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Orbital Insightを徹底解剖! 事業概要、ビジネスモデル、歴史、組織、今後の展望まとめ

(1)衛星データ利用ビジネスの今と展望

前回の宇宙ビジネスモデル図鑑ではPlanet Labsという衛星を150機以上打ち上げている企業をご紹介しました。Planet Labsは数多くの衛星をアジャイル開発・運用し、衛星データのサブスクを実現させている企業でした。

では、このように大量に日々生み出されている衛星データは何に使われているのでしょうか。数多くの衛星から生み出される画像を人の手で一枚一枚確認することには限界があります。そこで、近年では大量の衛星データを機械学習にかけ、様々な地球上の変化を可視化する企業が数多く出てきています。

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これらの企業では、例えば海岸沿いによくある石油タンクの蓋を観測することで、石油の量を把握し、先物取引の指標にしたり、駐車場の車の台数を定点観測することでスーパーマーケットの今期の売上を予測したり、といったことに取り組んでいます。

打ち上げられる衛星の数が増えていく中で、今後、観測頻度や領域はますます増えると考えられ、自社で衛星を保有せずとも、そこから見出される付加価値でビジネスを行う企業は今後増えていくと考えられます。

今回は、そんな衛星データ解析企業の代表格であるOrbital Insightを深掘りしていきたいと思います。

(2)Orbital Insightの売上をチェック!

まずは、Orbital Insightの売上げについて見ていきたいと思います。Orbital Insightは上場していないため、情報は公開されていません。

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PwCコンサルティングのデータによると、衛星データ解析市場全体は上図の水色の部分、Information products& Big Dataにあたると考えられ、その額は1 Billion Euro規模、日本円にして1,200億円程度です。2022年にはこれが2,500億円規模と倍近くになると予想されています。

Orbital Insight単独の年間売上げとしては、調査企業が何社かまとめており、

Dun & Bradstreet, Inc社:$ 11.49 Million
Owler社:$ 20 Million
ZoomInfo Technologies LLC社:$44 Million

と金額は様々ですが、おおむね10~50億円規模と想定されます。

また、このあとででてくるGOというサービスでは、2019年6月時点でアメリカのリテール(小売)業界で127社が契約しており、アメリカのリテールマーケット全体の売上げの90%を占めると発表しています。

このように売上げを伸ばしているOrbital Inisght社がどんなサービスを展開しているのか、次章で見ていきたいと思います。

(3)Orbital Insightが提供する事例紹介

Orbital Insightは自社のブログで衛星データ活用事例を定期的に更新しています。本章ではブログの内容からOrbital Insightの衛星データ活用事例を業界別にまとめて紹介します。

経済

■石油タンクの監視
Orbital Insightは、衛星画像を用いて石油量の推定を行っています。
2019年4月29日のブログにて、OPEC加盟国及びOECD加盟国の原油貯蔵量が、1年前に比べて1億4,042万バレル増加していることを発表しました。

具体的には、50億バレル以上の貯蔵能力を示す中国の25,000基以上の浮き屋根石油タンクを撮影した衛星データから、前年比6,071万バレルの増産を行い、中国が単独で最大の貯蔵国であることを明らかにしています。

■特定店舗・企業の売上予測
Orbital Insightでは様々な小売店や特定の業界について、衛星データから駐車場に止まっている車の数を利用して売上予測の解析を行っています。

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