「梅雨明け」のきらめき
「梅雨明けの瞬間」が好きだった。
7月のある日、小笠原気団が梅雨前線をぐいぐい押し上げはじめる。本州を覆っていた湿った空気が北上し、からりとした空気が南から入ってくる。まるで天の底がぐんぐんと上がっていくように感じられる。
「夏がはじまる」
ドキドキするあの瞬間はたまらない。
これまでにいちばん印象的だったのは、雨の扇沢から黒部ダムを経て、立山ロープウェイで大観峰へと登っていたときだった。ロープウェイの高度が上がる速度以上に、空が上がっていくのを感じた。胸がどきどきした。