天道7
有料noteやってみました。
今日の陛下のご予定はご進講、いわゆる勉強会のことで、上皇と同じく陛下も専門の勉学をなさる。
ちなみに、今の陛下は虫の専門家だ。害虫に困る民の助けになりたいと陛下若き折自らご志願なさったのだ、皇居で東京にいないはずの虫を捕まえになられたり、甲虫の一種であるゴミムシの足の動きについて、これも卑しい虫ではあるが、陛下の愛はどんな卑しいものにもまさしく太陽のように降り注ぎ、学者顔負けの、というのもおかしなもので陛下は高名な学者でもあらされるのだが、ともかく新たな発見をなされたりもした。
余談だがこの発見された新たな甲虫の足の動きは論文となり、高専生のロボットコンテストにて発表されるロボットの案の元になった後、研究者の目に留まり新しい災害救助ロボットの助けとなった。
これだけのことでも、陛下の学者としての才能と国民への慈愛がわかりそうなものだ。
今日の陛下のご進講は「アジアの安全保障」と「東北豪雨について」だ。いずれも当時の新聞やテレビで話題に上らない時はない、当然陛下も関心をお持ちだ。
アジアの安全保障と言えば水爆の実験に成功した某国のことであり、東北の豪雨は震災で弱くなっていた地盤に未曽有の雨が降るという凄惨なもので、原発の放射能はどうなったのかも含め専ら国民の関心の的だ。
勿論我々が同席することなど許されない、許されないが、眠気覚ましのコーヒーを差し入れに伺った仲間が耳に挟んだことによると、あくまで参考意見としてご進講をお受けになり、陛下からかなり鋭い質問も飛び出す、穏やかで中立公正なるものらしい。
宮内省のHPにて内容を公開している。
こういった日こそ、我々の仕事の腕が試される。いつも通りを丁寧に手は抜かずやることで、陛下をお助けするのが我々の喜びなのだから。
仲間の一人は、いつも陛下が着にくそうにしていたシャツを、上司から陛下にお伺いして畳み方を変えた。
「あれはよくない、膝のところが皴になります」
とおっちゃったそうで、なんでもデパートで使っているという、簡単にほどける畳み方にしたらしい。
お褒めの言葉はなかったが、陛下の嬉しそうなお顔が何より嬉しかったと仲間は言った、全く同感である。
それに畳み方一つとて我々の大事な仕事なのだ。
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