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パンだけど食べ(られ)ません!   外伝 光星戦隊ワクセイジャー

 一日目
 (インターネットの辞典)光星戦隊ワクセイジャーは、※テレビ特撮の※戦隊ヒーローではなく、現実に現れた自称防衛隊にして、建造物破壊、銃刀法違反、道路交通法違反、決闘罪、住居侵入罪、無銭飲食など複数の罪状を持つ※無職である。
 彼らは三月のテレビ特撮改変時に現れ、※赤色、※青色、※黄色、※白色、※緑色、そして※黒ではなく※ブラックホールによって編成され、市街地に現れては※正義のために地球侵略を試みる※暗黒怪獣と戦っていたようだ、一年かけて逮捕となり、今は

 ネットの辞典にこんな項目あったっけ。
 未来は惑星パズルを作るために木星の縞模様を調べていたらついつい色々ネサフしてこんなところを見てた。
 思わず検索すると、ご当地ヒーローをもうちょっと頑張ったようなコスプレイヤー(?)たちがカッコいいポーズで名乗りを上げていたり、着ぐるみ着た何かと戦っているらしい写真とか、おもちゃっぽい剣振り回したりとか、なんか、水鉄砲みたいのも持ってたな。
 あー、こういうの、好きだった、昔。
 私の子供のころからかなー、あんまりおもちゃとかアニメに男女のくくりなくなって、こういうの見てても何にも言われなくなったの。
 でもネット辞典の項目にあるって……パロディじゃなく公式の?実在する人物および事件(※要出展)?
 どうせエイプリルフールネタで誰かがやったのを消し忘れたとかなんとかだよ、画像もねぇ、なんかあるでしょよく実在しないのをいかにもみたいにコラしていかにもにしてるやつ、フォトショだよ。
 あー、でも、いるんなら会いたいなぁ。こんな平社員じゃワクセイジャーにはなれないかもだけど。
 パズルここまでにして、もう寝ようっと。
 

 二日目
 私、未来はアプリケーションエンジニア、アプリつくる仕事は一言でいうと「ネットの屑情報をいかに避けるか」「いい情報を掴むか」これにかかる、広告サイトなんか踏んだ日にはもう、ね?
 だから昨日見たワクセイジャーみたいなやつじゃなくて、「とぼとぼプログラミング」とか「夜間飛行 C#」みたいな、古えのサイトとか公式がいいわけ。
 とはいえ会社が大きいので仕事は細分化されてて、最近はずっと広告を貼るだけのことしてる、その前は広告のバナー回り、その前はなんとアプリの広告動画作成だった、アプリ作成ツールも触ってない。
 ま、大工さんだって釘打ったり柱カンナかけたり設計とか色々いるでしょ?そんな感じ。
 職人さんだよ。
 
 ぷぷぷ、スマホがなった。
「ねぇ~未来~ 
 わたし暇なの~ デートしようよ~
 OKなら××駅に18時ね」
カコだ、「OK」とキャラがジェスチャーするスタンプぺたっ。今日の分はもうだいたい終わったから夕方は少しカコとデートしよっと。
 しかしこれ作業だね……。アプリ制作はもっとクリエイティブだと思ってた。
 
 カコは、栗色のかわいいもこもこコートに白いかわいいブーツで私を待っていた。
「あ、未来~!!」
「カコ~!!ね、今日はどこデートする?」
私たちは抱き合ってくるくる回る、カコの波打ったちょっと長い髪がなびいて、花の匂いがする。
「映画はこないだ行ったよね」
「いったね~、えっと、スィーツもその後行ったよ」
「あ、じゃあ、ショッピングモールで化粧品みない?かわいいクリスマスコフレみつけたんだけど」
「いいね~!いこいこ!」
私たちは自然に手をつないで、笑いあう、誰も私たちを見咎めない、もうすぐクリスマス、街に恋人たちが溢れるころは、きっと
ぴぴぴ、スマホが鳴る、同僚の伊馬だ。
「未来、今日はカコとなんだし明日は俺とデートしろよ~」
少年漫画のキャラ、スタンプで怒ってる。
「わかったわかった」
キャラのスタンプで答える。
 きっと、私はどちらかを選ぶのだろう。
 そう、同じ会社の私たちは、パンセクシャル(男女どちらも恋愛対象になる人)な女の私を女友達のカコと男の同僚が取り合う、そんな関係だ。
 
