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箸休め

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連載小説の息抜きに、気ままに文を書き下ろしています。文体もテーマも自由な随筆、エッセイの集まりです。あなた好みが見つかれば嬉しく思います。
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2020年12月の記事一覧

「人」

 録画しておいた「中村屋2020」を見た。いつ見ても兄弟の生き方に心打たれる。そして、背筋が伸びるのである。前を向いて生きようと、気持ちも新たに私は愚図々々の目尻を拭った。  支援が足りないという悲鳴を連日目にする。農業、漁業関係者、医療の現場、飲食店、飲食店を裏から支える物流。この世界に今生きている私に、それなら一体何ができるだろう。この両手二本で、丈夫に育てて貰った体で、足で、誰かのために、何をすればいいだろう。自分に出来ることを、必死になって考えてみる。  今週は色

「時には昔の話-手話を学んだ十代のあの時間」

 あれは多分十七歳の冬、飲食店で働いていた時のこと。手話を会話のメインにお使いになられるお客様が、六名様位でお越しになられた。  私は昔、地元の小さな劇団へ、新作の舞台の主人公オーディションを経て入団し、芝居の勉強をしていた。その時の主人公が手話を使うと云う役柄で、芝居と同時に劇団員全員で手話を勉強していた。  初めて触れた日本の手話は、分かりやすく、創意工夫がなされていて、とても綺麗だと私は思った。一つ憶えるごとに、会話が出来るようになるのが楽しみになった。特に感動した