見出し画像

【整存、再現與詮䆁:保育演藝與電影文化背後的故事】セミナー@香港中央圖書館

香港中央圖書館で開催された【整存,再現與詮䆁:保育演藝與電影文化背後的故事】というセミナーを聴講してきた。詳しい内容も見ずに、とにかく「電影文化」「背後的故事」の文字に惹かれて申し込んでしまった。

香港中央圖書館にはよく行っていたものの演講廳がどこにあるかわからず、とりあえず地上の横っちょの展示館入り口から入って尋ねてみた。

するとセキュリティ・スタッフが展示会場内を突っ切って演講廳に連れて行ってくれた。えええ?無料の展示会とはいえ突っ切っていいの?

かなり大きな場所に何人ものアーティストの作品が展示されている。セミナーの時間が迫っていたのでじっくりは見られなかったけれど、香港中央圖書館ってこういう魅力的な無料展示会をしょっちゅうやっているものなのかしら。フラッと寄ってみて気に入った作品やアーティストとの思わぬ良き出会いがあるかもしれないね。

やはりついつい香港の街を題材にしたものに惹かれる。

演講廳近くの休憩所に可愛い看板。やはりまん丸は正義。

いよいよ【整存、再現與詮䆁:保育演藝與電影文化背後的故事】セミナー。まずは、セミナーの中でとても印象に残った一言を。「有保育才有教育=保存あっての教育」。つまり有形無形の資料や事実を保存していってこそ人の教育や人材の育成に繋がると。なので「保育」の問題は本当に「肉緊」の問題なのです、とのことだけれど、次の世代へ引き継いで教育していこうという長輩がまだまだいるのが香港の希望。

司会は蘇玉華。どちらかというと昔のTVBの連続ドラマでよく見ていた人。

今回は Tina Liu 劉天蘭の話が聴きたくて報名したのだけれど、映画業界の話だけあって、知ってる人の名前はわんさか出てくるし、去年の「無中生有」の準備がどれほど大変だったかというトピックも、撮影現場や服裝部・道具部の仕事や実際の状況を知っているから、全て手に取るようにわかって面白かった。

昨年文化博物館で開催した「無中生有」の展示にプラスして香港映画の美術や衣装に関する膨大な資料を載せた本を出すそう。400ページ超えだそうなので本そのものも価格も重くなりそうね。

このビジュアルは本日この場で初めて公に公開したものだそうで、表紙が右側の「無」、裏表紙が左側の「有」だそう。両方の字が多くの線を重ねた独特のデザインだけれど、これはなんと、「無中生有」に関わった全ての人に「無」と「有」の字を書いてもらって、それを全部重ね合わせたものなんだって。電影にしろ、展示にしろ、関わった全ての人が一緒に作り上げたものだから、というコンセプトだそう。感動して涙出そうになった。

そうなのよ。それぞれの映画作品やイベント・プロジェクトは全員の血と汗と涙が積み上がってできたものなのよ。映画制作の初仕事となった『追捕』の制作現場にプリプロからポスプロまで全部参加してそれを経験した私は、このコンセプトに業界人としての物凄いリスペクトを感じて泣きそうになった。

それにしても Tina姐の喋りは本当に面白かった。「香港電影美術學會副會長なので「無中生有」プロジェクトで邵氏廠に行ったら、何十年分もの物凄い数の衣装が保管されていたんだけど、どれぐらいあったと思う?なんと4万着よ!4万着!」とか内容も喋り方も面白くて会場何度も爆笑。私もこういうふうに喋れるように今からでも練習してみようと思う。

次は主に音楽系の保存・保育を担当している Dr. 鄭學仁。

そして Dr. 鄭のキー・ワードは「等風來=機を待つ」。会場から「風が吹き始めていると感じる」との意見があり、「確かに風が吹き始めてはいるけれど、いつどう動くのが良いかは機を見る必要がある」とのことだった。

歐洲はもともと歴史を非常にリスペクトする文化なので、有形無形の文化を保育していくのが上手い、さて香港は、という話題での Tina姐の発言。「嗰啲人有 taste 啲呀, excuse me」で会場大爆笑。更に続けて「我哋香港都有有taste 啲人㗎,不過唔係嗰個位之嘛」で追い打ち爆笑。

聴講者からの質問でやはり龍哥の名前が出た。大雑把に略すと「70年代に李小龍が香港映画を世界に広めた。大陸の言い方が香港に浸透してしまったのかもしれないが最近は皆が感到驕傲という言い方をする・・・」という意見に Tina姐は「引以為傲と言うのがいいよね」と。そっか、「引以為傲」と言えばいいのか。また一つ良き単語を学んだ。Tina姐は「李小龍は香港文化の指標だ」と言ってくれたのも嬉しかった。やはり龍哥は香港人の心の中で特定の位置を占めているんだね。

また別の聴講者が一旦終了したのにどうしても自分の意見を言いたかったのか、あれこれ話し出したのだけれど、まるっと纏めると「香港には映画の衣装や道具なり、脚本なり、音楽のスコアなりを纏めて保存しておく場所(施設、政府による支援やコントロール)が無いということだけれど、大灣區にならいくらでも場所があるじゃない」ということを言い出した。壇上の4人とも誰も「そうですね」と言わなかった。この人は英語環境で育ったのかして「you know」多発だったのだけれど、「無中生有」の日本語版を出さないのかとか「我哋啲和服」とか言い出してちょっと不思議な人だった。普通に広東語で話していたのだけれどなぜか脳内は日本人なのだろうか。不思議。

セミナーの内容も面白かったけれど、女性スピーカーのスピーチ力の凄さに圧倒された。私もこれぐらい日本語と広東語でプレゼンできるようになりたい。いや、できるようになってやる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?