ないない、そんなこと

リハビリの人って 根気いいな
訪問リハビリの理学療法士さんが
散歩に行ってくださいね と言われても 行かない夫に 少しでも外に出かけるように声をかけてくれる
「リハビリになるから、庭に出て野菜に水をやったり、収穫したりしたらどうですか」
なんて優しく優しく言ってくれる

キッチンで聞いているわたしは  (ないない そんなこと、ぜったいないから)と心の中で失笑してしまった
　
夫は元気な時も 庭には絶対出なかった
蚊に刺されるとか虫がいるとか
このジャングルみたいな庭、なんとかならないかなあって顔をいつもしていた

私は キッチンから庭のグリーンに癒されていたし 、夜中にホースを空に向けて 水やりするのも大好き

今は庭のあちこちにばらまいた種から ローゼルの実が山と取れる
そんな赤い実を眺めながら どれだけのジャムができるかな とニソニソ笑っている

「明日 は一緒にスーパーに行って散歩しよう」と約束したくせに、 当日になると 「今日は無理 」と 一言で断る
でも夫の嘘にはもう慣れたよ

唯一、 リハビリになるからと、ポストまで行って新聞を取ってくる ことも、猫なで声で 「取ってきてー」て頼んでくる
暑いし、蚊に刺されるのも嫌だと思ってるだけだとはわかっている

夫は、新聞を毎日楽しみにしているのに「新聞 取って来れなくなったら もう新聞なんか止めるからね」っと上から目線で言う私

ともだちが「その言い方はチクチクことばだね」というけど、優しいことばで動いてくれるなら今どこにもいけない、なんてことにはなってないよ

人を動かせようとすることは大変だよ
今だになんとかならないかなあという気持ちと、本人の意思に任せるという気持ちが、行ったり来たりしている