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僕は名前を呼ばれ、促されるまま入廷した。テレビで見た事のあるような、裁判官たちの席と傍聴席の間に、僕の立つべき場所が在った。僕は真っ直ぐ前を向き、正面に座る裁判官に顔を見せた。 「それでは始めます。えー、2020年8月20日、菜古間通りのA太さんで間違いありませんね」 「はい」 「それでは判決を言い渡します、A太さんを―」 「ま、待って下さい」 裁判長は不思議そうにパソコン画面から顔を上げた。 「どうしました」 「もう判決ですか?僕はまだ、何も述べていません
朝起きたら、自分の学習机の前に立つ。そして周りを見回して、誰も居ない事を確認する。よし。僕は期待と、ぬか喜びに備えて少し息を吸って、一番平たい引き出しに手を掛ける。 開けてみる。 駄目だった。分かってはいたんだけれど、やっぱり溜め息をついてしまった。僕は着替えて朝ご飯を食べに一階へ下りて行く。 僕だってドラえもんが欲しい。いつか引き出しが四次元に繋がらないだろうか。タイムマシンはないだろうか。そう何度思っただろう。毎日毎日思っているから、多分365回は思っている。だ