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「ファスト&スロー」を読む - ④プライミング効果と認知容易性

さあ、木曜日だ。

木曜日は心理学を取り上げていきたい。
このシリーズでは、ダニエル・カーネマンが書いた「ファスト&スロー」という本を取り上げて、ボクが読み進めながら受けたインスピレーションを書き連ねていこうと考えている。

ご興味おありの方は、ゆっくりお付き合いいただけると幸いだ。


システム1の機能とシステム2の機能

システム2の主な機能は、システム1が提案した考えや行動を監視し、制御することだ。そしてシステム1からの提案の一部は直接行動に移すことを許可し、その他の提案は却下したり修正したりする。

システム1は衝動的で直感的だ。
それに対し、システム2は論理的思考能力を備えていて注意深い。
そして、それは人によって(もしくはその人が置かれている状況によって)、システム1で突っ走る人と、システム2を使いたがる人に分かれるようだ。

連想メカニズム

ボクたちの頭の中では、常に、瞬時に、自動的に連想が起きている。
その連想は一貫性を保って、さらに別の連想へと関連付けられていく。それらの連想は言葉同志の関連付けによって連鎖していくが、それによって記憶が呼び覚まされ、その記憶は感情を掻き立てる。
そして、感情は緊張や回避行動、もしくは笑みや緊張の緩和といった身体的な反応を促す。そうすると、その身体的な反応の元となった感情はより一層強まり、その感情に即した考え(言葉)の連想がさらに広がっていく。

これらの一連(認知的・感情的・肉体的)の反応は、システム1の働きだ。それは自分で止めようとしても止めることができない。ひとつの観念が活性化されると、関連する他の多くの観念が活性化されていくが、そのほとんどは意識下で行われる。

プライミング効果と認知容易性

そこに「プライミング効果」と「認知容易性」が影響する。
プライミング効果(Priming effect)とは、経験したことや見たり聞いたりした情報が、認知や行動に影響を及ぼす効果のことを指し、「prime」という単語が「前に・準備する」という意味を持つことから、先に取り入れた情報(プライム記憶)が、その人の行動に潜在的な影響を与えることを指している。

ここでは、プライミング効果の生活や仕事への取り入れ方などは割愛するが、プライム(先行刺激)が存在する環境とは、シンプルに言ってその人が慣れ親しんだ環境だ。慣れ親しんだ環境下において、システム1は連想処理をスムーズに行う。そして認知が容易であるとき、人はそれを心地よい状態であると認識し、機嫌がよくなり笑みがこぼれたりする。

その影響は逆向きにも働くので、人が心地よい状態に置かれていて、機嫌のよいときに聞いた話、それをシステム1は「認知容易性の高い」情報だと誤認するようだ。もちろん、認知容易性が低い(認知に負荷を感じている)ときには、誰もが緊張し、慎重になり、疑い深くなっていている。

認知容易性が高ければいいわけでもない

認知容易性が高い状況だと多くの人がエラーを起こしやすくなる。それは、自分の置かれている状況が安全だ(リスクがない)と思いやすくなること、そして周囲の人の言うことや書かれている言葉などを信じやすくなるからだ。しかし直感力は高まるので想像力は豊かになる。

逆に、認知容易性が低い状況に置かれると、多くの人は慎重になりエラーを起こしづらくなる。しかし直感に頼らなくなるので、創造性を発揮できなくなってしまう。

つまり、創造性を発揮させたいときは、馴染みの場所、使い慣れたツール、聴きなれた音楽などを用意し、認知容易性の高い環境下で仕事をするべきで、若干のミスには寛容になるべきだ。逆にミスを起こさせないためには、不快に感じるようなプレッシャーが存在する環境下で、システム2に優位性を持たせて仕事をする方が良いということだろう。しかしシステム2は「遅い思考」なので、作業のスピードは確実に落ちるはずだ。

(続きはまた来週)


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