掌編「五月五日の擦り傷に誓う」
君が初めて笑った日の事を、僕は一生忘れないよ。
「パパの馬鹿ぁー」
「ごめんって」
「あっち行けー」
「だからごめんって、今度は放さないから」
「嫌だぁもう帰るー」
「今来たばかりだよ」
「嫌だぁー、ママー」
敷物の上で赤ん坊を抱いてこちらを見守るママに手を伸ばす君を見て、僕はすっかり弱り切ってしまった。
僕ら夫婦に初めての子どもが誕生したのは四年前だった。産まれたての小さな男の子は、噂に聞くよりも真っ赤だった。そして噂に聞くよりも何億倍も可愛かった。目を閉じたまま