新職種☆スカイディベロッパーが担う、【ドローンビジネスと空のまちづくり】 ~空のインフラづくりで、ビジネスチャンスを作る~
【イントロ】
近年、ドローンビジネス市場は拡大しつつあります。2020年時点では1,841億円、2025年には6,468億規模にも達すると言われています。国内の市場予測だけを見ても、今後ドローンビジネスは大きなマーケットになっていくでしょう。
弊社、トルビズオン株式会社は、ドローンによる「空」という空間の利活用をビジネスチャンスととらえて活動してきました。
スカイディベロッパー・マスターセミナー(SDM)は、ドローンビジネスや「空のまちづくり」のプロデュースに向けて、皆さんとともに学んでいく場です。第1回目となる今回は、「ドローンビジネスと空のまちづくり」について、コーディネート役の株式会社トルビズオン代表増本がお伝えしていきます。
(本文はトルビズオン投資家向けに開催されたスカイディベロッパーマスターセミナー第一回講義を文字起こしして作成した記事です。)
ドローンビジネスのチャンス到来
増本:皆さんは、ドローンとは何か、ご存知でしょうか。ドローンは、別の名を「無人航空機」とも言います。国土交通省の定義では、「飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるもの」と定義されています。ポイントは2つです。無人であることと、無線でコントロールできること。これが無人航空機、すなわちドローンの定義です。
ドローンが活躍できる分野は多岐にわたります。物流や農業、林業といった一次産業をはじめ、建築、土木、撮影、報道、エンターテイメントなど、あらゆる分野でドローンの活躍が期待されています。
従来、人間の手が及ぶのは地上だけでした。空を自由に使うことはできなかったのです。使用できたとしても、航空機、自治体、軍隊など、一部の産業に限られていました。
ドローン市場が大きく動いたのは21世紀です。ドローンの品質やコストパフォーマンスが著しく向上してきました。今後、ドローンを利活用したビジネスが次々と立ち上がっていくはずです。誰でも手軽に、空を利活用したビジネスができるようになるのです。まさに、空の産業革命です。
空のインフラ構築にあたり特に注意が必要なのは、物流・防犯の分野です。なぜなら、自分の所有地以外の土地を飛行する必要があるからです。
農業の場合、ドローンは農薬散布のために利用されることが多いです。農薬を散布する場合は、自身が所有している農地の上空で飛ばすことになります。
しかし、物流やセキュリティ、防犯面での利用となると、第三者の上空を飛ばなくてはなりません。自分が所有してない土地へ、ドローンの航路を展開していくことになのです。
そうなると、ドローンを安全に飛ばすための技術や法律の遵守、運航管理などが非常に重要になってきます。
ドローンの「飛ばせない」問題
増本:ドローン業界は、今後大きなマーケットになります。しかし、そうなるまでにはいくつかの課題も存在しています。ドローン実装には、3つの壁が存在しているのです。「技術」、「制度」、「倫理」です。1つずつ、見ていきましょう。
まず、「技術的な問題」です。ドローン自体の性能が整っていなければ、ドローン実装の実現は難しいでしょう。ドローンが何kgまで搭載できるのか、何km先まで飛行できるのか。ドローンの技術に関する問題が、1つ目の壁です。
しかし、同分野の技術進展はスピーディです。200kg運べる巨大ドローンや、空飛ぶクルマの開発も進んでいます。携帯電波で使われるLTEを使用すれば、何km先でもドローンを飛ばせるようになります。ドローンの技術は、近年、確実に進歩してきています。ドローン実装において、「技術的な問題」は、ほぼクリアしていると言っても過言ではありません。
法律はドローン実装に向けて動くのか
増本:ドローン実装2つ目の壁は、「制度的な問題」です。現状では、安全面を考慮して、ドローンの利活用は法律で厳しく制限されています。
しかし、現在、日本は人口減少や労働力不足などの社会問題を抱えています。こうした問題を解決するために、ドローンの活躍が期待されています。国としても、ドローン実装を推進していく方向に舵を切っています。今後、法改正もどんどん進んでいくことでしょう。
実際に、「小型無人機(=ドローン)に係る環境整備に向けた官民協議会」の資料では、ドローン実装に向けて、様々な方針が示されました。
弊社が特に重要視しているのが「レベル4飛行の実現」です。「レベル」とは、ドローンの飛行レベルを指しています。レベル1から3はすでに実装されています。レベル1は、目に見える範囲内での操縦飛行。空撮や橋梁点検などです。レベル2は、目に見える範囲内での自動・自律飛行。農薬散布や、土木測量です。レベル3は、無人地帯で、人が見ていない範囲での飛行。過疎地の郵便局間などの配送が実験されています。ここまではすでに実装済みです。レベル4とは、人が住んでいる地域の上空を、運航者が見ていない状態で、ドローンが自動で飛ぶ状況です。
今、空を見上げてもドローンは飛んでいませんよね。それはレベル4がまだ解禁されていないからなのです。国土交通省は、2022年の12月に、レベル4実装を目指すと公表しています。
レベル4実現のために、2つの制度を設けることも明示されています。「免許制度」と、「機体認証」です。これは、車の運転と似ています。車と同じように、ドローンの操縦にも免許が必要になります。また、ドローン自体にも検定制度を設けるのです。車で言うと車検です。安全な機体であることを保証するのです。
