4月3日(日)東京都1部リーグ第1節 vs東京農業大学 マッチレポート #21
暖かくなったり、寒くなったり、まさしく三寒四温という言葉がぴったりである4月の一週目。舞台は整った。約半年間、22試合の長く険しく厳しい東京都大学サッカーリーグ1部という舞台での戦いのゴングが鳴る。
あと一歩で昇格を逃し、2部での戦いを余儀なくされた昨季。その悔しさからロケットスタートを決め、序盤から勝ち点を積み上げ続けた。苦戦するゲームもあったものの、終盤にかけて勝負強さを増していき、終わってみれば3ゲーム残して2年ぶりの昇格、2ゲーム残しての優勝を決めた。15勝3分。41得点8失点。勝ち点48。2位に勝ち点9差をつけるなど、圧倒的な強さを見せつけ記録的な無敗優勝を達成。まさしく”The Invincibles”と呼ぶのにふさわしかった。
0勝5分13敗。得失点差-28。18試合で41失点。これが3年前、今の4年生が1年生の時に、上智が最後に1部で戦った時の成績だ。完膚なきまで叩きのめされた、という表現がぴったりの成績。どれだけ芝のグラウンドも持たず、スポーツ推薦もない我々が1部という舞台に殴り込みをかけるという挑戦が困難で厳しいものなのかを教えてくれている。持っている羅針盤は”史上最高の上智”というスローガンと4年生たちが1年生の時に味わった屈辱と悔しさ、そしてこの5か月間積み上げてきたものに対する自信だけ。6か月、22試合という長いようで短い航海が果たしてどこに行きつくのかはまさしく神のみぞ知るものであり、皆目見当もつかない。ついに錨を上げ、1部リーグという大海原に繰り出す我々がたどり着く先は、”関東”という冠のつく舞台なのか、はたまた来季も”東京”と冠された舞台での戦いを余儀なくされるのか。
前回のゲームはアミノバイタルカップ3回戦、学習院とのマッチアップ。今季初めて1部のチームと公式戦という場でかち合える貴重な1戦となった。ゲームは前半こそ0-0で折り返すものの、後半9分、11分と連続失点で0-2に。20分に野田のPKで一矢報いるもの、16分後にはとどめを刺され、1-3と敗戦。課題の残るゲームとなった。
対する東京農業大学は、先週アミノバイタルカップ代表決定戦で同じ1部の成蹊大学と対戦。一進一退の攻防が続いたものの、終了間際のゴールで勝ち越し。昨季ぎりぎりで関東昇格を逃した悔しさを胸に初戦に挑む。
開幕戦。序盤の命運を握るゲーム。そういう意味で言えば、勝ち点3以上の価値があると言っても言い過ぎではないはずだ。ロケットスタートを切れるのはどちらのチームか。
そんな重要な一戦でピッチに送り出された11人は以下の通り。
大山 朝生(4年/#1/GK/専大松戸高校)
中尾 竜吾 (3年/#72/DF/國學院高校)
三井 慎司(4年/#82/DF/藤枝東高校)
関 大陽 (4年/#6/DF/湘南ベルマーレU-18)
土井 源也 (3年/#19/DF/國學院久我山高校)
大山 諒(4年/#10/MF/武南高校)
坂田 涼(4年/#3/DF/駿台学園高校)
菅 雄太郎(3年/#18/MF/八千代高校)
野田 祐成 (3年/#48/DF,MF/國學院久我山高校)
伊藤 大心(C) (4年/#4/MF,DF/國學院久我山高校)
古山 悠人(3年/#80/DF/新潟高校)
サブは以下の通り
小堀 耕太郎(4年/#8/MF/桐蔭学園高校)
鈴木 陽太(3年/#37/MF/市立橘高校)
星野 航太 (4年/#25/MF/小田原高校)
新田 聖人 (3年/#28/GK/市立金沢高校)
大池 哲太(2年/#34/DF/小松川高校)
金本 滉平(4年/#11/MF/専大松戸高校)
堀口 大翔 (3年/#52/FW/専大松戸高校)
雨が降りしきる中キックオフ。
序盤はお互い自陣でのプレーを嫌がり、ボールが空中を舞う時間が多くなる。
