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ラプンツェル

📘『ラプンツェル』
グリム童話集(RHM12)
グリム兄弟(ヤーコブ・ヴィルヘルム)
1812年初版第一巻(86編)、1815年第二巻(70編)、以後七回改訂版をだし、1857年の第7版が決定版とされている。
「ラプンツェル」はクリム童話のなかでも特に人気のある傑作で、ドイツ語圏の国々では最も人気のあるメルヘン20編のひとつに数えられている。ヤーコブが1790年のフリードリッヒ・シュルツの小説から取り上げたもの。またこのシュルツの小説は、フランスのド・ラ・フォルスの妖精物語 「ペルシネット」の翻訳であることが、明らかになっている。ラプンツェルの「洋服がきつくなって、体に合わなくなった」というセリフは、第二版以降では「おばあさんを引き上げるのは王子さまよりずっと重い」と書き替えられている。妊娠を暗示する表現が「子どもと家庭の昔話」にふさわしくないとして排除されたと思われる。

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このメルヘンのヒロイン「ラプンツェル」の母親は、妊娠したため、自宅の裏手にある家の庭のラプンツェル(西洋サラダ菜)を食べたくてたまらなくなる。しかしその庭は、他人の侵入を拒むかのように高い塀で囲まれている。妻が痩せ衰えてゆくのを見るに見かねた夫は、高い塀を乗り越えて隣家の庭に侵入し、ラプンツェルを盗む。だが、二日目に隣家の女性に見つかってしまう。(隣家に住んでいる女性は、ヤーコプ・グリムが書いたと言われる初版では「妖精」、弟のヴィルヘルムが改作したと言われる第二版以降では「女魔法使い」となっている。)彼女は盗みを許す代わりに、生まれたばかりの子どもをもらい受ける約束をする。

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このメルヘンのテーマは、禁止と罰にある
ラプンツェルの父親は禁じられていた植物を妻に食べさせた。
(アダムがエヴァにエデンの園の禁断の木の実を与えた。)
ラプンツェルは王子と出会って妊娠した。
(アダムとエヴァが自分たちが裸であることを恥じ、性に目覚めた)
ラプンツェルはその美しいを切られて塔から荒野に追いやられ、王子は塔から身を投げて失明した
(アダムとエヴァが楽園から追放された)
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「ラプンツェル」のなかで、クリム兄弟は人間の醜さを見据えながらも、同時に人間の愛の
美しさを讃えている。人間はもはやかっての楽園のなかに生きることはできない。それが人間の悲しい運命なのである。ならは、人間はこの運命を愛の力で克服するほかない。「ラプンツェル」の結末が他のメルヘンよりもはるかに感動的なのは、イタリア民話やフランス民話にはなかった「愛による救済」という主題が付け加えられているためである。
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ラプンツェルが荒野のなかをさまよってゆかなければならないのと同様に、失明した王子も人間世界という間のなかを手探りしながら生きてゆかなければならない。しかし森のなかで二人は偶然に再会する。ラプンツェルは王子の首に抱きついて泣く。すると、万感のこもった彼女の涙が失明した王子の眼を開かせる。愛が奇蹟を成就させる。

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