 その時!人ぐらいの大きさの怪しい黒い影がショッピングモールに現れた!!
「え?」
「キャー!!!」
 かやつの名前はわからない、だけどなんかクリスマスツリーみたいな怪獣?
「お前ら、俺を飾れ!!!」
……何それ意味わかんない、悪いことじゃないじゃない。でもみんな泣きながらその怪獣をデコってる。かわいく。
「ツリツリ、ツリー!!!このツリーが完成した時、暗黒怪獣の力もまた満ちるのだ!!」
……どういう仕組み?それ。
 すると、まるで古えの少年漫画から飛び出して来た熱血っぽいなかなかのイケメンがどこからか現れて怪獣に向けてビシッと指を指してこう叫んだ。
「待て!暗黒怪獣!このワクセイジャーが相手だ!!」
 そしてなんかおもちゃっぽいブレスレットを手でこすって
「プラネットチャージ!」
と叫んだ、イケメンの後ろに白い壁を持った黒子が現れて、そこにプロジェクターで宇宙が写され、イケメンは黒子が別に用意してた黒い着替えのための筒に入ると、そこに太陽が現れて、すっ、と筒が落ちた時、イケメンはメタルヒーローに早や着替えしてた。
 あ、こないだ見たワクセイジャーじゃない。
 写メとろうっと。
「あ、は~い、写真はごめんね、みんな、公式フォトブック買ってね?」
アンドロイドみたいなメタルなピンクの女の子が、どこからか現れて駅弁売るみたいに写真集を売ってた、……一つ買っちゃった。
 なんだろう撮影かなぁ、でもどこにもカメラがない。
 私はわけもなくどきどきし出した、ちょっと前、前カノと別れてから忘れたと思っていた、ときどき最近ちょっと思い出してきた感情。
 コフレ、後でいいや。
 ヒーローショーを一通り楽しんで、私は帰った。

 三日目
 「あの……」
何か月かに一回、私の会社では社長が色々社員の話を聞いてくれる、まぁそういう機会以外でも聞いてくれる人ではあるし、社長は気のいい人なんだけど……。
 いわゆる「いい子」の私にはこの時間は苦手で……。
 社長はFTMゲイで、性別の枠に嵌らないのはいいことで、私もパンだけどそういうこと以外の社長みたいな個性的な人への苦手意識はある……。
 あれ聞こうかな……。でも……。
「あの……私って、マネージャー志望で入ったんですけど……」
こわごわ口にする、駄目だ駄目ダメ、きっと私に力がないからだ。
「最近、なんか、単純作業が……」
ほとんど聴こえてないよ、ううう?
「うん?何?」
ああああああ!!あきれられてるあきれらてる!!
 すみませんすみませんすみません……。
 あー、でも、そろそろさぁ、昇給したいよぉ。
 これじゃどっち選んでも光り輝く未来がないよぉ。
 帰ってプリンでも食べよ。
 
