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ボーッとしたくて(最終章)

今回の旅最終日。
お昼には仁川に向かわないといけない。
朝から散歩に出かける。

韓国に来るたびに必ず立ち寄る場所、書店。
開店時間に合わせて教保文庫に歩いて向かう。
ネットで買え、タブレットで読める時代だけど、やっぱり手に直接取って、紙をめくりながら読むのが私には合っている。

これから韓国語を再び基礎から始めたいという友人へ、何か面白そうな教材を探す。
私が初めて通った韓国語教室で出会ったこの友人とは、15年ほどのご縁だ。

考えてみれば、韓国語を学ぶ中で出会った友人たちは皆年齢がさまざまで、10年超のお付き合いが多い。
友達が多い方ではない。
でも、長く深くご縁を紡いでくれる友達たちが数人居てくれること、本当にありがたいなと今回の旅を通してしみじみ感じた。

書店であれこれ手に取って、ゆるりとした時間を過ごしていたら、マダム?に声をかけられる。
テレビで紹介された本を探しているが、作家の名前だけで本の名前は分からないという。
外国人なのでよく分からないと伝えても、諦めてくれない。笑
流石に店員さんに助けを求める。
題名の分からない本を探すのは、私にはハードル高すぎた。

ちょっと歩き疲れたら、書店内のカフェでボーッとひと休み。
こういう時間に心が落ち着く。

あっという間に時間が過ぎ、そろそろホテルに戻って空港に向かわねば。

地下鉄に揺られながら、いろんな気持ちが交錯した。
いつも会社にいる私と、旅での私は顔も心も別人だ、と。
昔ここに暮らしていた私は本当に私だったのかと思うほど、あの頃はエネルギーがみなぎって何でもできる気がしていたけど、今はとても臆病になってしまった、と。
こんなに心が穏やかで解き放たれた感情はここ最近抱いたことがなかった、と。

私的な事情と仕事に追われ、さらにコロナ禍も重なって、なかなか近くても海外へ行く勇気がなかったけれど、今だ!と思ったら飛ぶべき。
行けるときに行こう、会いたい人に会おう。

清々しさと旅の終わりの少し名残惜しい気持ちを抱え、スーツケースを引いた。

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