クマの食料である落葉広葉樹の伐採状況を見てみよう
2022年7月にスタートした豊橋市とのコラボレーション企画の続編!
豊橋市で集めたアイデアの中で、サービスとして可能性のあるアイデアを実験的に検証していきます。
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2023年度、北海道・本州・四国ではクマによる被害が過去最悪となりました。豊橋でも目撃情報が寄せられています。熊が人里に近づく原因の一つとして、クマの好物であるどんぐりの木に代表されるような落葉広葉樹の伐採が進んでいることが挙げられます。
今回は、衛星データを活用してクマの出没が報告されている愛知県北東部での落葉広葉樹の最新の伐採箇所の検出を試みます。
伐採の特徴と衛星データの活用方針
最新の落葉広葉樹の伐採エリアには、以下の特徴があると考えられます。
落葉広葉樹の分布エリアだった
森林に覆われていたが、伐採後は地面の土が露出している状態になる
1についてはオープンデータのJAXA EORCの高解像度土地利用土地被覆図【2022年】を使います。衛星データを活用して分類処理を実施した結果で、落葉広葉樹の分類精度は約96%です。
2についてはSentinel-2という光学衛星のデータを使います。伐採前後を比べるため雲量が少なくかつ植生が繁茂している5月または10月から選びましょう。今回は2023年5月と2022年5月の2時期を採用しました。
QGISのバンド演算で落葉広葉樹の分布を抽出
土地被覆図データをQGIS(地理空間情報データの閲覧、編集、分析などができる無料のツール)で表示し、「ラスタ」→「ラスタ計算機」を開きます。
左上の「LC_N36E137@1」、演算子欄の「=」をそれぞれクリックし、最後に”6”(落葉広葉樹(DBF))と入力します。出力先を指定した後「OK」をクリックすると、2022年の落葉広葉樹の分布が抽出されます。
植生指数・土壌指数で伐採エリアの抽出
Copernicus Browserから2022年5月と2023年5月の画像をダウンロードします。同じエリアにするために、データ名のタイル部分(Tから始まる6文字)を合わせます。
ダウンロードしたデータを使って、QGISで①トゥルーカラー画像と②NDVI/NDSIを出力します。
①トゥルーカラー画像
ダウンロードしたデータのうち、B2~B4のデータをQGISに表示し、結合処理(「ラスタ」→「その他」→「結合」)をします。この時、「各ファイルを別のバンドに格納する」にチェックを入れます。
処理後に表示されたレイヤのプロパティを開いてシンボロジの設定を変更します。
②NDVI/NDSI
Sentinel-2などのマルチスペクトルセンサでは、対象の地物ごとに反応する光の波長が異なることを生かして、植生や土壌などを評価する指数を算出することができます。以下のリンク先では、今回扱うNDVI(正規化植生指数)とNDSI(正規化土壌指数)が紹介されています。
NDVIを計算するため、B4(赤色の情報)とB8(近赤外の情報)のデータをQGISに表示してラスタ計算機で(B8-B4)/(B8+B4)と入力して算出します。同様に、NDSIはB11(短波赤外の情報)とB8を表示して(B11-B8)/(B11+B8)と入力します。
①と②をQGISで表示して、伐採箇所を目視で2~3箇所見つけます。
QGISの「i」ボタンを使用してNDVIとNDSIの値の傾向を調べると、以下の表の通りになりました。
表:指数とエリアの値の関係
2023年画像には伐採エリアの条件を、2022年画像には森林エリアの条件を採用します。また、前章で出力した落葉広葉樹(DBF)の結果と合わせて、以下の式でラスタ計算をします。
これで「2022年では落葉広葉樹があったが、2023年には伐採されたエリア」の候補が表示されます。
今回、伐採された最新の落葉広葉樹を検出できました。なお、画像が5月上旬だったため山頂付近の植生が完全な状態ではない箇所では誤検出していました。画像の選び方次第で誤検出を抑えられると思います。
まとめ
今回は衛星データで最新の落葉広葉樹の伐採エリアの検出を試み、うまく検出できました。今後は、HISUIのような非常に広い周波数帯をカバーするハイパースペクトラムセンサによって、高精度の検出が可能になると期待されています。
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