ことばのないはなし9
もう三時になりましたね、長話にお付き合いいただきありがとうございます。
それでも暗い話だけではないのですよ、大ぐらいのリツくんを覚えていますか?
あの方はですね、食い意地だけではないのですよ。
ひらがなしか読めないですけれど、ゆっくり文字を入力することには支障がなくて、見たものは覚えてしまいます。
それが何の役に立つって、役に立つどころではないのですよ。
最近はプログラミングというものを小学生の教材にも使っています。Scratchでしたっけ?それをひらがなモードにして皆さんのパソコンにも入れています。
そう、ひらがなさえ読めれば、コンピューターに命令できるようになったのです!
これは革命です。
がんばれば彼らは文字で心を伝えるでしょう、彼らから色んなものを発信することも同じく大事です。
コンピューターに働きかければ世界的にそれができるのです。
確か賞用利用ができました、でもお金などより、というのもおかしな話で、もちろん彼らもお金は欲しいのですけれど……こんなの作ったよ、と世界中とコミュニケーションができるのですよ!
これがどれだけ嬉しいことかといいますと、まず匿名のインターネットですので向こうはこちらが障害者だと思うことはあまりありません、それがいいことかはわかりませんが、とにかく作ったものだけでまっさらに評価されるのです!
確かに実力の世界です。でも時々思うのですよ、実力を試されて自信を無くすかもしれないからと、安全な道ばかり歩ませて本物の自信に繋がるのかと。
幸い彼らは多少のことがあっても自分の納得いく結果が出るまでやり続けます。
ならばやらせてあげようじゃないですか。
急ぐ話でもないのです。
時計を見て、急ぐのですか?もうお帰りになられるのですか、何もお構いもせず申し訳ございません。
結局何が聞きたかったのかついぞわかりませんでした。
ありがとうございます。
え?「ありがとう」とも言わない利用者さんのお世話など辛くないのかすって?
帰って下さい!
彼らの笑顔は全てを表しています。
何も言わなくともわかるのです、あなたは彼らの言葉のない話が聞こえないのですね。
悲しいことです。
ほら。聞こえるでしょう。
見て下さい、あなたに手を振っています。
そうですね、お客様がお帰りになります、さようならしましょうね。
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