脳性麻痺の小児および若年成人における機能的歩行訓練の有効性:システマティックレビュー

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1.はじめに

 現在、CPの小児および若年成人に対する機能的歩行訓練の最適なプロトコルは確立されていません.

 これまでのシステマティックレビューでは、部分免荷トレッドミルトレーニング(以下PBWSTT)に焦点が当てられ、最終的にCPの子どもにとって安全で実行可能な治療法であると結論づけられ、肯定的なエビデンスが報告されています.

 今回のシステマティックレビューの目的は、CPの小児および若年成人における歩行関連のアウトカムに対する機能的歩行訓練の有効性を評価することです.また、一般的に実施されている歩行訓練介入の種類、地上での歩行訓練(以下OGT)、PBWSTT、トレッドミルトレーニング(以下TT)、およびバーチャルリアリティとフィードバックで強化された歩行訓練の付加的な利点の有効性を比較することを副次的な目的としています.

2.方法

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3.結果

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歩行速度 
最も一般的に報告されている歩行のアウトカム
ほとんどの研究で歩行速度向上
機能的歩行訓練中止後1ヶ月〜6ヶ月までのフォローアップを行なった研究ではポジティブな効果の持続あり
機能的歩行訓練後歩行速度低下
機能的歩行訓練中止後14週後のフォローアップにて歩行速度低下を認めた報告も1件と少数だがあり
歩行耐久性 
効果の大きさには大きなばらつきあり
機能的歩行訓練の結果、持久力向上あり
介入後歩行距離が減少したとの報告も1件と少数だがあり
持久力向上の持続性は様々で、向上が持続するものと後退するものがあった
粗大運動機能
GMFMの立位・歩行次元(D・E)の報告が多く
機能的歩行訓練後の結果、スコア向上あり
スコアに変化が無かった報告も1件と少数だがあり
機能的歩行訓練後1ヶ月〜6ヶ月までのフォローアップで総体的な運動機能におけるポジティブな効果の持続あり
その他の歩行関連アウトカム
PEDI
PODCI
Five times sit to stand
Timed up and go
すべての研究で有意な改善を認めた
メタ解析の結果
歩行速度向上に向けた有意な中効果は、標準的な物理療法よりも歩行トレーニングが有利(p=0.04)
バーチャルリアリティとフィードバックを強化した歩行訓練を行なった歩行訓練群
歩行速度に対する歩行訓練の効果サイズが大きくなる傾向あり
持久力とGMFM(次元E)では効果は明らかでなく、トレッドミルトレーニングは標準的な(従来の)理学療法、PBWSTT、OGTと比較して効果が大きくなる傾向あり
※バーチャルリアリティとフィードバックを強化した歩行訓練は報告されたデータが限られており、これらの歩行結果を比較するすることは困難
OGTとPBWSを併用した群
歩行速度に大きな効果あり
トレッドミルトレーニング(TT)群
GMFM次元Eに大きな効果あり

4.考察

機能的歩行訓練によるCPの子どもと若年成人の歩行能力向上は、幅広い年齢層と運動制限の重さに関わらず、肯定的な効果があることを支持するエビデンスが圧倒的に多かった

歩行速度と総運動機能の改善が広く報告され、臨床的に重要な量を超えていた.歩行持久力、時空間歩行パラメータ、機能的移動性の向上の報告もあり
介入療法と標準(従来)療法を直接比較することは、研究対照の選択や報告された歩行結果に大きな違いがあり制限された.比較が可能だったのは歩行速度のみ

メタ分析の結果、機能的歩行訓練により歩行速度の向上に向けた有意な中等度効果が認められた

機能的課題の重要性
Aviram et alの研究では機能的歩行訓練よりも標準治療を支持した.対照群は筋力トレーニングである.この研究は参加者は多いがサンプルは無作為化されておらず、本研究の筋力トレーニングは機能的な目標に焦点を当てておし、スクワットや階段昇降など機能的運動が全体的なサーキットトレーニングに組み込まれていたため、標準治療とは少し異なっていた可能性あり.歩行制限を対象とした介入に機能的課題を含めることの重要性が強調された

Johnston et alの研究では機能的パフォーマンスを目標とした筋力トレーニング対照群(スクワットや階段昇降など)を報告したが、結果は機能的歩行訓練が有意に有利であった

両研究とも歩行速度の有意な増加が報告され、その効果はフォローアップに置いて機能的歩行訓練群、筋力トレーニング群で維持されていた.この結果は、介入後に歩行能力が向上したことで日常生活への参加が増加し、効果が定着した可能性がある
トレッドミルトレーニング(TT)とバーチャルリアリティ
歩行訓練のstepsの繰り返しと強度の増加に繋がることが示唆されている
歩行速度は正確にコントロール可能で、治療者は成果を最大化するために強度を徐々に高めることができる.TTは標準療法、筋力トレーニング、OGTと比較し歩行速度と持久力の改善効果が高い傾向あり

TT群とバーチャルリアリティを用いたTT群を比較した研究では、歩行速度と持久力に置いてバーチャルリアリティ群に有意に大きな効果が認められた.
GharibらがTTに歩行パフォーマンスのフィードバックを加えることで歩行速度の大きな改善効果が得られることを示したことからも支持できる.フィードバックを加えることで、運動学習が促進され、経験的な学習によって獲得した運動パターンを修正することができると推測している

CPのような神経障害のリハビリテーションでは、患者は感覚的なフィードバックシステムが障害されていることが多い
Hamedらはリズミカルな聴覚的ステップキューの形でフィードバックを行い、ステップパターンの改善を促す効果を検討した結果、標準的理学療法よりも強い効果を示した

バイオフィードバックやバーチャルリアリティの革新的な技術がもたらす付加価値は新たなトピックであり、特に小児のリハビリテーションに有益である
効果的なトレーニング期間は?
高強度かつ長時間のトレーニングが必要
現在のデータを統合すると、効果的な歩行訓練プログラムは20分間の機能的歩行訓練を2週間かけて10回ほど行うこと

自宅にトレッドミルがあると実現可能かもしれないがそれでも継続は難しい
バーチャルリアリティやフィードバックは患者を通常の治療環境から外へ連れ出し、魅力的で有益な動機付けでサポートする手段となり得る

発表された研究に共通する傾向は?
参加者の反応が様々であること
治療に反応する人としない人がいること

Johnstonらはこの点を強調、治療の高価が個人により異なり、臨床的に重要な大きな改善を示す人もいれば、臨床的に重大な大きな減少を示す人もいる
反応が異なる理由は文献では十分には明らかにされずさらなる研究が必要

今回のレビューの限界は、報告された研究に一貫した対照群がないこと、介入としての歩行訓練の実施が様々であること、歩行の結果指標の報告が一貫していないことである.その他、介入の種類と歩行のアウトカムへの影響を比較して、強い結論を出すことが困難


現時点では、最適なトレーニングの強度や提供方法はない.臨床家は専門家の臨床判断を適用し、患者の進捗状況を個別にモニタリングする必要がある


メモ

Five times sit to stand

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