 四日目
「え?なんで?」
今日、私は仕事を終えて伊馬くんとショッピングモールに来てる。
 昨日のことを話したら聞かれた。
 伊馬くんはイケメンらしいかっこよさを生かした紺のスーツだ。
「なんでって、なに?」
私はきょとんとして聞き返した。
 伊馬くんははぁ、とため息をついてズボンのポッケに手を入れる。
「……俺、そんなに頼りない?」
「え?なんの話?」
よけいわけわかんない、こないだのワクセイジャーみたい。
 ショッピングモール、フードコートに座って伊馬くんは足をぶらぶらさせた
「だからぁ、俺を選べばいいの、俺だってそこそこ稼いでるよ?俺を頼ってよって話」
言っていること、わかんない。
「え?だって伊馬くん、病気しない?いきなり今の会社無くなったりするかもだし、アプリ自体が稼げなくなるかもしれない、新しい技術が流行ったりとか。 
 だから、どっち選ぶにしろ、私だって働いてたほうがいいに決まってるじゃない」
私は淡々と話した。
「……わかんない、甘えること、苦手?」
私の髪を触ろうとしないで、手を振り払う。
「……駄目?」
悲しそうな顔しないで。ちょっと弱いの。
「古っ、とりあえず、そういう『男に頼れば』みたいな考えの女は、彼女いたりしない。
 もっと私を知って、ごめんね」
 じゃあね、私は帰りだす。コフレだけ買おっ。
 伊馬君は黄昏てるみたいに見え

「ツリツリ、ツリー!!もうすぐこのツリーが完成する!世界は暗黒怪獣のものだ!」
……どういう理屈?あ、またこないだのクリスマス怪獣だ。
 ということは、あ、あれ、伊馬君?いない。トイレかな?
「来たな暗黒怪獣!お前の好きには」
今日は青いワクセイジャーだ、あ、あれ、声、伊馬君????
 いや、違うでしょ、そうだスマホスマホ。
「伊馬君、私帰るね」
ぴっ、送信したら。
 青いヒーローの腰につけたスマホみたいなデバイスがぴかぴか。
 え、なんで。
「あ、ブルーだ、暗黒怪獣はショッピングモールにいる、すぐこっちへ」
 なんだ、仲間への連絡か。既読は、ついてるね。
 どうしよっかな、ヒーローショー、また観ようかな?
 ツリツリ、ツリー!!
 ツリー怪人は突然、私にきらきらのツリー飾りをたくさん渡して叫んだ
「やい!ワクセイブルー!
 お前の弱点を知っているぞ?
 それはこの女だ!」
え?え?私?
「女!あいつを愛しているんだったら、このワタシを飾るんだ!
 このツリー怪獣をきれいに飾れば、世界は暗黒怪獣のものとなるのだ!」
えっと、きっと、泣くとこなのかな、でも私はどうしても気になる。
「だから、それ、どういう理屈なの???」
怪人は慌てる
「(ちょっと、おねえさん、あの、ブルーっていうか伊馬の恋人ですよね?聞いていないんですか?
 我々暗黒怪獣は闇、つまり影の力を、光を強くすることによって作っていて。
 ここではそれを伊馬の恋人であるおねえさんにやらせようとすることでワクセイジャーと戦闘になるって作戦が……)」
ぼそぼそと、私に耳打ちしてくる、え?私はもっと混乱してはっきり言った。
「私が伊馬くんの?違うよ」
ヒュー、ピンクの人がラジカセから風の音を流す。かすかな静寂。
「とりあえず帰る、じゃ、また!」
ツリー怪人は帰った。
「知られちゃったんだ」
ワクセイブルーは、私を手招いて覆面の下の素顔を見せた。
 ……やっぱり、伊馬くんだ。

