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ドギョムを忘れない②

4月末日。

弊社も無事GW大型連休を言い渡され、私事だが奈良の曽爾高原と京都に単身旅行へ出かけた。曽爾高原ハイキングは少し肌寒いくらいの気候で最高だった。ただただ最高だったので、詳細は割愛する。私は自然が好きだ。山も海も良いが、広くて草がたくさん生えている所が特に好きで、死ぬまでにたくさんハイキングやピクニックがしたいと思っている。高原と検索して美しい曽爾の写真が出てきた時、必ずここへ行くと心に誓った。あまりにも美しくはしゃぎすぎて、同行者がいたらもっとはしゃげたな、と思ったら途方もなく虚しくなった。ここはススキが有名だが、私は緑が好きだ。とてもいい時期を選んだと自分を褒めたい。

京都は私の地元千葉の仲間が移り住んでいて、観光もほどほどに、ただ彼女に会うことを目的に訪れた。彼女とは文通をごくまれにしていたけれど、私が筆不精なせいでなんとなく疎遠になってしまっていた。彼女とは少し特別な関係で、なんとなくLINEは交換していない。お互い口下手で大事に言葉を使うので、やり取りはEメールのみだ。しばらく会えていない彼女に会いたいと思ったけれど口実がなかなか見つからず、だからおのずと京都に近い曽爾を選んだのかもしれなかった。彼女に最後に会ったのは学生の頃だ。

彼女と鴨川の側でお酒とおでんを楽しみながら、私は「生きてればまた会えるもんね」などと口走っていた。“そういう”感じだった。私は、長いのか短いのか分からない人生の中で失いたくない物があって、不器用にも執着している。まさにそれだった。私はこの気持ちをそのままソウルへと引き継ぐ。

行き帰りは夜光バス。新宿バスタの待合室はたくさんの人でごった返していて、ああたくさんの人たちが目的あって遠くへ旅するのだなと思った。


こまごま調べて一人で遠出するのはここ数年で始めたことだ。しかしそれも国内にとどまっている。一人渡韓するのは不安もあったが、自分でなんとかするしかないので同行者に迷惑をかけることもないし、むしろ気楽だった。私は何かを学ぶ時、一人か、マンツーマンじゃないと思考や感覚が散ってしまい、上手くできないことが多い。実感が浅くなるとでも言えばいいのか。一人でやって、一人で納得するまでやらないとならない。ソウルには数年前友人にくっついて何から何までやってもらって飛んだが、海外旅行のノウハウは全くといっていいほど身につかず、ボーとしたまま夢見心地で帰国した。(その節は本当に感謝している。ありがとう…)

まず私のステータスとして、

①韓国語が聞き取れない、話せない。

②簡単なハングルもなんとなく読めたり読めなかったりする。

③英会話、ほぼできない。

④パスポート所持。

⑤Tマネーカード所持(チャージの仕方、地下鉄の雰囲気はわかる) 

⑥Wi-Fiどこで借りればいいんだろう。

⑦入出国審査もよくわからない。

⑧何か書かされる紙もあった気がするが、書き方がわからない。 

⑨こんなにも喋れないし信用できる人間のいない宿に女一人で泊まれない。何かあった時に何も喋ることができない。怖い。

…と、そんな低スペック、疑心暗鬼、引きこもり、Twitterの中の蛙、低予算オタクが突然でっかい冒険に出られるはずもなく、私が選択した身の丈に合ったスケジュールは

羽田泊 → 早朝羽田発 → 夜仁川発、羽田泊

0泊3日である。羽田が安全なのは数年前友人と渡韓した際に細胞に焼きつけた。何にそんなに怯えることがあろうか、でも言わせてほしい。私は本当に学ばない人間で、しかし無鉄砲な子供でもない。かなり凝り固まった弱い女であり、プラトニックな部分に他人の干渉を許さない。この旅はとにかく自分一人で遂行せねばならなかった。本当に頑固で厄介な精神のまま大人になってしまったなと思う。


さてミュージカルを観るにあたって予習は必須だ。なぜならば私は韓国語が聞き取れない。

5月半ばに角川書店とSEVENTEENがコラボするイベントがあった。文庫本の表紙にSEVENTEENのメンバーが刷られるというものだ。ドギョムの本は粋な計らいからか、トマス・ブルフィンチの『新訳 アーサー王物語』。ミュージカルまでに読破する、それ以外私に選択肢はなかった。私は痛いことに、これまでアーサー王伝説を扱った媒体にことごとく触れてこなかった。映画キング・アーサー、ディズニー王様の剣、ミュージカルArtus - Excalibur、宝塚月組 アーサー王伝説、Fateシリーズetc…もちろん世界史もさほど熱心に勉強してこなかった。差し当たってこれらの作品をすべて履修して…なんてことも一切しなかったが(…)実際、新訳アーサー王物語を前泊羽田空港にて流し読みし、ざっくり登場人物の名前や時代背景を把握していくだけでも充分だった。

http://han-geki.com/archives/11699 EMK [MUSICAL]2019年新作『エクスカリバー』豪華キャストを公開

この記事が本当にわかりやすいのだが、スイス公演のミュージカル、Artus - Excaliburの脚本家、作曲家、作詞家、原作スタッフがEMK版Xcalibur:엑스칼리버の上映権を獲得した形なので、正直新訳アーサー王物語を読むよりもArtus - Excaliburの映像をYouTubeでいくつか見た方が予習になったと思う。(ドイツ語ミュージカルなので雰囲気のみだが)

加えて今回のエクスカリバー、アーサー役はトリプルキャストを採用していて、特にキム・ジュンス(!)公演のファンブログなんかはかなり読みごたえがあって、とても楽しく予習とさせて頂いた。劇場、観劇慣れしていない私もかなり雰囲気を掴むことができたし、彼をずっと追ってきたファンたちは本当に幸せだなと、レポートを読んでも、プレス映像などを見ても心の底からそう思う。更にジュンスはスイス公演Artus - Excaliburの作曲家、フランク・ワイルドホーンから何度もラブコールを受けているような、作り手同士熱い繋がりもある。

言葉にならないこの表現力の高さたるや

こうしてなんとか付け焼き刃の知識を手にし、ドギョム(公演ネタバレ)と検索しては溜め息をつくような日々を淡々とおくった。しかしあとはなるようにしかならないだろう。腹をくくり、渡韓に向け残りの準備に取りかかるのであった。


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