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あなたの瞳にファイ消しアタックcomplete 完

【最終話 いつかきっと】
「ねぇ、勝人くん。こないだのファイ消しバトル楽しかったねぇ」
「お前最近ずっとその話だなぁ。まぁ、負けは負けだ。で?」
「勝人くんはさ、強いよね」
「それがなんだよ」
勝人くんはふきげんそうに机に突っ伏す。
「わたしもっとファイ消し強くなりたいの!ねぇ、コツ、教えてくれない?」
「いいけどさ~お前さらに強くなるん?」
「え、いいの?やったあ!」
話していたら先生が来た。
「お~いお前ら朝礼を始めるぞ~」
わたしは席に着く。あれ黒崎くん、いない?
「欠席は黒崎だけだな。じゃ、明日は国語のテストだ。がんばれよ!」
「「え」」
わたしも勝人も声をあげた。
「じゃあ出席とるぞー」
テストだテストだ、黒崎のやつサボったな。アホの勝人はほっといて、わたしは国語のドリルを見返そうっと。
「そうだ瞳!お前さ、ファイ消し教える代わり国語教えてくれる?お前頭いいよな?」
「え~っ、まぁいいかぁ」
「じゃあお前んちいっていい?」
「え~っ!」
学校終わりに、瞳を待つついでにちょっとトイレっと。うん、職員室、なんか騒がしいなちょっとのぞき見。
「では黒崎くんは……はい」
また黒崎かぁ、あいつ自分のこと言わないからよくみんなに心配かけてんなー。
 まぁいいや。さて瞳ん家いくぞー!
 瞳ん家はめっちゃふつうの家。犬もいれば壁も白い。でも珍しいものばっかり!
「これなんだ?魚の餌?」
「香り玉!」
「なんだこのちっちゃい瓶?」
「香水!」
「へぇなんだこれめっちゃキラキラしてる」
「ネックレスかけないで!」
「おおすげぇでっかい瞳」
「わたしの漫画勝手に見ないで!」
いやぁ面白かった、さて勉強だ勉強っと。
「ねぇ」
俺が国語ドリルをやっているのを見ながら瞳は言った
「黒崎くん今日休みだよね、わたし、黒崎くんにどうしても伝えたいことがあるの」
お?う、うん?これってアレじゃねぇの?さっきパラ見した少女漫画の……。
「ずっとあなたが好きでした」
なんてか!く~!やるね黒崎!よっし!
「瞳!いつか言っただろうけど、お前の言いたいことを言えることはすげぇ長所だ。
のばせ!遠慮するな言っちまえ!」
俺は瞳を励ました、めっちゃいいやつ!俺。
「……うん、だよね」
「あぁ!だいじょうぶだ俺も黒崎も瞳も、もうファイ消しで培った友情は一生だ!」
「うん!」
瞳が元気になって
「あ、それならね、この文字。ここ違うよ。耳じゃなくって糸」
と容赦なくなった。俺、瞳のこういうとこ好きだ。だからきっとだいじょうぶなはずだ。
 だいじょうぶかなぁ、んもう勝人も黒崎くんもどうしてこうなんだろう。
 職業の『職』はごんべんじゃないのに!
