》
 名前は典胡(Tenko)。
 想像力に優れる一方、空想の世界であれこれ考えすぎるため、現実の行動が遅いタイプ。背丈は小さいが、ふわふわもこもこっとした髪質で妙な存在感がある。
 内にこもりがちで、訓練兵時代も独特の雰囲気、コミュニケーションの取り方をしていた。同期とは、時間がたつにつれてお互いに接し方を覚えていった。
 訓練兵時代最後の総合成績順位は、11名中9位。作戦立案訓練(補助あり)の成績は1位のことが多い。
 同期の中で三番目に戦死した。何度目かの戦場で錯乱して敵も味方も分からなくなり、味方に撃たれ戦死。最期の戦場では、戦場の不安に駆られて想像の世界に引きこもって正気を失う。視界に入るもの全てが恐ろしいモノに見えてしまったため銃を乱射し、味方に撃たれて死亡した。

◆これといった存在感を持たなかった〔彼女〕
 名前は春晴(Shunsei)。
 自身の波長の位相をズラすことで常に存在感を消していた。目立たないように生きてきた玉兎。全体的に色素が薄い印象で、不思議な透明感がある外観をしている。
 同期の中でもあまり目立っていなかったが、段々と密偵役としての立ち位置を確立していった。
 訓練兵時代最後の総合成績順位は、11名中10位。隠密行動訓練の成績は安定して1位。
 同期の中で四番目に戦死したことになっている。戦場の中で行方知れずとなる。生体反応が消えたことから死亡確認。最期の戦場では、爆発による落下物により生き埋めになる。自身の波長の位相をズラし、存在感を消していたため、そのまま味方にも見つけられなかった。

◆上品で不敵な[彼女]
 名前は然宵(Nensho)。
 一切の妥協を許さない完璧主義者で、淑やかそうな外見からは想像もつかないような負けず嫌い。丁寧に整えられた身なりをしているため、きっとどこへ出ても恥ずかしくない。
 競争的、支配的な態度から他の同期の反感を買う時期もあった。しかし訓練を通じて、ほかの玉兎と協力し合うことも覚えていった。
 訓練兵時代最後の総合成績順位は、11名中4位。
 負傷を重ねるも戦場に出続け、そのうちに死亡。同期の中で五番目に戦死した。最期の戦場では、どれだけ傷を負っていても戦場から逃げ出す道理はなく、一度逃げ出してしまえば軍人失格になるという強迫を抱えたまま、本来なら出撃困難な状態で出撃し死亡。

◆能天気で仲間想いの{彼女}
 名前は朗朗(Roro)。
 底抜けの楽天家で、いつも笑っていた玉兎。世話焼きでもあるため自然と他者を惹きつけるタイプ。短髪で中性的な容姿をしているが、瞳は丸々と大きく少女らしい。
 兵士としての能力は高くなかった。前向きな性格から、精神面で他の訓練兵から頼られることが多かった。
 訓練兵時代最後の総合成績順位は、11名中11位。
 同期の中で六番目に戦死した。物資運搬任務中心で運よく負傷も少なく過ごせていた。ある日部隊が襲撃を受け即死する。最期の戦場では、平穏な物資運搬路を運搬車に乗って無傷のまま移動中、突如襲撃を受けて死亡。

◆野心家で勝気な≪彼女≫
 名前は能南(Nonan)。
 純粋な戦闘能力であれば同期の中でも群を抜く。一方で他者に自分を合わせることを好まず、単独行動しがちだった。筋肉質で大柄で、兎というよりは熊といった方がしっくりくる雰囲気をしている。
 同期の中でも力量は認められているが孤立しがちだった玉兎。しかし少しずつお互いに認め合うようになっていた。
 訓練兵時代最後の総合成績順位は、11名中3位。戦闘訓練の成績は通算すると1位(同率)。
 同期の中で七番目に戦死した。少しずつ武勲をあげていくが功名心でおかしくなり、無理な突撃で戦死。最期の戦場では、自身が信頼し認め羨望さえ覚えていた同期たちが死んでいくという体験に死への恐怖を覚え、しかし自身の何度も生存を重ねているという体験こそが、自身は生き残ることが出来る能力を持つ玉兎だという証明なのだと妄執し、その証明を得ようと無理な突撃をして死亡。

