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家なき娘

「家なき娘」
エクトール・マロー

1893年に新聞連載。本来の題名「家族とともに」
日本では主人公の名より「ペリーヌ物語」
(1978年にアニメ化)

ペリーヌは、フランス人を父、インド人を母に持つ少女で。祖父のヴュルフランは7,000人が働く紡績工場を経営する新興起業家。もとから良くなかった祖父と父の関係は、父のインド人との結婚で絶縁状態となっていた。それでもペリーヌの父は、祖父との関係を回復しようと試み、インドからフランスを目指して馬車で妻子を連れて帰国の途につく。しかし、旅の途中で父は病死、パリ到着後に母も病死してしまう。母は死の直前に「あなたが人を愛すれば人はあなたを愛さずにはいられなくなります。そうすればあなたの不幸は終わります。」とペリーヌに言い遺した。ひとりぼっちになったペリーヌは、祖父が住む町に苦労の末に辿り着く。ペリーヌは、祖父のことも祖父の心中もわからないため、オーレリイという偽名を使って紡績工場で働き始める・・・。

祖父ヴェルフランは白内障のため目が見えず、偏屈で頑固、孤独な老人であった。誰にでも警戒する冷徹な心をほぐしていったのは、ペリーヌだった。ヴェルフランは病院や託児所、独身寮、家族向けの住宅、そしてカフェ、バー、レストラン、売店、さらに公園、遊園地などの施設を建設して自分の紡績工場で働く労働者の福利厚生に尽力する。ペリーヌの献身的で真摯な姿勢がヴェルフランを変えていったのだ。施設を地域住民に開放して地域社会に対しても大きな貢献を進めていく。ヴェルフランは多くの人々から感謝されているという充実感を得られるようになった。ペリーヌのおかげである。上下両極端な生活環境を見てきたペリーヌだからこそ、工場労働者に温かな眼差しを向けられたのである。

ペリーヌとヴュルフランは生まれ変わっていく街を眺める。ヴェルフランは語る。この街の景色そのものががペリーヌの作品であり、ペリーヌとこの「作品」のために力を尽くす良き夫はきっと見つかるだろうと。
そして、言う・・・。

「そして、私たちは幸せに暮らします・・・家族とともに(en famille)」
・・・ヴェルフラン

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