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【海のはじまり】弥生さんと水季

第三話目、さらに弥生さんに対して色々感じる回だった。弥生さんが抱える過去。弥生さんが「こうであればいいな」と自分以外の人に抱く期待はことごとく敵わない。昔の彼氏や母親の言葉や姿勢が弥生さんの横をすり抜けていって冷たい感覚だけが残っていく。弥生さんは自分が他人に望むことを主張せず、通り過ぎていくのに争わない。一人で思いを抱えて乗り越えていく今までだった。

水希の他人との関わり方はもっと複雑で難しい。自由奔放にやりたいことをやったり言ったりしてるようでいて、海には全部を曝け出さなかった。海の人生を変えたくないというのも本心だったろうし、海の子供を産んで育てたいというのも本心だろうし、海に会いたいずっと一緒にいたいというのも本心だろうし。海が全ての事情を受け入れることもわかっていただろうに二人で過ごすことを選べなかったのはなぜなんだろう。このドラマを見ていて思うのは人って誰も完璧じゃないんだよな、ということ。誰もいつも完璧な答えを見つけてそれを選んでいるわけじゃないし、いつも自分のしてることに納得してるわけではない。水季の謎な選択も私は共感することはできないけれど、彼女にとってはそれを選びたかったんだろう。間違いとか正解とかじゃなく、彼女はそれを選んだ。ただそれだけ。

今回、水季のお父さんとの関わりがたくさん出てきた。とても素敵なお父さんだった。よく聞く話で、父親にちゃんと愛された女の子はパートナー選びに失敗しない、という説。私は割とそれ、あってると思う。という話をするとき、私が思い浮かべるのは自分のこと。私がパートナー選びに失敗したのをずっと父親のせいだと思ってきてた。自分の父親が癇癪持ちだったので小さな頃からいつも怯えていた。今日はどうだろうか、機嫌はいいだろうか。顔色を窺ってビクビクして、それでも突然機嫌を損ねてその場で叩かれたりもあった。生意気な態度をとったと別室に呼ばれて正座で長く叱られたり。別室にいくのを襖に捕まって嫌がって泣いたことも覚えている。それでも引っ張っていかれた。そういうことばかりが強烈に染み付いているので、男性に穏やかな態度で優しくされると惹かれていった。「叩かれなければいい」「怖くなければいい」と相手に求めるハードルがすごく低くなった。ただ、私の父親は私のことを愛してくれていたことは知っている。都会の一人暮らしで空き巣に入られた時、翌日には飛行機で飛んできて私が会社に行ってる間に割られたガラスを入れ替え、ダメージを受けたカーテンやベッドカバーを新しいものに変えてくれた。父親の病気が進んで、もうほとんど何もわからなくなっていた時でも、私が病室に入れば私だとわかってくれた。私の名前も顔も忘れずにいてくれた。ずっとわかってくれていた。私は父親にちゃんと愛されていたと思う。ただ、彼は愛することが上手じゃなかったんだ。不器用だったんだ。思えば私自身も愛されるのが上手じゃないんだろうな。だから最初に言った父親にちゃんと愛された女の子はパートナー選びに失敗しない、というのはちょっと違っていて、

父親に上手に愛された女の子はパートナー選びに失敗しない

という方がより信憑性があるような気がする。水季のお父さんはとても上手に水季を愛していたと思う。穏やかで踏み込みすぎず、緩やかに気持ちの流れを誘導して支える。母親にはつい強い態度をとってしまう水季が心のうちを話せているのだけで、お父さんとの関係性は大成功な関係性だと思う。そして、

水季のお父さんはまるで夏じゃないか!

と思った。夏もかなりありえないくらいの美しい心根の持ち主だけれど、その夏を選んだ水季は夏を選ぶ素養があったんだ。素敵な人を選ぶアンテナが育てられていた。

その点で言うと、弥生さんは最初のパートナー選びは失敗したけれど、夏に出会って夏の良さを見抜けたのはすごいし、良かったなと思う。弥生さんは自分の置かれた厳しい状況の中からもあんなに素敵な人になって、それはもう彼女の個人の魂の力なんだろう。私の姉のようだ。私の姉も私と同じような環境で育ったにも関わらず私のようにチャランポランじゃなくてしっかり地に足をつけた生活をしている。父親にも私よりも過酷な目にあっていたのに最後まで愛情深く細やかにお世話をしていた。だから私が私の失敗を父親のせいにするのは違っているんだってこともわかっている。私が私自身が個体として弱いというだけの話。

今回のお話で、ああ、良かったなと思ったのは水季がお父さんに

「(赤ちゃんが)相手に似て欲しい。相手に似てくれたら欲しい」

と伝えていたこと。お父さんも言っていたけれど、もうその言葉だけで相手がどんな人なのかということがわかる。水季がその人のことをどう思っていて、赤ちゃんがどういう二人の下でできたのかということもわかる。だから、そのことがちゃんと水季からお父さんに伝えられていて本当に良かったなと思った。

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