4分、セカンドボールを拾った相手が右サイド裏に展開、開始早々抜け出され、ピンチになると思いきやここは中尾が体を張ったスライディングタックルで間一髪難を逃れる。
ファーストシュートは東農。8分、クロスのこぼれ球に反応し、ヘディングでゴールを狙うもこれは枠の外。
そこからはボールを保持したがる上智と前線から圧力をかけ、手数をかけずにサイドを起点としたショートカウンターを狙う東農という試合展開。
前半の半ばあたりは中盤での激しいせめぎ合いが続く。
給水タイムも終わり、前半も終盤に差し掛かるとお互いチャンスが訪れる。
35分、上智。左サイドで細かくパスを回すと、ボールは大山へ。大山は前を向き、左足を振りぬく。これは惜しくもゴール左。
40分には東農。後ろから細かく繋ぎ、左サイドを攻略しアーリークロス。これをFWが上智CBの間で合わせるもGK正面。ヒヤッとするシーンであったがここは事なきを得る。
45分、右CKを獲得。土井の入れたボールはGKを超えて走りこんでいた野田の頭へ。しかしこれは後頭部を掠めるだけでヒットせず。前半最大のチャンスもモノにできない。
15分のHTを挟んで、なおも雨が降りしきる中キックオフ。
最初のチャンスは上智。4分、自陣深くのFKを相手DFラインに放り込むと、セカンドを大山が回収。大山から野田へと繋ぎ、野田からバイタルエリアに位置していた菅へ。菅がうまくターンして仕掛けると相手はたまらずファウル。ペナルティアーク内やや左の絶好の位置でFKを獲得する。キッカーは野田。ゴールを狙ったキックは惜しくも壁に阻まれる。
しかしそこからは徐々に東農ペースに。
16分には右サイドからグラウンダーのクロスを入れられ、あわや失点というところで坂田がクリア。
サイドを制圧され、クロスを入れられる回数が増えるもなんとか中を固め耐え忍ぶ上智。
25分、ここまで相手の攻撃を跳ね返し続けた坂田が無念の負傷退場。小堀を投入し、そして前半からフルスロットルで飛ばし続けた土井に代わって鈴木を投入。流れを変えにかかる。
32分、上智に最大のビッグチャンスが訪れる。左サイドで大山がタメを作るとサポートに入った菅へとボールを渡す。菅が左サイド深くまでえぐり、2枚のDFに寄せられるもその間を強引に突破しエリア内に侵入。そしてがら空きになっていたファーサイドへ右足アウトでクロスを送る。このスペースに走りこんでいたのは伊藤。あとは枠に蹴りこむだけというシーンであったがこれは東農DFが間一髪クリア。このチャンスをモノにできない。
すると2分後、カウンターから自陣右サイドを割られると相手のグラウンダーのクロスがファーでフリーになっていた選手へと渡る。これをワントラップから豪快にゴールへと蹴りこまれ、34分、ついに先制点を奪われてしまう。
そしてそのわずか2分後、今度は自陣左サイドを割られると滞空時間の長いクロスボールをゴール前に放り込まれると、打点の高いヘッドで合わせられ、ボールはゴールへ。弧を描いてネットに吸い込まれ0-2。わずか2分間で2点差に突き放されてしまう。
リスク上等で攻めるしかない上智を鋭いカウンターで東農が追加点を狙う。
39分にもGKと1vs1のピンチを迎えるも、これは大山が意地のセーブ。
45分が回り、追加タイムは4分。諦めない上智。47分、右CKを獲得。菅が入れたボールはファーサイドで競り合いになり、ボールはゴール前へ。これを三井がGKの前で触り。ゴールイン。残り2分、土壇場で1点差詰め寄る。
しかし反撃も及ばずタイムアップ。3年ぶりの1部でのゲームは1-2で敗戦という結果に。