ドローンの利活用を推進するために、法整備や法改正が順次行われています。ドローン実装の2つ目の壁「制度的な問題」も、今後解決していくことでしょう。
ドローン実装の最終的な課題とは
増本:ここまで、ドローン実装の壁を2つお話してきました。「技術」と「制度」の問題です。しかし、この2つは順調に解決に向かって動いています。ここからお話するのは、ドローン実装の最後の壁です。
ドローン実装の最後の壁は、「倫理的な問題」です。「住民の不安感」と言い換えてもよいでしょう。ドローンが上空を通行することに対して、不安を持たれる方も多いのです。
弊社は、ドローンを用いた実証実験を全国各地で行ってきました。実験の中で、「住民の不安感」には大きく分けて3つあることが見えてきました。
1つは「リスクが高いこと」、2つ目は「ドローン利用のメリットが感じられないこと」、そして最後に「補償がないこと」。この3つです。
こういった3つの不安に対して、弊社は「sora:share(ソラシェア)」というサービスをご提供しています。
上空をドローンが飛行するリスクを許容できないのであれば、航空側ではなく地上側に航路の決定権を持たせます。上空飛行の合意可否を選択できたり、使用用途や時間を指定できたりするなどです。
ドローン利用のメリットがないのなら、インセンティブを発生させます。飛行回数や時間に応じて、インセンティブを付与するのです。
補償がないことに対しては、空の道自体に保険をかけます。ドローン事業者の多くは、ドローンに機体保険をかけています。しかし、保証額には差があります。そこで、ドローンではなく、道自体に保険をかけて、万が一の事態に備えるのです。
ドローン実装の不安を解決するためのパッケージサービスが、「sora:share(ソラシェア)」です。土地所有者とドローンユーザーをつなぐプラットフォームとして、ビジネスモデルの特許も取得しています。
利用方法にも少し触れておきます。土地の所有者は、空の土地情報を登録することで、保険をかけたり、インセンティブを得たりすることができます。空の土地情報は、ネット上で簡単に登録できます。土地の形を登録して「スカイドメイン」(=空の名前)を取得し、それを用いて取引を行うのです。2つの「スカイドメイン」を選択し、始点と終点を指定してルート化すれば、「スカイロード」として、こちらも、飛行可能な航路を指定することが可能です。
ドローンの事業者は、システム利用料を支払うことで、土地の合意可否情報や保険、航行支援情報を得ることができます。
「空のまちづくり」とは何か
増本:ここまで、ドローンビジネスの可能性、そして実装の壁についてお話してきました。ここからは、「空のまちづくり」や「スカイディベロッパー」の話に移ります。
「空のまちづくり」とは、ドローンやソラシェアを用いて、地域課題を解決する、地方創生の取り組みのことです。
「スカイディベロッパー」(SD)とは、「空のまちづくり」を担う人材のことです。地域の方々とともに、コミュニケーションを取りながら、ドローンの利活用を考えていく人材です。
スカイディベロッパー・マスターセミナー(SDM)では、「空のまちづくり」を実践するために必要なスキルを皆さんにお届けしています。全8回のプログラムを通して、スカイディベロッパーに必要なスキルを学んでいただくのです。今回は、「空のまちづくり成功へのステップ」についてお話します。
「空のまちづくり」に向けて、まず大切なのは、地域の課題を特定することです。一次産業なのか、防災なのか、観光なのか。例えば、山間部の地域に海洋調査のドローンを提案しても意味はありません。海辺の都市部に、過疎地向けのドローン物流を紹介するのも、適してはいないでしょう。地域の課題に対して、ドローンやソラシェアがどのように活躍できるのか。地域の実情にマッチしたビジネスプランを考えていかなければなりません。
そして、関係者、特に自治体への働きかけも重要です。地方創生には自治体の協力が不可欠だからです。協力を得て、一緒にビジネスモデルを作成していきます。
ビジネスモデルを作成した後は、実証実験を行っていきます。ドローンを使った空のまちづくりが、地域の課題解決につながるのか。また、ビジネスとしてワークするのか。リアルなビジネスとして、また、国の事業や自治体の事業として社会実装できるまで、ブラッシュアップしていきます。
航空法の改正は、2022年12月です。翌月の2023年1月ごろから「レベル4」がスタートするはずです。そこを目指して、我々は「空のまちづくり」を全国に広げていきたいと考えています。そのためには、多くのビジネスパートナーが必要です。「スカイディベロッパー」として、空の道の活動、ソラシェアの活動を広げていただきたいと考えています。ぜひ、このセミナーなどを通して、その方法論を学んでいただければと思っています。
パイオニアに聞く、「空」の道の作り方
増本:ここからは、ゲストをお迎えして、「空のまちづくり」について深掘りしていきたいと思います。濱野さん、よろしくお願いします。
濱野:はい。ネクスコ西日本の九州支社地域連携担当部長の濱野と申します。ネクスコ西日本に勤務して、もうすぐ30年になります。
増本:濱野さんは、もともと高速道路の用地部門に所属されていたそうですね。道作りのご経験がおありということで、空に道を作ることについてはどう思われますか?