 どうしてずっと言えないんだろう。それにどうしてわたし頭いいって思われているのかなぁ、少女漫画読んでいたら漢字覚えちゃっただけなのが、嫌味だって。
 こないだの桜ちゃんとか仲がいい子もいるけど、色々女の子も面倒くさいなぁ。
 勝人はいいなぁ、悩みなさそうで。つまんないテレビみよう
「冨合家市で今日未明、工場勤務の黒崎実(みのる)45歳の会社員が、『デスデビルの力を世界に訴えるため、幼稚園バスをハイジャックする』と掲示板に書き込んだ事件で……」
つまんないニュース、うん、冨合家市?それに、黒崎ってまさか。
 電話が鳴った
「瞳!テレビ見たか?黒崎が大変なんだ!今出れるか?」
―アイキャッチ:リップクリームー
「♪新番組魔法戦士キャンディアルト!可愛く勇敢にGo!」
―アイキャッチ:ボルカノンフェニックス―
勝人によると、黒崎実(みのる)容疑者は黒崎のおじさんで間違いない。
大変なことかもしれないからお父さんにも連絡した。お父さんはすぐ来てくれて
「社外秘の情報がネットに流れている」
と言った。
「こないだホーリーペガサスを作っただろう?光の神がいるなら闇の悪魔もいる。
だからまだ発売していないデスデビルにも闇の悪魔に参拝というか、それから発売しようとしたんだ」
「「黒崎のデスデビル!」」
「そうだ、たしか実(みのる)の甥っこは黒崎 誠(まこと)だったかな。その子が持っている試作品を、実は持ち出して、闇の悪魔と契約したらしい」
「あいつまことだったのか」
「そうじゃないでしょ、そんな、そんなことしたら」
「あぁ、子供は欲しがるだろう」
俺はコケた
「瞳のおじさんもそうじゃないだろう!とにかく幼稚園バスは平気か?」
「予告は夕方の4時!まだ時間がある!対抗するためにはホーリーペガサス。瞳、勝人。
 お前らの力が必要だ」
俺も瞳も息を飲んだ、かつてない緊張。
 ってか、ほんとうにファイ消しで世界を滅ぼそうというやつが出るなんて。
 しかも、そいつと戦うのに俺が選ばれるなんて。
「でも」
瞳が余計なことを言った
「お父さんの会社に、もっとファイ消し強い人いるでしょ?どうしてわたしたちなの?」
おじさんは笑っていった
「それはな、信じているからだ。
君たちはホーリーペガサスが本当に光の神の祝福を得ていると信じているだろう?
たぶん、実も本当にデスデビルが闇の悪魔の力を持っていると信じている。
信じているもの同士でないと、この戦いは終わらないだろう。
 それに、父さんはお前と友達を信じるぞ、瞳」
その言葉にわたしも勝人もお互いを見てうなづき合う。
 黒崎くんと出会った河原。
 指定の時間、幼稚園バスはそこを必ず通る。
 俺と瞳はファイ消しを持つと視線を交わし、息を飲む。
「ファイト!」
瞳のおじさんの声にバトルが始まる、でも、何回やっても、瞳のファイ消しは俺のに弾き飛ばされている。
「どうした瞳!お前、俺より強くなるんだろ?」
瞳は涙目で地面に手をついた
「それでも俺のライバルかよ!」
黒崎はな!デスデビルを扱うためおじさんに操られているんだ!
 俺たちが友情のファイトで目を覚まさなきゃ!
 そうだろ!」
涙をぬぐってわたしはファイ消しを持った。
「お前と俺ならやれる!もっと力を使わずに、ファイ消しを信じるんだ!」
お父さんの掛け声。わたしのホーリーペガサスが勝人のをリングアウトさせた。勝人は、笑っていた。
「お前強いよ、お前なら黒崎に勝てる」
勝人はわたしの肩を叩いた。わたしは勝人の手を取って笑ってみせた。
 4時。黒崎が河原に来た。
 瞳の手にはホーリーペガサス。
「勝人は?」
「勝負は一対一!」
勝人が声をあげる
「お前は俺より強い!がんばれ!瞳!」
―アイキャッチ:リップクリームー
「♪キャンディアルトロボ!お菓子売り場にGO!」
―アイキャッチ:ボルカノンフェニックス―
「勝人」
「あぁ」
「瞳、強くなったな」
「あぁ」
黒崎のおじさんを警察がつれていった、掲示板に書き込んだ内容がイリョクなんとかで捕まったんだって。勝負も瞳の圧勝。
「おじさんの家にはもういられない、元の家は戻れない。
 また、別な親戚を頼るか」
「黒崎、瞳。俺さ、父ちゃんいないんだ」
勝人は急に告白した
「だからさ!瞳、お前の父ちゃん、父ちゃんみたいに思っていいか?な、黒崎も」
「うん!あ、そうだ、黒崎くん」
わたしも言わなきゃ。
「職業の職はごんべんじゃないからね!」
「そっちかよ!」
三人で笑った。
 黒崎くんは引っ越していった。でも心配はいらないの。最近ファイ消しのオンラインゲームができて、いつでも対戦できる。
 ファイ消しで培ったわたしたちの友情は永遠。ずっと。
『新番組♪新番組魔法戦士キャンディアルト!可愛く勇敢にGo!』
(了)
※1:青空文庫https://www.aozora.gr.jp/cards/001713/card55228.html 
夕づつの清光を歌ひて サッフォより引用


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