マガジンのカバー画像

箸休め

137
連載小説の息抜きに、気ままに文を書き下ろしています。文体もテーマも自由な随筆、エッセイの集まりです。あなた好みが見つかれば嬉しく思います。
運営しているクリエイター

2022年4月の記事一覧

「あんことニホンカモシカの日曜日」

 雨予報は当たり、早起きをして日課の運動を熟すうち、曇天からぱらぱらと二階の屋根へ水玉模様を描き出した。だがまだ序の口であるから、こちらも負けじとランニングへ繰り出す。両膝にサポーター。連日深夜の帰宅になった為に寝不足。これはもしや満身創痍というものではなかろうか。  そんなの知らない。日の出が早くなったから、私は今年も勝手にサマータイムをはじめており、朝一番は長編小説の推敲と執筆に時間を充てている。カーテンの向こうが清々しい陽気に包まれている朝、目をしばたたかせながらも布

「一枚のポテトチップスが私の口に入る迄」

 私事で恐縮だが、ポテチと云えばカルビーのポテトチップスを贔屓にしている。今では滅多に食べなくなったけれど、あのパリッとした食感と絶妙な塩味、或いはコンソメ味が無性に食べたくなる時がある。因みに子ども時代に誕生したピザポテトは贅沢品だった。大人になってから存在を知った堅あげポテトブラックペッパーの虜になった。私はきょうだいが多く、お菓子は器へ分けて入れるのが当たり前であったから、スナックの袋菓子をばりっと開けて、袋へ直接手を入れ、一人で抱えて食べても良いと知ったのは、かなり大

随筆「卯月の晩に桜光る」

 早い地域では散り果てと新聞にあった。毎年ながらぱっと咲き誇ったと思うと、瞬く内に散ってしまう。なぜあそこまで儚いだろうと中空を仰ぐ。世に色は多いけれども、花の色は誰にも真似できなかろう。よしうまい具合に再現したとして、それはあくまで赤色、黄色、なのである。花の色は、命の色であるから。あなたの色が誰にも真似できない様に。  等と眩しい朝日の内に御託を並べて草花の機嫌を取り、水を遣って、山椒を襲った不届きなアブラムシにオルトランをお見舞いしている内、咲くのか咲かないのか分から