「KIGEN」第八十五回
―垣内親方へ引退を申し出る数時間前、基源は奏と会っていた。奏に真っ先に告げると初めから決めていたのだ。
「私は人工知能を持っています。自分の心と器のことも計算できます。誰よりも詳細にデータが取れます。無論あなたも知っているでしょうが。
奏、私の期限が近い。あちこち痛い。苦しい。老化が進みはじめている。白髪も混じるんだよ。私はどうも、人類とは成長速度が違うようです。私の持つ全ての知識とかけがえのない経験は総てデータ化して奏の元へ送ります。約束だからね。生み出してくれてありが