博士院生の日記#1

実家。瀬戸内の田舎町では時間さえも弛緩しきっているように感じる。何をしても時間が過ぎていかない。夕方、駅前のスーパーに行く。気温は京都よりはいくぶんかマシで、人は信じがたいほどまばらにしかいない。駅前のスーパーは、小学校に入る前くらいにできたが、2019年に呉市に本社があったそのスーパーの会社が倒産し、同年から経営母体が変わって営業している。生前の父に「サンワ」に行くと伝えると、決まって「ピュアークック」と言いなさいと返された。このやりとりも、実際に数字を調べてみると、一年半ほどの期間でしかなかった。

夜の野菜炒めの具材と晩酌用のお酒を購入した。鮮魚コーナーに「明太魚」の切り身が売られている。いつか「明太魚」について何か書こうと思っていたが、梶山季之(1930~1975)に先をこされていた。「ケロイド心中」(1971)の冒頭に、北海道の港で「明太魚」が水揚げされているという描写がある。祖父が死んでから、ずいぶんと縁遠い魚になってしまった。

帰宅。夕飯を作るまでのあいだに、査読論文の校正作業。神経を使う。

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