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「ファスト&スロー」を読む - ③最小努力の法則

さあ、木曜日だ。

木曜日は心理学を取り上げていきたい。
このシリーズでは、ダニエル・カーネマンが書いた「ファスト&スロー」という本を取り上げて、ボクが読み進めながら受けたインスピレーションを書き連ねていこうと考えている。

ご興味おありの方は、ゆっくりお付き合いいただけると幸いだ。


最小努力の法則

「最小努力の法則」という理論がある。

これは、1944年頃にジョージ・キングスレー・ジップという人が発表したことにちなんで「ジップの法則」とも呼ばれているものだ。それは「ある目標を達成するのに複数の方法が存在する場合、人間は最終的にもっとも少ない努力で済む方法を選ぶ」というものである。

つまり、人がなにかの努力をしようとするとき、その努力によって得られる効果(=利益)と、費やさなければならないエネルギー(=コスト)を天秤にかけ、最もコストパフォーマンスの良い方法を選ぼうとするのだ。それは肉体的に負荷をかける行動でも、脳に負荷をかける行動でも同様だ。そして、システム1をを稼働させる作業よりシステム2を稼働させる作業の方が、支払うコストが圧倒的に大きくなることがわかっている。

システム1とシステム2と筋肉の関係性

さらに、そのシステム2の作業に時間的な制約が加わると、脳への負荷はより大きくなる。また、筋肉に大きな負荷をかけるとシステム2の能力は低下してしまう。

人間のエネルギーには限りがある。そのエネルギーの元はブドウ糖だ。筋肉を動かすときも、脳を動かすときもブドウ糖を消費するが、脳や神経系を稼働させる方が多くブドウ糖を消費する。そして、ブドウ糖は体内で一定以上の量を摂取すると中性脂肪に変えられて脂肪として蓄積される。

つまり、ボクらが持っているブドウ糖の量は限られていて、その限られた予算の中で行動をやりくりしているということだ。

そのため、人は無理に何かを考えようとしたり、感情を抑えようとしたり、相反する一連の選択を行ったりするような「セルフコントロールを強いられる」ような環境下においては、(自我消耗によって不快になり)仕事や作業を投げ出してしまったり、誰かの言動に過剰に反応してしまったり、お粗末な意思決定をしてしまったりするということだ。

つまり、システム2に困難な要求を強いる活動は、セルフコントロールを必要とする。そしてセルフコントロールを発揮すれば、消耗し不快になる。認知的負荷とは異なり、自我消耗に陥ると、モチベーションがいくらかは低下する。あるタスクにセルフコントロールを大いに発揮すると、もうほかのことに努力したくないという気になるのである。どうしてもやらなければならないとなったら、何とか頑張れるとわかっていても、そういう気分になってしまう。

ダニエル・カーネマン著「ファスト&スロー」 第3章 - 怠け者のコントローラー - より

そこがわかっているなら、ボクらは自分の行動を変えることができるかもしれない…

(続きはまた来週)



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