フットボールの神様の気まぐれさと、1部の厳しさを教えてもらったようなゲームであった。32分のビッグチャンス。あと1秒、あと1歩早かったら先制のゴールを叩き込んでいたのは臙脂色のチームであった。しかし現実は36分時点で0-2。たらればではあるが、もしあのチャンスを沈めていればおそらく試合展開的にも36分は1点リードで迎えられたのではないか。まさしく紙一重。そこにフットボールの奥深さと面白さがあり、少しでも箍が緩んだところを見落とさずきちんと仕留めきる、東農、ひいては1部の上位争いを毎年繰り広げるチームの狡猾さと厳しさがあった。その二つをまざまざと見せつけられた4分間であった。このようなひりつくゲームをあと21試合できることに対するワクワクを胸に膨らませるとともに、勝ち点を拾うためにはどうすればいいのか。もう一段階、進化する必要性を感じさせるような、そんなオープニングゲームであった。
このゲームで存在感を示したのは中尾。左のフルバックとして先発出場すると、守っては1vs1の強さとカバーリング技術で、対面の相手をほぼほぼ封殺。攻めては絶妙なポジショニングとドリブルで相手のファーストラインを突破するシーンも見られ、その姿はマンチェスターシティに所属するジョアン・カンセロを彷彿とさせた。フロンターレを愛する男は、彼らに負けない、不屈のフロンティアスピリットでプレーの幅を広げ続け、だれからも信頼を置かれる、なにをやらせても堅実に、確実に合格点を超えてくる寡黙な万能型SBへと成長した。1部の舞台でどのような成長曲線を描いてくれるのか、非常に楽しみである。
もう一人は伊藤。このゲームで左腕に腕章をまいた男は、歴史ある上智の主将の姿に恥じないプレーを披露。すべてのルーズボールにアタックしに行き、五分五分のボールもひるむことなく全力で体を投げ出し奪いにいく姿は、アッズーリとロッソ・ネロで活躍した、往年の名インコントリスタ、”狂犬”ジェンナーロ・ガットゥーゾと重なり、ピッチ内で誰よりも”闘って”いた。次節、悪い流れを持ち込ませず、勝ち点を得るにはこのダイナモの奔走が不可欠である。
以下出場選手のインタビューです。
中尾 竜吾 (3年/#72/DF/國學院高校)
・今日の試合を振り返って
勝ち点3を求めにいってゲーム内容としても互角に近い戦いができていただけに、悔しい敗戦になってしまいました。アミノバイタルカップで課題になったボールに寄せ切るところ、最後のシュートを打たせないことはこの2週間拘ってやってきて、前半からできていたと思います。ただアミノの学習院戦と同じように苦しい時間帯でそれができずに連続失点してしまったことは反省しなければいけません。ただ2点差になって残り時間が少ないなかでも意思統一して闘えたこと、1点返せたことはポジティブに捉えて良いと思います。
・今後に向けて
今シーズンはきっと今節のようなゲームが続くと思います。惜しかったで終わらせていては意味がありません。今節を意味のあるものにするためにも次節の成蹊大学戦で必ず勝ち点3を掴みたいです。
伊藤 大心(C) (4年/#4/MF,DF/國學院久我山高校)
・今日の試合を振り返って
まず、前半を無失点で終えることができたのはよかった。ただ、後半の連続失点は本当にもったいなかった。連続失点はアミノでも経験していただけに、チームとして改善する必要がある。ありすぎる。
今日分かったこととしては、1部はやっぱりレベルが高い、でも十分やり合える。ってこと。
・今後に向けて
敗戦スタートになり悔しさは隠せないが、そこまで悲観的になる必要はないと思う。というかそんな暇はない。
次節の成蹊大戦は、今シーズンの行く先を決める大事な試合になる気がする。このままズルズル負け続けるのか、それとも上位に食い込めるのか。また1週間良い準備をして次節を迎えたい。
次節は4月10日(日)に成蹊大学にて、成蹊大学とのマッチアップ。悪い流れを引きずらないためにも序盤戦を占う大事な一戦。今季初の有観客での開催、感染対策をしっかりしたうえでのご来場をお待ちしているとともに、Twitter, Player!での熱い応援よろしくお願いします!
文責 3年 小熊 崚介
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