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ジェット機に100時間乗って感じたプロペラ機との違い

ジェット機のA320に乗っておよそ100時間。

ターボプロップ(プロペラ)機のATRから移って最も難しいと感じた違いは、やっぱり降下プロファイルとスピードの管理(エナジーマネジメント)だった。頭の整理も兼ねてちょっとまとめてみる。

プロップは運用限界高度が25000ftで、運用限界速度(VMO)は250kt。滑走路から降下開始点(TOD)にVNAVが引いた降下プロファイルは基本的にずっと3度のままで、降下開始したらパワーオンでずっとその3度を降りていけるし、巨大なプロペラが2個もついてるから、降下しながらの減速もパワー引くだけ。

これに対してジェットは約40000ft弱まで昇る。A320のVMOは350kt/M0.82。成層圏から地表1000ftまでの降下プロファイルは、途中、さまざまな要因で変化する。降下しながらの減速にはものすごく時間がかかる。パワーを引くだけじゃ思ったように減速しない。ので、難しい。

VNAVが引くラインはさまざまな要因(Airspace、Idle Factor、Speed/ALT制限.. etc)で変化するので、飛行機の「降りる能力」がそれに追いつかないことがある。ぼけっとしているとすぐにプロファイルの上側に飛び出しちゃう。特に、10000ft以下の高度と速度管理はめっちゃ気を遣う。

AUSのエアスペースはステップが急なので、エアスペースにとどまるように引かれたSTARの降下プロファイルも急になる。うちの会社のA320のIdle Factorは-6.5で、すなわちパワーいっぱいに引いても飛行機がVNAVをフォローしきれない(高くなっちゃう)ように設定されてるってこと。そもそも厳しい。

10000ft(富士山の高さ)以下は、250ktの速度制限がある。プロップは運用限界速度が250ktだから問題ない。しかし、ジェットはこれより大幅に大きい速度で降りてくるから、10000ft手前で減速しなければならないが、降下維持しながらの減速はできないのでやっぱり上に飛び出しがち。

同じことがアプローチ付近でも起こる。プロップは、降下角を維持しながらパワー引いて減速できるが、ジェットは降下角を緩めないと減速できない。VNAVもそれを見越してラインを引くけれど、実際に飛行機がそれをトレースできるかはまた別問題で、パイロットの介入が必要なことが非常に多い。

加えて実際にはATCが要求する制限(時間・高度・速度)を受けながら飛ぶので、VNAVが引いたラインに対し、どこまでにどの高度と速度になっていたいかが常にパイロットの頭の中で明確になっていて、必要な介入がほとんど条件反射みたいにできないと、実運航には間に合わない。

アプローチ間際エナジー余り気味のときプロップパイロットは「早く減速してコンフィグ作っちゃえ」と思うんだがDESモードで迂闊に減速するとあっという間に1000ftくらい高くなってアプローチキャプチャできないことになる。VSやSPD SELで速攻介入が必要だがプロップから来るとそこの理解に時間がかかる。

さて、エアバスのマニュアルにはこんな絵が書いてある。


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