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キューポラのある街

キューポラのある街
早船ちよ 1959年から1年間連載、1961年書籍化。

日本経済が上昇期に入った昭和三十四年頃の鋳物の街埼玉県川口市を舞台とする作品。
中学三年生の「ジュン」の家は極めて貧しい。キューポラ(溶解炉)の炭たきの父「辰五郎」、ビニールの内職工場に勤める母「トミ」、小学五年生の弟「タカユキ」、身重の叔母「ハナエ」と五人で暮らしている。
鋳物職人の父は、熟練と勘で腕の良い仕事をするが、酒飲みでだらしがない。母は生活に追われて気持ちのゆとりが無い。弟は小遣い稼ぎに鳩の飼育に夢中になっていて非行少年すれすれでいる。叔母は初めての子を産むというのに、その夫は漁船の機関士で李承晩ラインを侵犯して韓国に抑留されたままである。
ジュンの周囲で起こる、貧困、家族の衝突、民族、友情、性、などの問題が描かれている。家族を愛しながらも、多感なジュンは心身の成長も絡んで時に反抗的になる。進学を諦められないジュンは、北朝鮮に帰還する在日朝鮮人の友人が「働きながら学ぶのだ」と言ったことに勇気付けられて、製糸工場に就職して定時制高校に通うことを決意する。

「キューポラのある街」は1962年、吉永小百合主演で映画化されました。監督は浦山桐郎で監督デビュー作となる。(浦山桐郎は、のちにアニメーション「龍の子太郎(1979)」を監督している。)

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