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◉【おもてなしに学ぶ】(茶道家メモVol.3 お茶の聖典)#35

お茶の聖典(バイブル)はお茶の故郷の中国から始まりました。それは「茶経(ちゃきょう)」と呼ばれ、唐の時代にまとめられた茶の経典です。

著者は唐代中期に活躍した文人・「陸羽(りくう)」です。彼は“茶聖”と呼ばれ、茶学家であり、詩や書道などをたしなむ文化人でもあったようです。


彼が記した「茶経」には「お茶の起源」として、紀元前2700年に農業・漢方の神様“神農 ”が茶を薬草として広めたという神話から、どのように茶をたしなむべきかという考え方まで、わずか七千字の中に知識と思想がぎっしりと詰まっています。


茶経」は10章からなります。 この茶経は中国貴族の間で「ベストセラ-」となり、いまでも受け継がれています。

それはこの本が単なるマニュアルではなく、お茶と人間との深いつながりを示唆するものとして受け止められているからだと思います。

茶経」には、最上のお茶を正しく丁寧に淹れること、淹れたお茶は熱いうちに飲むのが良いと書かれています。

また、他のものと混ぜて飲むという、当時のお茶のあり方とは違っていた意見があります。


かつて薬効のある飲み物だったお茶が、陸羽の「茶経」によって、一つの文化へと昇華されていき、茶道のルーツとなるお茶の規範を記し人々を導いていきます。

「一之源」(第1章)で、
茶は行い精れ(すぐれ)、
倹の徳のある人の飲物に最もふさわしい
」とあります。

行いが正しく、
倹しくて徳のある人こそが
お茶を飲むべきだという一文は、道(タオ)の教え、これは老荘思想を彷彿します。

宇宙自然の普遍的法則や根源的実在、道徳的な規範、美や真実の根元などを想起させ、茶道を学ぶうえで体得したい精神をあらわしていると感じます。 


お茶の世界観を紐解く茶道には自らを整えることにとどまることなく、同じ空間に同じ時を過ごす相手に対する配慮や相手に喜んでもらえるよう、茶人にとっても相手にとっても、一期一会の人格形成の旅路にある人間関係学だと思います。

おもてなしは心身ともに幸せになる為の人間関係学だと感じています。

あなたはどんなおもてなしをしていますか。

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