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私がどうやって広東語通訳者になれたのかを紐解いてみる(41)『追捕/Man Hunt』- 白いハトと言えば -

「John Woo吳宇森」と言えば「白いハト 白鴿」

もう少し奈良を引っ張ってみよう。「John Woo吳宇森」と言えば「白いハト白鴿」だからね。とはいえ奈良のどこだったのか、私はいまだにわかっていない。土地勘無さすぎてわからないのよ、ごめんなさい。でも奈良だった。

白ハトは途中で急遽追加

実は監督、当初は本作では白いハトを飛ばすつもりをしていなかった。最初の決定稿にも白いハトは出て来なかったのよ、実は。

監督本人は、今回はハト無しでもいいんじゃね?ぐらいの気持ちだったようなのだが、あまりにいろいろな人から「今度も白いハト飛ばすんですよね?」「どんな風に飛ばすんですか?」と聞かれまくり、じわじわと「うーむ、やっぱ飛ばす?」となり、傍にいる私にまで「やっぱ飛ばす方がいいのかなぁ」とかボソッと言うので「飛ばしましょうよ!監督!やっぱ本物の吳宇森の白いハト見たい!」とプッシュもし、「皆がそんなに期待してるんだったら飛ばすかなぁ」と気持ちが移ろいでゆき、最終的にめでたく「白いハト調達してくれ」となった。この一言にクルー全員が「うぉっしゃああー!」と歓喜。やっぱ John Woo 作品に白いハト飛ばないと物足りないよね。

「鳩の里」ってなんやねん

そして監督は、ハトを飛ばす為に、矢村とドゥ・チウの乗った車が突然道を逸れて「鳩の里」に入ってハト小屋に突っ込む、というシーンを編み出した。工事用車両置き場のような、全く何もないちょっと開けた場所にハト小屋を建てた。Real Sound というエンタメサイトに見事に書いてくれているように「鳩の里」というギミックまで作った。天下の John Woo はちょくちょくお茶目なことをしてくれる。

無事に白いハト40羽を調達。40羽ものハトを誰が世話すんのー?と言う私に香港道具部のオヤジたちが「任せとけ。他の作品でもハトだろうが何だろうが動物は全部俺達が世話するから手慣れたもんさ。」と自信満々。どんなものでもそこらへんにある素材から秒速で創り出す香港の道具部には十分に驚かされて敬意を持っていたのだけれど、動物の世話までやっちゃうとは更に凄い。と思っていたら・・・。

ある日、オヤジ達が虫取り網やら棒やら持って走り回っている。何楽しそうに遊んでるんだオヤジ達、と思っていたら、ぶちまけてしまったハトを追いかけていたらしい。手慣れたもんさとか言ってたくせに笑かすわ。白いから樹の間に入っても見つけやすくて助かったよ。

いやはや、動物というのはやはりこちらの思うように動いてくれないもので、なかなかに扱い難かった。主演俳優がドサッと倒れる、そこにいたハトがサッと飛び立つ、という筋書きだったのに、実際にギリギリの所に倒れ込んでもビビりもせずにその場を動かない。手厚くお世話しすぎて人間に慣れ過ぎたのか。「おいー!ハトどけろー!」と言われた3rd ADが必死でどかそうとするもびくともしない、クルー皆で大爆笑、などという事もあった。

『少林門』での実体験が今蘇る

矢村があおむけに倒れ込む途中に白いハトが目の前を横切り、それを目で追ったおかげで顔の方向が変わり地面から突き出ていた石に頭を打たずに済んだ、という矢村の命を間一髪で白いハトが救うシーン。

「これ、実はな、成龍の『少林門』の撮影の時に本当にこういうことがあってな、このアイデアはいつか使おうとずっと温めてたんだよ。」と監督がニコニコしながら話してくれた。

『少林門』は1976年の作品。何十年温めて来たんやー!しかし、監督のインスピレーションはそういう所から来るのかー、そして何十年も温めて来て、ここぞ!という所で使えるというのはやはり凄い人だなーなんて感動してしまった。(続)

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