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あの日の私、完全にしくじりましたね

東京に住んでいたある朝のことだった。

いつも通りぜんぜん遅刻の時間に目を覚まし、半ば正気を失いながら電車に駆け込んだ。

「駆け込み乗車はおやめください、大変危険です」

車内アナウンス。

ああ、初めて自分が言われた。

よく聞くやつだ。

まったくなんて朝だよ。

電車を乗り換え、私は職場に着いてからのことを考えている。

まあ、みんなに白い目で見られるだろう。

怖くて電話してないけど、
「遅刻するなら電話しろ」
「こっちから電話かけた時は出ろ」
と言われるに違いない…というか上司からの電話には出ろよって話だけど、そっちも怖くて出れません。

電車内だし。

今考えるとLINEではだめだったのか?

その職場では人間関係というものがほぼ存在していなかったので、社内LINEも存在しない。

今考えるとぜんぜんだめじゃん!

そっちはいい、私はまた乗り換えた先にある車両に駆け込んだ。

…頭の中は
「やっぱもう帰っちゃおうかな」
「辞めちゃおうかな」
とかそんな塩梅。

………この女性、私を睨んでいるのか?

というか………なんでこの人たち(全員女性)は私を睨んで…………………女性専用車両…………………こういう気持ちになるのか。

朝の女性専用車両は混み合っているので、私が乗った、最後尾の一番奥から移動するとなると、向こう側のドアにたどり着くまでに、いったい何人の女性に接触しなければならないんだ。

移動できません。

【視線が痛い】って比喩じゃなかったのか。

その通勤では私は2駅くらいしか移動しないので、その間だけ、生きながらにして何度も死刑になればいいだけ。

いちいち説明するまでもなく、私はずっとスマホいじっていましたけども。

この場合はどう弁明してもだめだ。

存在自体が罪になる時間です。

なんということでしょう。

私はどれだけ慌ててたんだ!?

遅刻して怒られるの怖いけど、別に100回目くらいだからもういいじゃん!

『駆け込んで来た』から…本当に慌てて、一番そばの車両に乗っただけの馬鹿と思われてれば、まだマシですね…いやそっちが本当なんだ…。

当時の私の風体は、寝起き一番の髪ボサボサ、服も適当(どうせ職場に着いたらすぐ着替えるので)。

これは警察に捕まったりしないのか。

女性たちに駅員さんを呼ばれたら私は死ぬのか?

…法律だっけ?

これは法律だっけ?

この感情を言葉にするなら、
「可能なら今すぐ消滅したい」。

痴漢被害を経験し、強い恐怖と深い心の傷を負った女性たち…女性専用車両の採用については、私は全面的に賛成です。

あの日の私、完全にしくじりましたね。

もうその日の記憶は、その出来事以外は有象無象として処理されているので。

今の私から一言いうなら、
「そんなミスり方する?」

はい。

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