「意識の発達段階の地図」
はじめに
前回では、
「意識の発達段階の地図」があることで、自身と、私たちという人類がどのような方向性を見ればよいのかが分かる。そのことで、現状に必要な情報と環境が見いだされ、異なる価値観や考えのある人々とも協力して前に進むことが出来る。
という話をしました。
今回はその具体的な「意識の発達段階についての地図」についてです。
今回の記事は、
企業研修講師/心理カウンセラーの松山淳さんの記事を参考・引用しております。リンクも自由ということで、とても感謝しています。ケン・ウィルバーの理論をここまで丁寧に分かりやすく解説してくださっているので、とても貴重な情報サイトです。
是非一見してみてください。今回の記事は松山さんのサイトが素晴らしいので、その一部分を簡潔に抜粋というような感じになっております。
意識発達に関する「地図」:「スパイラル・ダイナミクス」
ケン・ウィルバーは、上のような意識発達に関する「段階表」を、比喩を使って「地図」と表現しています。
ウィルバーは「スパイラル・ダイナミクス」理論をベースに以下にまとめました。スパイラル・ダイナミクス理論の提唱者の一人ベック博士は言います。
「なぜスパイラルなのか」という疑問が生じるかもしれません。スパイラル(螺旋)は、自然界の動きであり、陰陽であり、DNAから銀河系まで全てにおいて明らかに存在する普遍的なフラクタルであるからです。スパイラルダイナミクスは、人間の意識の進化が次のように表されるのが最適であるという立場をとるわけです。」
ここでは、「発達心理学」には、各段階があって、それぞれの段階に特性があり、こうした意識の発達にはより高次の段階があることを理解してもらえれば十分です。暗記して覚える必要もありません。
なぜなら、意識発達の「地図」(段階表)を「知る」だけでも、それは意識に作用し始めるからです。
「スパイラル・ダイナミクス」の各段階
これから「成人発達理論」に関する段階を説明していきます。ここで事前に、強調しておきたいことがあります。それは、「高い段階にいくほど価値が高く、成功できる」というものではないこと、つまり「それぞれの各段階に価値がある」と認めることです。
「超えて含む」(Transcend and include)
私たち人間は、それぞれの段階をくぐり抜けて、現在の段階に到達していきます。くぐり抜けるとは、その段階を超えていくことです。「1段階」から「2段階」へ、「2段階」から「3段階」へと、順番に発達していきます。飛び級のように「1段階」から「4段階」へ発達することはありません。
「4段階」に到達した時には、「1」「2」「3」段階の要素を「含んでいる」のです。それが「超えて含む」ということです。
「発達研究の核心にあるのは、人々を固定した枠に押し込むことでもなければ、人々の優劣を判定することでもないのだ。そうではなく、発達研究とは、ひとつの指針であり、どんな潜在的能力が未だ活用されていないのかを明らかにしてくれるものなのである。『インテグラル理論』(ケン・ウィルバー JMA)p248」
上の文章で、特に「人々の優劣を判定することでもない」が重要です。ウイルバーのこの言葉を胸に秘めて、各段階に価値があることを認めつつ、では、各段階の説明に移ります。
1.ベージュ「古代的-本能的」段階
基本的な生存活動の段階です。知性の発達していない「原始人」や「生まれたばかりの赤ちゃん」などが、「古代的ー本能的」段階です。
食べること、寝ることなど、本能の欲求に従った行動が優先され、生命を維持すること、生き残ることに、意識の焦点が合います。
2.パープル「呪術的-アニミズム的」段階
「アニミズム」(animism)とは、海、山、川、空、石など、人間以外の様々ものにも魂や精霊が宿っていると考える宗教的思想のひとつです。イギリスの人類学者E・B・タイラーが提唱した言葉です。
世界で近代文明にふれない未開人たちが、部族集団形成しています。これらの部族は、神を信じ、ジャングルに住む精霊を恐れ、「アニミズム」の精神文化をベースに、今も、生活しています。
