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競争戦略論[Ⅰ]を読む - ⑭中小企業の多角化戦略

さあ、水曜日だ。
毎週水曜日はマイケル・ポーター著「競争戦略論」をベースに、ボクの気づきや思考をアウトプットするシリーズを展開している。
先週は「独自戦略の確立と維持のための6つの原則」という記事を書いたが、今週は「中小企業の多角化戦略」について書いていこうと思う。


事業戦略と企業戦略

マイケル・ポーターは、コングロマリット企業の戦略について「事業戦略」と「企業戦略」の2種類の戦略レベルがあると説いている。

事業戦略とは、その企業が参入している様々な事業分野において、いかに優位性を維持していくかという点がテーマだが、企業戦略は、どのような事業分野に参入するか、そしてそれぞれの事業分野をどのようにコントロールしていくかの2点がテーマとなる。

ボクがこの記事の読者に想定しているのは中小企業の経営者だ。
なので、コングロマリットの戦略にはあまり興味がないのだが、中小企業の経営者にも一定数多角的(現在自社で行っている事業とは異なる業界への進出)な展開を考える方がいらっしゃる。よって、今日は「中小企業(株式非公開企業)の多角化経営」という目線で記事を書いていこうと思う。

企業戦略を成功させるための前提

まず、多角化の企業戦略を成功させるための2つの前提条件があることを理解しなければならない。

ひとつは、「競争優位性を維持しなければならないのは、企業全体ではなく事業単位である」ことだ。多くの経営者は、多角化をリスクヘッジと考える。それは間違いではないが、ある事業部門の赤字を別の部門の黒字で埋めているようでは多角化の意味はない。お互いに補完し合うことも重要だが、全事業部門の総和を以って、企業全体の価値を高めることの方が重要だ。そのためには、それぞれの事業部門ごとにROIを算出して、それを維持向上させるためのアクションが必要となる。

もうひとつは「多角化にコスト削減の効果はない」と言うことだ。多角化した各事業部門の業種業態が違えば違うほど、それぞれに合ったガイダンスやトレーニング、評価基準や意思決定のプロセスが増えていくことになる。そして、それは人件費(時間もコストと考えた上で)に跳ね返ることとなる。

新規参入の罠

どんな事業に新規参入するか決めることはなかなかに難しい。
なぜなら、魅力的に見える業界は、参入障壁が高いからこそ魅力的だからだ。かといって、参入障壁が低い業界は、すでに既存事業者で戦乱状態になっていて、顧客の交渉力が強い状態になっているはずだ。そこに手を突っ込むと火傷するのが目に見えている。なので、参入しようと考えている業界の動向や収益性をしっかりと分析し見極める必要があることを理解しなければならない。

また、リスク分散のために多角化を進めることも間違っている。
多角化にはコスト削減の効果はない。なので、収益性を上げることを目的として多角化を進めると間違いなく失敗する。また、リスク分散は多角化しなくとも他の方法で行うことができる。そもそも、収益率を上げて資産を大きくしていくことがリスクを小さくすることにつながるし、そのためには本業に絞り込んで(選択と集中)、他社との差別化を明確にすることの方が、リスクヘッジという意味において効果的であることが多い。

(続きはまた来週)


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