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雨月物語

『雨月物語』
上田秋成 1776

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羅子水滸を撰して、三世唖児を生み、紫媛を著し、一旦悪趣に堕ちるものは、蓋し業のせまるところとなるのみ
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「雨月物語」
五巻五冊。九編から成る。江戸中期の読本。中国の白話小説や日本の古典を翻訳または改作した、怪異小説集である。
「上田秋成」
1749〜1809 大阪の人、本名は東作。江戸後期の国学者・歌人・読本作者。後には医学も修め、開業した。

下総の富農に生まれた勝四郎は、百姓仕事が嫌で、妻の宮木に留守をさせて京に商いに上がるが、間もなく関東一円は兵乱の巷と化し、帰郷を諦めた。七年後、せめて妻の菩提を弔おうと荒廃しきった我が家に帰ってきた。すると意外や、勝四郎が家に戻ると、その帰郷を待ち侘びていた妻が出迎えてくれた。二人は喜びの涙を流して、お互いの身上と再会の幸せを語り合った。そして、夜も更け、一緒に寝につくこととなった。遠い道のりを歩いてきた疲れからか、勝四郎はすっかり熟睡していた。夢心地に、なんとなく寒く、夜具を掛け直そうとした手に、さやさやと音があり、目が覚めた。側に妻はなく、廃屋の草むらに寝ていたのであった。

「浅芽が宿」巻之ニ収録

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