アニミズの精神は、先進国にも残っています。「バチが当たる」と、日常会話でさらっという時、そこに「神の存在」があります。お盆に「ご先祖様が帰ってくる」と、お墓参りをしたり、仏壇を綺麗にしたりするのは、「死んだ人の霊」が、前提になります。神社など「パワースポット」を訪れ、「開運」を願うのは、アニミズ的行動といえます。
しかし、現代文明を囲まれ暮らす私たちにとって、それは「時折」することであり、生活や人生の全てではありません。
3.レッド「呪術-神話的」(力のある神々)の段階
「力と栄光に基づく封建的帝国の基礎にある段階」(p52)です。神やドラゴンなど「神話的存在」を認めていて、帝国を司どる「王」のような存在が、「民」を支配しようとします。「征服すること、相手を出し抜くこと、支配することを好む」特性を見せます。
現代で言えば、宗教を信仰するギャング集団のリーダーがそうです。宗教の考えに基づくテロリスト集団も、レッドの段階といえます。こうした勢力は、世界的に見れば、数は少ないものの、確かに存在し、世界に影響を及ぼしています。
現代でも、監督、コーチによる選手への「暴力」、上司の部下に対する「パワハラ」が常態化しているブラックな組織があれば、それはレッドの段階です。
4.ブルー「神話的秩序」の段階
「古代国家の基礎にある段階。厳格な社会階層が存在し、父権主義的であり、あらゆることを「唯一の正しい考え」に基づいて考える」(p53)。
古くは、宗教が人生の規範として機能していた時代の意識であり、清教徒時代のアメリカや儒教時代の中国が代表例となります。日本では「武士道」に従った武家社会です。「切腹」を潔しとする侍たちの精神がそれです。
日本で暮らしていると想像しにくいですが、世界には、神の存在を信じ、宗教の戒律を守り生活する人たちが、多く存在します。成人人口の40%が、ブルーの段階です。
会社でもスポーツチームに、カリスマー的なリーダーがいたとします。そのリーダーの言うことが「絶対命令」「絶体ルール」となり、従い続けているとしたら、その組織はブルーの「神話的秩序」の段階にあるといえます。
社長や部長の「鶴の一声」で、何もかもが決まってしまう職場は、確かに存在しています。
5. オレンジ「合理的」(科学的達成)の段階
「法人国家の基礎にある段階」です。「世界とは、自然法則に基づいて円滑に動く合理的な機械である」と考え、「政治も、経済も、人間社会の諸々の出来事も科学の諸法則によって規定されている」(p54)とみなします。
4までの段階が、人智を超える「神話的」存在を前提としているとしたら、5「合理的」段階は、科学的、合理的なルールを前提とします。
成人であれば、現在の日本人の多くが、この段階に到達しているはずです。国語、算数、理解、社会など、広範囲な知識を幼い頃から教育され、科学的、合理的な「考え方」の基礎ができています。
学校教育が充実した世界の先進国の人たちが同じ段階にあり、成人人口の30%に達すると考えられています。
企業が戦略を立て、資源を配分し、売上・利益を生み出していく合理的なシステムは、オレンジ「合理的」段階にある「知性」の産物です。
6. グリーン「多元的」(感受性豊かな自己)の段階
「価値の共同体(共通の感受性をもっていることを基準として自由に結ばれる連帯関係)の基礎にある段階」です。
「多様性を重視し、多文化主義の立場」をとることが多く、「精神性・霊性を新たな形でよみがえらせ、世界に調和をもたらし、人間の潜在的可能性を拡張」していきます。「温かな感情、思いやり、気遣いにあふれており、これらは地球とそこに暮らす全ての生命に向けられ」(p55)ています。
1980年代から90年に起きた世界的な「エコロジー・ムーブメン」に賛同しアクションを起こした人や、国際的な環境問題、人道支援活動に携わっている人は、グリーン「多元的」(感受性豊かな自己)の段階といえます。
グリーン段階の成人人口は、全世界の10%です。
7. イエロー「統合的な段階」
6グリーン「多元的」段階までが「第一層」で、7イエロー「統合的段階」から「第二層」に入ります。
「第一層」は生存というエゴ中心の発達段階であることに対して、「第二層」から「在ること」そのものに価値を置くという段階に入ります。この段階は、人類史でも稀有な現象で、研究者は「量子的な飛躍」とまで表現します。それほどこの段階が表出しているこの時代は、非常に貴重な時代とも言えます。
