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うつしおみ

60
真実を求めてこの世界を旅する魂の物語。
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2024年5月の記事一覧

うつしおみ 第60話 暗闇と光

魂は暗く冷たい土の中で眠っていたが、 ある日暖かい光を感じて目を覚ました。 その光の方へと手を伸ばしていくと、 暗闇から光の世界へと抜け出ることができた。 さらに上には眩しいほどの青が広がっていて、 その勢いで空へも手を伸ばしてみた。 魂は光を浴びるほどに瑞々しい生命を感じ、 地上は薄緑色のその手で覆われていった。 世界では小鳥たちが楽しげにさえずり、 それに合わせて魂はそよ風と笑いながら踊った。 だが、時とともに魂の生命は瑞々しさを失い、 ついに力尽きて乾いた土の

うつしおみ 第59話 青空と呪い

魂は生きる辛さや苦しんで死ぬこと、 失敗したり不幸になることを恐れていた。 いつでも何かに恐れていたため、 それは魂にかけられた赤黒い呪いとなった。 魂はその呪いに水を掛けて落とそうとしたが、 それを手放すことに躊躇してもいた。 恐れのその痛みによって生が際立ち、 魂に生きている実感が与えられていたからだ。 そのため呪を解きたいという気持ちと 呪われたままでいたいという気持ちが渦巻いていた。 心に深く刻まれた呪の放つ青い閃光が魂を削り、 その痛みを抱きしめて空を仰ぎ