 五日目
 今日は休み、でもそんなことより、昨日はあれから大変だったな……。
 なにせ……。
 あっ!ヒーローものやってる!久しぶりに見よう。
「砲台戦隊バズーカー!」
こういうのに、私がなるなんて。
 昨日伊馬君から聞いたこと。
 ワクセイジャーは実在するヒーローで、あのツリー怪人はこの星を狙う暗黒怪獣の一味。
「じゃあ、これほんとう?」
私がネットの辞書をスマホで見せたら、
「それは、まぜこぜ、ただの願望、目撃談、暇つぶし、伝聞、推測、色んなものの」
「まぁ、そうだよね」
私は納得する、そしてやけに冷静になった。
「で、なんで私、伊馬君の恋人なの?」
ちょっとだけ怒っているの私、だってまだ決めてない。
「たぶんこれ」
伊馬君はスマホを見せた、ネット辞典の「ワクセイブルー」の書きかけの項目に、「正体は不明、恋人は同僚の未来(用出展)」って、て!
「ちょっと直す!それ!」
「……そんな嫌なの」
伊馬君はスマホを叩く私を見る、この辞書は誰でも編集できる、私もそう、私は私の項目を消す。
「そういう問題じゃないの」
消えた
「よかった、これで平凡に暮らせる」
私はほっと一息。それなのに「でもないよ」と伊馬君は笑った、どういうこと、私が聞くと
「ワクセイジャーの秘密を知ったら、仲間になること」
そういって、私に赤に黄色とピンクのコスプレみたいな戦闘服を渡した。
「今ね、レッドが怪我してから人手不足なんだ、好きな色、いいよ。あと、ワクセイジャーに好きな人、誘って」
地球守る人そんな簡単に決めていいの……。
 ヒーローものの番組は終わって、私はスマホを見てごろごろ。え、クリスマスまであと二日じゃん、ヤバ。
 そうだ、カコに連絡しよっ。
 ぴっ、スマホのメッセージツールを開く。
「ねぇカコ、クリスマスまでの件って、決めなきゃだめ?」
?疑問符をつけたキャラが首を傾げている。
「伊馬くんとちょっと喧嘩しちゃって、この気分のまま決めたくないの」
驚いたキャラ、あぁ、うるうるしている、そりゃそうだよね、クリスマスまでって、私\が言い出したんだし。
「どうして?わたし、今年のクリスマスは未来とって思ってたのに」
ハートブレイクの顔文字。
「それは……ってまだカコっても決まってないから!
 それでね、いくらなんでも待たせたくないし、クリスマスのレストランは私がもう撮ってあるから、今日最後に連絡した人でいい?」
OK!スタンプが来た。
「じゃあこれ伊馬くんにも言うから、あとね、実はお願いがあって……」

 「ツリツリ、ツリー!!さぁ、あと二日でクリスマス!そろそろツリーの準備をしないとな、さぁ、今日は誰に飾ってもらうかな?」
 もらったデバイス通り、ショッピングモールにツリー怪人がいた。でも、もう知っている、これはヒーローショーじゃない。私もカコも伊馬くんも頷く、今は休戦。
 