この段階は、「差異や多元性は統合され、自然な流れをつくり、さまざまな流れが相互に異依存し合っている」「世界が現在の姿になっているのは、現実とはさまざまな段階から構成されており、人々が発達のダイナミックな螺旋を上下に運動することは避けられないから」と考えます。
8. ターコイズ「全体的」(ホリスティックな段階)
「ホリスティック」(Holistic)は、「全体」「つながり」を含む意味あいがあり、「全体論的」と訳されます。
例えば、「ホリスティック医学」という言葉があります。
医学では、主に「体」を治療や研究の対象とします。しかし、「ホリスティック医学」では、「体」だけを診るのではなく、目に見えない霊性を含め「体ー心ー魂」(body-Mind-Spirit)など、人間にまつわる多様な視点を含ませながら、つまり「全体論的」(ホリスティック)な観点から治療・研究にあたります。
近代合理主義の「知性」は、過度に「目に見えないものを」を切り捨ててきました。霊性を研究対象とすることを避けてきました。それはホリスティックな思考ではなく、医学を分断している部分的思考と考えられるのです。
マインドフルネス瞑想の広がりとともに、科学的、医学的研究が進み、瞑想状態における変性意識下では、超越的な特殊な意識現象の起きることが、繰り返し確認されています。それは「霊性の知」を含めないと、説明がつかないものです。
「8全体的(ホリスティック段階)」に到達した人の特徴は、次のように記述されています。
「発達の螺旋全体を踏まえて思考し、多種多様なレベルの相互作用が存在することを認識する。どんな組織の中にも、調和を見出し、神秘的な力を感知し、フロー状態が遍満していることを見抜く」『インテグラル理論』(ケン・ウィルバー JMA)p60
この段階は、成人人口の0.1%です。言葉で説明されても、実際にどんな意識状態なのかを、イメージするのが難しい段階です。具体例として「マハトマ・ガンジー」と「ネルソン・マンデラ」の名が挙げられています。
ふたりの歴史的偉人は「インテグラル理論」を知っていてそうなったのではなく、多くの人が不可能とあきらめる「大いなる使命」の遂行を通して、「8全体的(ホリスティック段階)」に到達したのでしょう。
更なる段階
さて、「1」段階から「8」段階までを、急いで、お話ししてきました。最後にお伝えしておかなければならいのは、「8」段階が、「最終段階ではない」ということです。
成人人口の0.1%よりも遥かにすくないとされる段階なので、その段階の資料や証拠が非常に少ないのです。
大乗仏教の経典やキリスト教での過去の聖人、ヴェーダの聖典に出てくる覚者たちはそのような特徴を持ち合わせているように見受けられます。
そして、その意識状態と臨死体験の意識状態、また、地球外知的生命体にアブダクションされたような体験の意識状態は、似通っているように個人的に感じられます。
また、以前の記事にも書きましたが、仏教、キリスト教、ヴェーダ、神道の経典の中には、現代科学ではオカルトと揶揄されるような内容の記事があります。それらがUFOや高次元の存在とのコンタクトです。
発達の第7段階以降は、自我(エゴ)という「時間軸」を元にした思考にほとんど依存しません。
つまりその存在達は、時空を超えた思考操作を行うことが推測できます。
SF映画や漫画、小説は、神話をモチーフにしているものが殆どです。
何が現実でSFなのか境界線があいまいになって行きますが、同時にワクワクする好奇心も芽生えるものです。
こうした発達段階の地図は、子どもが大人のヒーローを見て大きな影響を受け、その後の人生の方向性を決定づけられるほど、大きな影響を意識に埋め込みます。
こうした聖典やSF、小説に出てくる聖人や覚者への人気は、子どもが大人にあこがれる羨望意識ともに通うものがあるように感じます。
いずれは自身も、紆余曲折ありつつ、いつの間にかそのような意識段階になっているものです。
その成長を加速するための一つの知識として、「意識の発達段階の地図」は有益だと思われます。
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