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箸休め

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連載小説の息抜きに、気ままに文を書き下ろしています。文体もテーマも自由な随筆、エッセイの集まりです。あなた好みが見つかれば嬉しく思います。
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2021年12月の記事一覧

「ふりかぶって2021」

「さあ二回の裏、ピッチャーは引き続きいちの様です。対してバッターボックスに立つは我らが大魔神noteです。ああ、スタンドからも大歓声が飛び交います。小さないち投手、この重圧に呑まれず投げ切れるでしょうか。振りかぶって、第一球!」 「おっと大魔神、一球目からバットを振っていきました。強気ですね。しかしこれはボールです。いち投手、一度帽子を取って汗を拭います。矢張り緊張しているのでしょうか。まだ二年目のルーキーです。しかしここは一つ、真っ向勝負して欲しいですね。さあ、キャッチャ

エッセイ「中村屋ファミリーに今年も心洗われた」

テレビで録画しておいたドキュメンタリー「中村屋ファミリー2021」を見た。私は歌舞伎が好きだ。演目を見るのが好きだ。舞台のわくわく、熱、観客との一体感、そう云ったものが画面越しにもこちらへ伝わってきて、お茶の間は、知らず客席となり、さあ次はどう来るんだろうと、私の心を前のめりに喜ばせてくれる。力強い舞いで鼓舞して、私の心を勇ましく呼び覚ましてくれる。妖艶な踊りで惑わし、人情で、日常風景の所作で和ませてくれる。本当に魅力を語り出せばきりがない。 だが、私がいつの間にか歌舞伎が

随筆「十二月の夜に」

 高速走って数時間。彼等が生まれてから後、こんなに長く会わなかった事は無かった。車を駐車場へ止めると、エンジン音に気が付いたのだろう、此方が車を降りるのよりも早く、玄関の扉が開いた。そして飛び出して来たのは、背が高くて、髪の長い女の子だった。妹か、いや違う、もっと大きい。そして殆ど同時に走って来たのは一番下の甥。真っ先に飛び出して来たのは、姪っ子であったのだ。  成長している。あんまり大きくなっている。俄かには信じがたいけれども顔は可愛い姪っ子である。あんまり大きくなってい