「プラネットチャージ!」
びしっ、ポーズを決めて黒子の持つ筒の中で(着替えは恥ずかしいから)コートの中に着ていたヒーロースーツに早着替え。
「赤く照らす太陽!ワクセイレッド!」
びしっ、カコも黄色いスーツを来て決める。
「黄金色の木星!ワクセイイエロー!」
そして伊馬君も。
「湛える水星!ワクセイブルー!」
あぁ、私たちいい社会人なのに……。
 ……ちょっと気持ちいいかも。
「さぁ!行くわよ!カップルのクリスマスを守る!」
 たらったたったた。
 ピンクのメタリックな女の子が軽快なBGMをラジカセで流す、なぜかツリー怪人が愉快なステップを踏む。
「気をつけろ、あいつはどんな音楽もクリスマスソングにしてしまう、そしてクリスマスソングを歌うと、あいつは力が増すんだ」
伊馬君じゃなくワクセイブルーが言う、それってどんな……もういい。
「わかった!ステップ邪魔すればいいんだね!」
カコもといイエローは、こっちだよ、と怪人に向かってどこからか出したタンバリンを叩く。
「〽見ろ この惑星ほしには かがやく未来
 今 我々の 時代に
 過去に例のない 暗黒の敵
 倒すんだ ワクセイジャー
 そうさ ワクセイジャー〽」
ワクセイイエローが歌いだす、ステップを踏みながらクリスマスソングを歌いかけていたツリー怪人はテンポを間違えてすべる。
 てか、テーマソングあったの。
「ツリツリ、うう、これはクリスマスソングではないではないか!
 いいから飾れ!」
ツリー怪人は通行人にぴかぴかの飾りを握らせる。現行犯だ、今なら一般人でも逮捕できる。
「「「今だ!!」」」
みんなが一斉にツリー怪人に向かう。
「〽太陽の 熱い血潮が
 水星の みなぎる水が〽」
ラジカセから音楽、ぴっ、私は水鉄砲みたいな銃を打つ。
 ぴっ、インクの玉が怪獣にあたる、うん?なにこれ?
「は~い、ツリー怪人さんは当たったので五分休みです~!
 その間にワクセイジャーさん!
 ツリー怪人さんの飾りとっちゃってください!」
え?いいの?
「そういうルールなの~」
サバイバルゲームみたい。ブルーシートの上で着ぐるみ(?)の上から器用にストローで水を飲むツリー怪人に、「すいません」と声を掛けながら飾りを少しずつとる。
「あぁいいよいいよ決まりだし、ね、君たち見ないね、最近ワクセイジャーになったの?」
怪人さんは気さくに話しかけてきた、はい、私は返事する。
「そうなんだ、がんばってね、負けないよ」
なにこれ、悪い人(?)ではないのかなぁ。
「あと一分で~す!」
ピンクのメタリックな女の子がストップウォッチを見せる。
「あ、もっちょっととるかな」
私はツリー怪人から飾りをまた取る。
「いいよいいよ」
なんか気のいいおじさんみたいな感じ……。
「五秒前!じゃ!いっくよ~!」
ピンクのメタリックな女の子が叫んだ、私も、ツリーのおじさんもいつの間にか張られていた黄色いテープの輪の中に入る。
「ここ、暴れていい場所、他は許可でなかったの、ごめんね」
ピンクメタリックガールが耳打ちする、許可、そうだね、許可得ないと、うん。
あ、ってことは
「じゃあここのプラスチックの椅子とかは」
黄色いテープの輪の中には備え付けじゃない安っぽい白いプラスチックの椅子。
「そう!うちの備品なの!
 壊してもいいけど、あとで弁償してねぇ~」
やばい、壊さないように壊さないように。
「ツリツリ、ツリー!
 さっきはよくもやってくれたな!
 お遊びはここまでツリー、アンコ君軍団!」
ざっ!物陰から待機していた黒タイツの集団が五人現れる。
「ワクセイジャーを倒してカップルのクリスマスを暗黒に染め上げるのだ!」
そんな義憤みたいな怪人いやだなぁ。
「私は負けない!未来のために!」
「僕もだ!いくぞ!」
ワクセイイエローとワクセイブルー……未来って、「この惑星ほし」の?それとも、私の、名前?
 どきどきする、「うん!」私もおもちゃみたいな剣を取る。
「黄金に 輝く瞳の
 桃色の 君の唇
 白い光が ブラックホールを
 おお ワクセイジャー ワクセイジャー」
ピ(ンク)メタ(リック)ガ(ール)のラジカセから音楽が流れる、どすっ!ツリーのおじさんが大きな音を立てて自分についていたプレゼント(中身はきっと発泡スチロール)でワクセイイエローを叩く。
「いったあい」
そうなの?まぁ痛がるものだよね。
「イエロー!」
「はいはい、敵に攻撃されたら五分休みね~」
ワクセイイエローは物陰のブルーシートの上でマスクを外してカコに戻る。
「楽しいねぇ~」
「ねぇ~」
私もマスクを外してカコと話す。
「あの、五分ですよね、自分ワクセイジャー側のペナルティいいんで、身体拭いてきていいですか」
そこにツリーのおじさん。
「いいよ~、五分ね」
ツリーのおじさんは急いでどこかへ行く。
「あぁ、汗は、ね」
ね、私とカコは頷きあう。
 五分後、黄色いテープの中で私たちはおもちゃみたいな剣でアンコ君軍団とツリー怪人を倒した、なんでみんなで剣を重ねてそっちに向かってポーズして、黒子がそ軍団と怪人に光当てるだけで痛がるのもわかったよ、暗黒怪獣だからなの。
 爆薬大丈夫?って思ったけど、爆薬は使わないであとでCG合成だって~。
「じゃあ」
 ひとしきり戦いが終わるとツリーのおじさんもピメタガも解散。
 あ~終わった終わった。
「「終わってない」」
二人が私の肩と手を掴んだ。そりゃそうだよね、あはは~。

