わたしの愛読書
執筆に煮詰まってしまった時、開く本がある。
国書刊行会「山尾悠子作品集成」
なんと8800円もするのでクリスマスプレゼントとして買った。
私が山尾悠子を知ったのは、自作の1編の詩からだった。
画家の東山魁夷の絵から着想した作品を、とあるサイトに載せたら
感想を頂いた。下記はその時の詩全文。
「山尾悠子を想像させました」
私は知らなかった。その山尾悠子という作家を。
調べたら短編が多い作家で幻想小説家だという。
絵画から着想した作品もある。
「なんだ、やってる人いるんだ。」
そんな生意気な感想を漏らし、似ているといわれ嬉しくなって、さっそく読んでみた。
最初購入したのは「飛ぶ孔雀」だ。これは何といっていいのか、わからない。
はっきり言って、何をいっているのかわからなかった。
たぶんこれを好むのは哲学趣向なのだと思う。
でも魅力的だ。その文体にすっかり嵌まった。
幻想作家とは、こんなものを書くのかというお手本になった。
私もこんな作品を書きたいと思った。
そして未だに書けないけれど、冒頭にも書いたように、自分がどうしたいのか、何を書きたいのか、わからなくなった時、この人の作品を読むようになった。
すると不思議で、この人に影響された文章というものがでてくるわけもなく
はっきりと自分の心にわき出てくる言葉というものが見えてくる。
まさにマジックだと思う。この人の作品は魔術がかっているのだ。
あと、漢字のふりがなにも特徴があってセンスを感じる。
使っている漢字にもこだわりが滲んでいる。
これは真似できないと思った。これはこの人の宝なんだ。
言葉の宝。そんなもの持ってみたい。
読みやすい作品に「ラピスラズリ」がある。これはおすすめ。
ショートショートの作品集で難しいことはない。
どれも不思議な話で、夢中にさせる力を持っている。
中にある「竈の秋」という作品がある。
この中に使われている単語が、物珍しくて、何度も辞書を開いた。
そこ漢字使いますか?に、「抽斗」というものがある。
これは普通に「引き出し」にしない。この二文字で作者は読者を独特な世界に導く。山尾悠子の確固たる世界にのめり込むことになる。
いつも思うけど、目標にしたいけどできない作家だ。聖域といってもいい。
それでもマジックで私は力を得る事ができる。
それは時に詩だったり、小説だったり、日常の感じ方だったりする。
自分がわからなくなった時、打ちひしがれてしまった時、なさけなくて小さく感じた時、そこで背中を押してくれる、または慰めてくれる作品がどれだけあるだろう。私にはそれがあってよかった。
ただ、それでも辛い時がある。本を開けないほど悩むことがある。
そんな時は、山尾悠子作品を手にもって、または机にのせてぼけっとする。それだけで力をくれる。不思議な本。
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