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ヘベレケ日記: 南極オンザロック

皆さまごきげん酔う。
今宵はどんな1杯をお楽しみでしょうか。

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ひょんないただきもの

先日、ちょっとしたスゴいものをいただきました。それは…

何かと申しますと…


南極の氷。です。
はるか南の果てからやってきた、貴重な貴重な氷でございます。

実は私は、スコッチ文化研究所(現ウイスキー文化研究所)在籍当時にも南極の氷にご縁があり、その時に南極の氷とはどのようなものかを体験しました。あれから8〜9年ほど経ったでしょうか。これまた新たなご縁で、何と個人的に南極の氷をいただいてしまいました。

キューブが20個ほど、、好きに使ってと言われると考え込んでしまいます。貴重な氷なのでどんな風に楽しもうか、色々と考えていて、ふと閃きました。

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南極のものは南極のものでもって

せっかくの南極の氷
そうだ、南極由来のウイスキーがあるではあ〜りませんか。

イオンさん直輸入で3,000円程度

その名は「シャクルトン」
南極探検家として名高いErnest Shackleton(アーネスト・シャクルトン)氏の名前を冠した1本です。

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15年前に舞い込んだ とあるニュース

2007年、ウイスキー界に1つの大きなニュースが舞い込みます。
ニュージーランドの探検隊によって南極の氷の下から「100年前のウイスキー」が発見された、というもの。それはマッキンレー社の「Rare Old Highland Malt Whsiky(レアオールドハイランドモルトウイスキー)」でした。これはブレンデッドモルトウイスキー、つまりグレーンウイスキーを使わずにモルトウイスキーだけを使ってブレンドされたウイスキーでした。

ボトルが入った木箱が発見された場所は「シャクルトン小屋」。
1908年、イギリスの探検家 アーネスト・シャクルトンは、南極へ入り1年以上現地で調査をしました。残念ながら南極点には到達できなかったわけですが、その時に彼らが滞在した場所として建てられたのが「シャクルトン小屋」です。ここに彼らが持ち込んで置いていったものが、100年経って掘り起こされ、ウイスキーがかなり良い状態で凍結されたまま発見されたというニュースだったわけです。

慎重に慎重に解凍され、コルクに針を刺して中身を取り出し、解析に回されます。

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“偉大なる鼻”による解析と再現

この時の解析と、味の再現を担ったのが、ウイスキー業界で「THE NOSE(鼻)」というニックネームで世界的に知られる超・大物、リチャード・パターソン氏。

発見されたボトルと向き合うパターソン氏。
(出典: ウイスキー文化研究所)

そもそも発見されたボトルがマッキンレー社のものだったので、その時点でマッキンレーのブランド権を所有していたホワイト&マッカイ社に輸送を委ねられることになりました。パターソン氏はそのホワイト&マッカイ社のマスターブレンダーであります。

ラベル下部、ゴールドの部分にパターソン氏のサインがあしらわれています

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そもそも南極のものはその外へ持ち出してはならないという決まりがあるものの、特例措置としてこのウイスキーが解析へ回されることが許可されました。この時の、南極→ニュージーランド→グラスゴーという輸送も非常に神経を使って運ばれたとのこと。発見されたオリジナルのウイスキーがブレンデッドモルトウイスキーでしたから、当然ながら再現されたこのシャクルトンも、ブレンデッドモルトウイスキーです。スコットランドのハイランド地方のモルトウイスキーのみをブレンドして作られています。

2013年に私がスコ文研に入って間もなくの頃だったような記憶がありますが、このアーネスト・シャクルトンの100年前のウイスキーについて精力的に特集していた元ボスを思い出します。パターソン氏が味の再現をしてレプリカボトルを作り、その後パッケージも新たにデザインされて一般販売されたわけですが、当時 土屋代表の傍にいた私は、この時のことをよく覚えています。

そうそう、これですこの時!懐かしい〜 ⬇️

当時のWhisky Worldの特集も良かったのですが、現在閲覧しやすいのは、土屋代表のコラムがまとまった『土屋守のウイスキー千夜一夜』。シャクルトンのウイスキーについて収録されているのは第4巻。さっそく引っ張り出してきて復習。

ちなみにこの全4回のコラムは、ウェブにも公開されています:
『南極で発見された100年前のウイスキー』 土屋守のウイスキー千夜一夜

(ちょっとサムネイルがわかりにくいですが笑)
これを読むと、いかに大きなプロジェクトとして実施されたかがわかります。とてもロマンのあるお話!

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さあ、南極×南極 のコラボは

ひょんなことからたくさんいただいてしまった、南極の氷。
そうだ、そうだよこのシャクルトンを、南極の氷でロックで飲む。なんて素敵なアイデア。この貴重な氷の使い道の正解は、これに違いない!

グラスはこれにしたぞ

南極の氷は純度が高く、高圧力でゆっくりと凍るため、何千年何万年も前の綺麗な空気を含んだ気泡がたくさん入っていて、溶け始めるとパチパチパチパチ…という不思議な音を発します。そしてなかなか溶けて無くなりません。

パチパチパチパチ鳴る音をご想像ください

一説には、この氷と普通の氷で飲み比べてみると、よりまろやかな味になるとか。確かに、シャクルトンウイスキーの甘味が引き立った気がしました!

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やはりガン見しちゃう、ボトルデザイン

イオンさんのブログでも非常に掘り下げた記事にされていて、チョコミントとの組み合わせを推奨されていますね!

このブログにも丁寧に書かれていますが、ボトルにはエンボスで以下のシャクルトンの言葉が書かれています:

I believe it is in our nature to explore, to reach out into the unknown.
(未知の世界に触れる探検は、我々の本能である)
- Ernest Shackleton

この言葉には少し続きがあるとされています:

The only true failure would be to not explore at all.
(唯一の失敗とは、探検しないことである)
- Ernest Shackleton
化粧箱の裏には、このボトルが開発された経緯の解説が。

ちなみに、このボトルの売上の一部はAntarctic Heritage Trust (NZ) に寄付され、シャクルトンの南極基地の継続的な管理や、シャクルトンが体現した探検の精神を保存・共有・奨励するために活用されます。

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シャクルトンが南極に向かう際に乗った船の1つが「エンデュランス号」と言いました。その船名はシャクルトン家のモットーに由来していて、それはボトルのラベルにもあしらわれています。

“忍耐をもって制服する”

ボトルの肩には、堂々と「SHACKLETON」のエンボスが。

そして底にも技が!
「発見した場合は、ロンドンのバーリントン・ストリートにお戻し下さい」…これはアレか、イギリス流のシャレ?(笑)

"If found return to Burlington St. London"

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南極にご興味ありましたら是非

今回は、幸運にもいただいた貴重な南極の氷で改めて楽しんだ、シャクルトンのウイスキーのお話でした。非常にリーズナブルな値段で販売されていますので、機会がありましたら是非お試しください!

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snoop-kのヘベレケ日記、今回はこの辺で。
また次のグラスでお会いしましょう。酔い1日を!


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