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長野電鉄殺人事件

📕『長野電鉄殺人事件』

西村京太郎 2021

・・・二十年ぶりの長野である。
当然、その時より二十歳年齢を取って、現在木本は七十歳になる。

コロナによる緊急事態宣言もなくなり、観光県ともいわれる長野県で事件が起きる。長野電鉄湯田中駅のトイレで佐藤誠の刺殺体が発見された。相談したいことがあるといわれ待ち合わせをしていた木本啓一郎は、かつて佐藤とともに松代大本営跡の調査をしたことがあった。やがて木本は佐藤が大本営跡近くで二体の白骨を発見したことを突き止める。一方、十津川警部と大学で同窓だった新聞記者の田辺は学生時代に木本の講義を受けていたことから事件の取材を始める。

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戦時中に造られた松代大本営。象山の地下に本土決戦に備えて、大本営を移そうとする大作業であった。陸軍参謀本部は何の為に松代大本営を造ったのか、何の為に皇居まで松代に移そうとしたのか。天皇は松代に移るつもりはない、と言った記録がある。これらが研究発掘され、証言収集や議論推論が繰り返された。だが、地下大本営の問題が労働者の強制労働問題になり、朝鮮人労働者の強制労働者問題に移り、日本と韓国の国際問題になっていった。

・・・湯田中駅殺人事件と朝鮮人労働者問題が絡む。

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長野県は松代大本営跡を史跡として名所にしたかったが、朝鮮人労働者問題が起きた為に、観光的な扱いとして現在に至る。松代大本営跡の入り口の受付に僅かな説明があるだけで、案内人もおらず、ヘルメットを借りて自分たちで見て回らなければならない。戦争終結時に七割完成していたという松代大本営跡は延べ六キロ。公開されているのは五百メートル。(もし朝鮮人労働者関連のモノが出ては大変だから止めている、という眉唾物の推測がある)この状態であるから、松代大本営跡は歴史に向き合う施設とはいえない。その証拠に、松代大本営跡は、長野市の観光部観光振興課の担当である。

・・・そして皆神山近くの雑木林で男性の遺体が発見される。被害者は佐藤の足取りを調べていた木本であった。

翌日。
長野着一一時四四分の北陸新幹線「かがやき五〇九号」で、十津川と亀井が、到着した。
湯田中駅殺人事件の被害者佐藤と繋がる木本も犠牲になった。さらに、事件を取材していた田辺も失踪したのち、長野市役所前駅にて、一命を取り留めたものの記憶喪失の状態で発見される。

事件解決の糸口は、長野電鉄の沿線。
消し去られた事実と、よみがえる陸軍の陰謀。
・・・
「そんなものは、ありませんよ。長野県史にだって、のっていない」
「そうです、のっていない。何故、のっていないのか?」
・・・
十津川警部と亀井刑事の名コンビが推理する。

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