濱野:空の道づくりと高速道路の道づくりは、どちらもとてもよく似ていると思います。高速道路を作るプロセスを簡単に説明すると、次のようになります。まず、計画を立てる。環境などをチェックしながら、ルートを決める。土地の権利を取得し、土地をお譲りいただく。そこから建設に着手します。空の道づくりも、高速道路と同じプロセスをたどるのではないでしょうか。
増本:ありがとうございます。高速道路を参考にすれば、空の道づくりも安心安全に進めていけるのではないかと考えています。
濱野:地上と空の道づくりで違うのは、「社会的受容性」かもしれません。「社会的受容性」とは、企業や新技術などが、地域社会や国民の理解を得て、受け入れられることです。
「社会受容性」は、計画や環境チェックと同じくらい、重要だと思います。土地の地権者や地元の方々の理解が得られなければ、道づくりを進めるのは困難だからです。その点、空の場合は、「社会的受容性」を得やすいのではないでしょうか。
地上で道路を作る時には、地権者の私有財産に制限をかけてしまうことがあります。例えば、ご自宅があったら、移転していただかないといけません。山林の木の伐採や、田畑をなくしていただいたりすることもあります。かなりの制限が必要なのです。法律に基づきながら進めていくとはいえ、土地を整備する心苦しさを感じることもありました。しかし、空の場合、ご自宅の移転や、田畑などをなくしていただく必要はありません。そのままの状態で、インフラを整備できるのです。その点、空の道づくりは社会的受容性が高いと言えるのではないでしょうか。空の道づくりには、私自身とても可能性を感じています。
増本:ありがとうございます。ここまで、ドローン実装にはいくつかの壁があると考えてきました。しかし、「生活を制限しない」という点では、濱野さんがおっしゃるように、社会受容性を得られる可能性も高いということですね。
空の道が社会受容を獲得するためには、どのように地方創生を進めていくのがよいと思われますか。
濱野:地域課題の仮説を立てることが重要だと思います。これまでのインフラ整備の多くは、地域課題に焦点を当ててきませんでした。水道や道路といったインフラは、どんな土地にも求められる設備だったからです。ニーズがもともとあったのです。しかし、これからは違います。地域ごとに抱える課題はさまざまです。必要なインフラも多種多様になるでしょう。これまでのインフラ整備とは、アプローチの仕方が変わってくるのです。
また、地域の方や自治体を巻き込むことも重要です。既存の道路や水道は、整備の手法が確立されています。さらに、国や自治体が行うものだと人々に認識されています。そのため、一緒に事業をやろうとしても、なかなか競争や発展に繋がらないのも事実です。
ただドローンの場合、前例がありません。ほとんどの方にとって、未経験の分野です。全員がフラットな中で、どのようにドローンを実装していくのか。地域の方を巻き込んで、共に考え、行動に移していくことができるのではないでしょうか。それが、よりよい空のまちづくりにつながっていくのではないかと思います。
新しいテクノロジーを扱う際には、失敗というものは存在しないのではないかと思っています。むしろ、チャレンジしないことが失敗なのではないでしょうか。社会実験を行えば、うまくいく場合も、そうでない場合も出てくるはずです。ただ、うまくいかなかったとしても、それは失敗ではありません。改善点を見つけて改良していけば、失敗で終わることなく、次の成功に繋がっていくのです。
増本:ありがとうございます。地域課題に焦点を当てること、地域の方を巻き込んで進めていくことの重要性をお話していただきました。また、諦めないメンタル、マインドも同様に重要だということですね。貴重なお話をありがとうございました。
最後に
ドローンは、さまざまな分野でイノベーションを起こすことができます。今までできなかったことができるようになります。
スカイディベロッパーセミナーは、2022年12月以降のレベル4解禁に向けて、始動しています。
地方創生のプロデューサーや、ドローンを使ったビジネスを志している方、また、ドローンや地方創生に詳しくなくても、新規事業の立ち上げに興味がある方のご参加を、ぜひ、お待ちしております。「空のまちづくり」に向けて、我々とともに、学んでいきましょう。