六日目
 それで昨日は、疲れたし、今日連絡するって帰ったけど。
 なんかわかった。
 私、まだリーダー、無理だ。
 みんなを引っ張るって疲れるんだね、ちょっとずつやっていこう。
 そうだ、社長にこないだのこと謝ろっと。
「おはようございます、社長、あの、こないだの会談ですが」
社長室で社長に私は切り出す。
「あぁあれね、ね、うちさ、会談とかパワハラとかの告発のことも考えて録音してあるんだけど、聞き返したら、ごめんねなんか、未来さんに任せているの小さい仕事ばっかりだし、僕感じ悪かったよね」
メンゴメンゴ、社長はぺこぺこ謝ってくる。
「いいえ、わかったんです。
 私、今までの仕事見返したら順番でちゃんと一つのアプリ作れるようになってたんですよね?動画で広告までできるようになってたし」
ぱぁぁっ、社長の顔が明るくなった。
「そそ!未来さんにはあともうちょっと市場みたり上手くマネタライズできるようになったら、何か任せてもいいかなって思っているよ」
「いいえそんな」
「え、なんで、なってよどんどんえらくなってよ。僕なんかよりえらくなるんじゃないの?」
「なんで面接で言ったことなんか覚えているんですか!もう!」
ちょっとふざけてお互いに笑って、真面目な顔で社長は言った。
「じゃあこれからもよろしくね」
「はい!!」
さて、仕事だ仕事。

 七日目
 よかったぁ。
 昨日はあれから「なんか本当にごめんね、言わなくって。
 コミュニケーションは基本だよね」
って社長から連絡きて、……うん?連絡?
 やばい!昨日カコと伊馬くんどっちか決めて約束する日だった!
 なのに!
 最後連絡したの、社長……。
 あーあ、落ち込んでいたらしまっていたはずのデバイスに連絡が
「レッド!またショッピングモールにツリー怪人だ!」
伊馬君、もといブルーの声、そうだ。
「社長、一つ頼んでもいいですか、仕事外の私的な頼み事で、すごく困っている人がたくさんいて……社長のお力添えが是非とも必要なんです」
OK、スマホでスタンプがすぐ返ってくる。
 レッドなら、適任がいるじゃない。

「湛える水星!ワクセイブルー!」
「ゆらめきの木星!ワクセイピンク!」
ワクセイブルーとワクセイピンクが名乗る。
「黄金色の木星!ワクセイイエロー!」
私は、ピンクをカコにやってもらって、イエローを譲ってもらった、そしてレッドは
「赤く照らす太陽!ワクセイレッド!」
社長だ。
 ピメタガがラジカセをかける、ブルーが「知っているか、あの子、盗聴器つけたら……三日食事、してない……」と囁く。
 えっ、私が驚くと
「そうだ!イエロー!まだ決めてないでしょ!」
ワクセイピンクが怒り出す。
「そういえばそうだな、ピンク、お前にも来てないのか」
「来てないよ、イエローが最後に連絡したの、誰??」
混乱する二人に、レッドが申し訳なさそうにちょっと手を上げる。
「……ごめん、僕だ……。仕事のこと」
えぇっ!二人がレッドを攻める
「ツリツリ、ツリー!お前らコイバナか?
 独り身の自分には羨ましくて羨ましくてさらに闇を産むことだ、もっとやれ、もっと!」
「「「「恋人同士のクリスマスは私たちが守る!」」」」
私たちはおもちゃみたいな剣を取った。
 人間なのかすら定かではないピメタガが踊りだす、ツリー怪人はステップを踏む。
 あなたのツリーは飾らせない。

 ー了ー


※これは外伝で、こんなエンディングもあるかも的な何かです。

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