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私がどうやって広東語通訳者になれたのかを紐解いてみる(39)『追捕/Man Hunt』- 撮影現場は体力勝負 -

大阪城外のだんじり撮影と、上本町での撮影がエキストラが最大数の撮影だったと思う。

だんじり

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だんじり撮影には本物のだんじりを出して頂いて、本物の曳き手や屋根乗り(大工方)やお囃子の方々に来て頂いた。これは大阪FCのCちゃんの功績。ちょっとおっかない感じの男性が多かったけれど、炎天下の中の撮影にも協力してくださった。

当日の晴れっぷりは半端ない炎天下。すまんね、私、超晴れ女、いやそれどころかピーカン女なの。映画の監督やプロデューサーさんたち、映画製作には是非とも私をクルーに入れて、屋外での撮影には連れていってください。ピーカンにしてみせます。

そんな炎天下の撮影に参加してくださった通行人などのエキストラさん達には感謝しかない。待ち時間は長いし、最終的に自分が映るのかどうかも定かでない。それでも参加してくださる。更に、現場お手伝いのボランティアさん達も大変だったと思う。カットの声がかかる度にエキストラさん達、俳優達、クルー達にお水やポカリや塩飴を配ってくださったり、本当によく働いてくださった。

香港人は常温の水を好む

ここで文化の違いをボランティアさんに知ってもらえたことも結果として良かったと思う。日本人は炎天下の飲み物はついついキンキンに冷えた水やポカリを飲みがちだけれど、香港人はキンキンに冷えたものはそれほど飲まない。体を急に冷やすことを避け、多くの人が基本的に常温の水を好む。

ボランティアさんたちは水のボトルをすべてアイスボックスに入れて冷やしておいてくださるのだけれど、そこへ私が「香港人は実は常温の水を飲む人が多いので、キンキンに冷やしていない常温の水のパッケージも置いておいてください」とお願いした。ボランティアさん達は当初ビックリして半信半疑だったけれど、実際に香港人が水を取りに来て、キンキンに冷えた水には目もくれず自ら常温の水を取っていくのを目の当たりにして納得してくれたようだった。アイスクリームは普通に食べるくせに水は常温を飲む香港人。文化の違いって面白いよね。

上本町駅

そして上本町駅での夜中の撮影はあらゆる方面で本当に大変だった。エキストラの人数的にはだんじり撮影の時より多い。炎天下の撮影もキツイけれど、夜中の撮影もキツイよ。眠いもん。それでも皆さん凄く頑張ってくださって、これまた感謝。ホームを歩く人、乗客として電車に乗っている人、向こうのホームの見物人。私は導演と副導演にピッタリ引っ付いてあちこち走り回っていたので、エキストラさん達とお話することも出来なかったけれど、撮影に参加してくれた友人が何人もいて、現場で声掛けられて驚いた。

因みに、主人公ドゥ・チウ役のチャン・ハンユー張涵予はこの駅での逃走で必死の形相だけれど、実はこの時腰を痛めていて、走ると凄く痛かったそうで、演技での必死な表情だけではなく「痛ぇー!腰が、腰が痛ぇー!」という本気顔なのでよろしく。

駅構内での撮影は物理的に困難がいっぱい

この上本町駅構内の使用を、当初我々は連続3日間で撮影したいというお願いを出した。様々な難しい要求をあれもこれも何とか叶えてくださっていた近鉄ロケーションのボスも、申し訳ないけれどこれだけはどうしても無理だと。

毎日夜中にこちら側とあちら側の線路のメンテナンスを方面ごとに一日ずつ交代でやるので、連続での使用はどうしても無理だと。これは仕方ない。何よりも線路やその他設備のメインテナンスが優先される。お客様の安全にかかわることだから。とはいえ、スケジュールを組むのがなかなか大変で、第二副導演はかなり頭を悩ませた模様。

基本的に、一日の撮影終わりから次の撮影始まりまでは最低8時間空ける、というベーシック・ルールがあるそうだ。クルーの身の安全や健康を守り、撮影のクオリティを守る為。

終電が終わった途端に現場を準備し始め、夜中の撮影をして、始発が出る直前に撮影を終える。そこから8時間空けると昼になってしまう。昼から夜にかけての丁度良い撮影があるかといえば、そうとは限らない。次の夜中の撮影の日には夕方から集合して、機材など組み立てられるものは外で組み立てたりして駅構内に入れる時間になったら、それっ!とばかりに最短の時間で現場を作れる準備をしておく。昼の撮影をやったと思ったら次の日は夜中、そしてまた昼、そして夜中・・・体内時計崩れまくりになる。あまりに変則的なスケジュールで全員体力的にしんどかったと思う。

生駒の鉱山トンネル

この上本町駅構内でのシーンに繋がるシーンとして生駒の鉱山トンネルのような場所でも撮影した。結局本編には使われていなかったと思うけれど、ここは本当に大変だった。

地下へずんずん下っていき、とても深い場所にある広場のように開けた所を使わせてもらったのだけれど、撮影用スタジオでもなんでもないので、もう大変。真っ暗な中、撮影用のライトを点ける。暑い。発電機で電気を送るので、暑い、うるさい、臭い。何人か倒れたほどの極悪環境。恐ろしい場所すぎて私の記憶からはほとんど吹っ飛んでしまっている。

映画の現場通訳を目指す方へ

映画の現場通訳というとなんだか華々しい職業に思える方も多いかもしれないが、通訳能力が必要なのはデフォルトとして、何よりも体力、健康な体、自分の体調を条項な状態にキープできるスキルが断然必要。現場通訳に憧れる方はまずは屈強な肉体を作ることから始めて頂きたい。(続)

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