◆腰巾着で狡猾だった<彼女>
 名前は里期(Riki)。
 能南とは幼馴染。基本的に能力は平均的なもので、誰かの後ろについて補助をしてばかりいた。安全地帯を探すのが得意。いつも身を縮こまらせていて、兎というよりは鼠といった方がしっくりくる容姿をしている。
 訓練兵時代も能南の腰巾着として一緒に居ることが多かったが、少しずつ他の同期とも友好な関係を深めていった。
 訓練兵時代最後の総合成績順位は、11名中8位。
 同期の中で八番目に戦死した。臆病者だったのが一変して敵兵を躊躇なく撃ち殺せるようになるものの、敵兵を殺すことに執着しすぎて引き際を忘れ死亡。最期の戦場では、死の恐怖をもたらす敵兵を殺すことが安全地帯を見つける唯一の方法だと確信し、最適に敵兵を殺す技能を習得していたが、敵兵を殺すことに執着しすぎ包囲されて死亡。

〇以下、生存している玉兎

◆朗らかでよく笑っていた彼女
 名前は清蘭(seiran)。浅葱色の訓練玉兎。
 実家は餅つきを生業にしていて、幼いころから清蘭も餅つきをしていた。その成育環境から底なしの体力を持つ。
 訓練兵時代も餅つきに明け暮れ、よく同期たちに団子をふるまっていた。団子といえば清蘭。
 訓練兵時代最後の総合成績順位は、11名中5位。生存訓練の成績は安定して1位。
 訓練兵後は前線兵として転戦。現在の階級は上等兵。餅つきで鍛えられた体力は戦場でも活き、鉄砲玉として最初に出撃して、戦いが終息するまで戦い続けるほどの継戦能力を発揮する。

◆頭でっかちで団子ばかり食べていた彼女
 名前は鈴瑚(Ringo)。橘色の訓練玉兎。
 自身に催眠をかけることが不得手な玉兎。その分、現実に基づいた情報処理を身につけた、玉兎には珍しい存在。波長を読み取ったり通信をしたりすることはできる。
 訓練兵時代の当初はあまり周囲に馴染んでいなかったが、鈴仙や清蘭との交流を通じて他の同期とも交流を持つようになる。
 訓練兵時代最後の総合成績順位は、11名中7位。情報処理訓練の成績は1位のことが多い。
 訓練兵後は前線部隊に配属されるも、すぐに情報部門へ転属。現在の階級は情報特殊技能兵。通称情報兵として主に基地で安全に仕事を続ける。前線は離れたが一応軍人として基礎的な戦闘訓練は続けている。

◆優秀なくせに臆病者だった彼女
 名前は鈴仙(Reisen)。立葵色の訓練玉兎。
 自分に催眠をかけることが不得手な玉兎その2。しかしそれ以外の能力は稀有な才能の持ち主と噂されていた。訓練兵時代もエース扱い。
 月の上層部で持ち上がった「綿海姉妹の私設部隊の玉兎は本当に戦力として機能するのか」という声を黙らせるために一般部隊に一時的に所属することになった経緯がある。
 訓練兵時代から頭角を現していたが、実力の割りに臆病だし自信なさげだし調子に乗るしで、周囲からは取っつきやすい相手として親しまれていた。
 訓練兵時代最後の総合成績順位は、11名中1位。
 元々は綿海姉妹の私設部隊の所属だが、訓練兵後も一般部隊に配属。しかしその任務中、命の危機を覚え地上に脱走する。実力は十分だから成果は上げてくれるだろう、と綿海姉妹は考えていたが、鈴仙の逃げ癖は計算外だった。この兎、綿海姉妹からしてみたら割とシャレにならないことをやらかしている。


 以上、『①玉兎遠隔群体電波通信網』、『②玉兎の戦没者の森』、『③玉兎の訓練兵・同期11名』についての設定蔵出しとなりました。

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いさしろ通
主に文芸で東方projectの二次創作をしている人。自由にゆっくり活動中。 ホームページはこちら(http://soratsuchi.yokochou.com/index.htm)。