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「千住明の世界~コラボレーション・コンサート2021」に出演して② ~本番当日編~

「千住明の世界~コラボレーション・コンサート2021」に出演して①~練習編~の続きです。こちらを先にお読みください。

リハーサルの興奮冷めやらぬ状態で帰宅した夜が明け、コンサート本番当日。本当に泣いても笑ってもそのときはやってきます。

久しぶりのサントリーホールへ向かう道中、前日のリハーサルの録音を聴きながら、あの大きなホールで歌う自分の姿をイメージしていました。ドキドキワクワク……

サントリーホールの恐怖を克服!?

会場に到着すると、リハーサルがすぐに始まりました。実は、以前サントリーホールの大ホールで歌ったことがあるのですが、その時は「世界一美しい響きをめざして作られた」というその音響、ホールの大きさに臆してしまった部分があり、サントリーホールに対しての恐怖がまだ心のどこかにありました。今回はこの恐怖心を絶対に克服して、しっかりと2000人のお客様に音楽をお届けしよう! かたく心に誓いました。

バックステージに行くと、私の直前にリハーサルをされた千住真理子さんのヴァイオリンの音色がホールに響き渡っているのが聞こえました。ヴァイオリンという同じ楽器がたくさんいるオーケストラと一緒に演奏しているのに千住真理子さんの音はつややかに際立ち、まるで目に見えるような感覚すら覚えました。

リハーサルを終えられた千住真理子さんは、交代で入ってきた私にニコっと笑顔を見せてくださいました。なんて素敵な方なんだろう! こんな方たちと共演できるなんて最高!

と、舞い上がっている場合ではない、冷静に自分のリハーサルをせねば、と私のソロ曲「Trisha’s Lullaby」を歌い始めました。やっぱりすごい響きだな……。ただ今回は、先ほどまで聴いていた千住真理子さんの演奏のおかげか、ホールまでの道中に感じていた「楽しい、ワクワクする」という感覚がずっとあり、ホールにのまれることもなく、今夜の盛会が約束されているかのような気持ちを抱きながらリハーサルを終えました。

今回は舞台でご一緒した中山優馬さんとのデュエットや、杉山清貴さん紅ゆずるさんという豪華メンバーとの4重唱もあり、色んなジャンルの方とのアンサンブルを楽しむことができました。特に中山優馬さんとは今年の春に上演した『蜜蜂と遠雷~ひかりを聴け~』で共演して以来だったので、同じく舞台でご一緒したピアニストの川田健太郎さんと3人でちょっと同窓会気分も楽しみながら、安心して演奏にのぞむことができました。

いよいよ開演

休憩なし2時間強のコンサート「千住明の世界~コラボレーション・コンサート2021」がスタートしました。

前回の『練習編』にも書きましたが、私にとっての大きな山は初挑戦のソロ曲、アニメ『鋼の錬金術師』の挿入歌「Trisha’s Lullaby」でした。緊張はせず、とても冷静でした。第一声目で、リハーサルよりも響きが落ち着いたことを感じました。お客様が入るとホールの響きは大きく変化するのですが、この第一声目でより歌いやすさを感じたのです。「世界一の響きをめざして」というこのサントリーホール、今回は味方になってくれた! と思いました。恐怖心もありませんでした。ラテン語の歌詞の世界を、自分の声を通して届けました。

会場に来ていた妻から後で聞いたのですが、事前のトークなしで歌いはじめ、何が起こったか分からないお客様は、「Trisha’s Lullaby」が終わった後一斉にプログラムを開いて、確認してたよ、とのこと(笑)。ソプラニスタあるあるです。

私のソロが終わり、千住先生の紹介で中山優馬さん登場。舞台を思い出しながら「休息」のデュエットをしました。コンサートの前日まで大阪で別の舞台に出演されていた中山さん、歌への集中力も素晴らしく、そして忙しい中にあっても妥協することのないプロ意識には脱帽です。お互いに確認した大切なポイントで、声がピタッとハーモニーを作った時には、私は自然とニヤッとしてしまったかもしれません。

千住先生と共演者のパワーに導かれる

プログラム最後の曲は「ひかりを聴け」。全員揃って練習したのは数時間前に行った当日のリハーサルのみです。この曲を今までいろんな方たちと共演してきて、毎回感じるのは、多方面から集まった個性豊かなアーティストが、お互いを殺さず高め合っているなあ、ということです。ややともするとぶつかり合ってしまいそうなところですが、輝きを持ったまま融合するのです。

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私はどうしても、メインの方たちを邪魔してはいけない、と自分の音楽を小さくしていき自分の首を絞めていくことになりがちなのですが、「ひかりを聴け」を歌うたびに、解放され、「もっと個性を輝かせて」と言われている気がします。千住先生の音楽の力、そして共演者の個性のパワーにいつも教えられています。今回もそんなことを体感しながら、ホールいっぱいにそれぞれの個性が融合し飛び交うような感覚を味わうことができました。

舞台上には千住博さんの絵画をはじめ、さまざまな映像も繰り広げられていました。客席からは演奏だけでなく、視覚的にも楽しめたではないでしょうか。

こんな大舞台に一演者として参加できたことは、私の歌手人生に大切な1ページとして記録されると思います。千住先生、共演者の皆様、スタッフの皆様、そして当日お越しくださったお客様に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。また大舞台に立ちたい! これからも頑張ります。

※コンサート当日も感染予防を徹底し、写真を撮影するときのみマスクを外しております。

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