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【感想】黄昏の王国 感想、あるいはラブレターの下書き

(Fate/Grand Orderゲーム内キャラクター「オベロン」のネタバレを含みます)

 FGO2部7章後編および奏章プロローグが配信されましたね。物語の核心に迫る謎が明確に示され、なかなか次の展開が楽しみな終わり方だなと感じました。
 それはさておき。この記事は、FGO2部6章の登場キャラクターとして実装された「オベロン」のデザインを担当された羽海野チカ先生が、コミックマーケット100で頒布されたイラスト集『黄昏の王国』、通称オベロン本の感想をまとめたものです。オベロンに関するネタバレは普通に飛び出しますのでご注意ください。
 また、本記事の内容は、チカ先生へお送りした感想文の下書きに加筆修正を加えたものです。人様にお送りするメール文面だと思いかなり自重して実際の感想文はお送りしましたが、本記事は更に抑えきれない心のパッションが加わって取り返しのつかない感じになっています。イラスト集の頁数を元にひたすら感想を書き綴っていますので、実際のイラスト集をお持ちの方以外は多分読んでも意味がほぼ分からない内容になっていますけれども、それでも良ければどうぞ。


オベロン本入手までの思い出

 これに関しては、通販開始後のとらのあな鯖落ちが最も印象深い記憶として頭を過ります。妖精國のみならず、とらのあなサーバーを奈落に落とすオベロン・ヴォーティガーンやばい。現実世界に侵食するんじゃない。かく言う自分もかなり粘りましたが、重すぎて繋がらずエラーで弾かれ、見事に惨敗した側でした。だからこそ、すぐに受注生産への切り替えを決断して対応してくださったことは、本当にありがたかったです。商業ベースでご活躍されている方であるという前提はありますが、やはり個人で頒布する同人誌を受注生産にするという決断は、なかなか大変なものであっただろうと思うので。本当に本当に感謝しているし、感謝の気持ちを財布に込めて、保存用と観賞用で二冊買っちゃったわけです。全然後悔してない。

装丁について

 無事にオベロン本が届いて開封した際、装丁が本当に素敵だなと感じました。とらのあなの画像サンプルとか、お写真とかで表紙は既に拝見していたわけですけれども、実物はもっと素敵だった……。こう、ちょっとイイ感じの画集というか、外国の絵本みたいな感じというか、紙質といい箔の押し方といい、どことなく異国情緒漂うような質感ですごい良かったです。
 個人的に、何度も読み返したくなる創作物って、デパ地下に売っている高級菓子のように感じる時があるんですよね。大切に味わいたくなるというか、心に対する贅沢なご褒美というか。このオベロン本って本当にまさにそれで、今の時期によく売っているお洒落な箱に入った高級チョコレートのような佇まいで、特別な時にコーヒーや紅茶と共にこっそり味わいたくなるような、そんな装丁と内容だったなって感じました。

内容について

 設定のみが提示された一つのキャラクターが実体を持つまでの、その制作過程における膨大なラフスケッチを垣間見る機会って、まあほとんどないと思うわけですよ。設定資料集~みたいなやつが作品によっては刊行されることもありますけれども、ここまでラフだの衣装だのの試行錯誤の全ては出てこないですし。いや靴のデザインだけで何足描いたんですかってレベルで、本当に見応えありまくりでした。こんなに見せていただいて本当にいいのかな、という葛藤もありつつ、以下はすごく好きだったりぐっときた部分の列挙です。語彙力がないのでね、好きぐらいしか言ってないワンパターンな感想で申し訳ないんですけどね。以降は頁番号と該当箇所の感想です、実際のイラスト集をお持ちの方以外は多分全然意味が分からないと思います、ご了承ください。

・6頁:顎に手をやっている伏し目がちな表情がアンニュイで好きだなあ。
・9頁:黒フードもまた違った魅力があっていいですね、ザ・魔法使いみたいな感がある。
・13頁:お洋服かわいい、霊衣とかでほしーい! 概念礼装とかでもいい(強欲)。
・14~15頁:あまりにも好きすぎる、特に14頁の立ち絵が素敵! 第一再臨のイラストこっちでも良かったなあ。
・18頁:右側黒髪のラフカットが素晴らしい、ヴォーティガーンとしての本質がすごくよく見える。
・21頁:わわーっっ←かわいい! チカ先生の描くこの種の表情がチカ先生らしくて本当に好き。
・26頁:沢山の靴! いや本当に沢山の靴ラフすげーーー。もはやプロとしての執念を感じるレベル。上段左から三番目の蝶っぽいモチーフのやつが、やっぱり可愛いなって思いました!
・依頼がなかったのにミニオベロン描いてくださってありがとうございます本当にありがとうございます。ゲーム内でも本当に可愛くポップで癒されました。
・33頁:下段のふわっとマント羽織る感、すごく好き。そもそもオベロンの第二再臨のお洋服自体が本当にかーなり好きなので、沢山見られて心が潤うのだ……。まっしろふわふわは正義なんだよ!
・36頁:上段のオベロンの伏し目、何とも言えないうっすらとしたもの悲しさを感じて大好きです……。
・40頁:ネコチャン! ネコチャン……!? 右下のネコチャンの哀愁漂うぐんなり感、はちゃめちゃに好き。イラスト集の所々に動物のかわいいイラストがちょこちょこ挟み込まれてて、ほっこりしました。
・42頁:下段中央の胸元に手を入れてるオベロンさんかわいい!
・43頁:「これが……メロン……」表情込みであまりにも面白すぎるんだわ。
・47頁:全身黒も素敵だなって。実際の第三再臨ってちょっとドレッシーな感じするから、こういう黒くてイカつい感じももっと見たいなあ。霊衣とか、概念礼装とか(強欲)!
・55頁:ブランカちゃんとのカット、すごく好き……イラストカードも素敵でした……。ブランカちゃんが意外と大きくてもふもふなのが良いよね。
・59頁:下段右の後姿。確かに戦闘時の立ち絵って横向きだし、大体正面からのカットしか基本はないから、後姿がちょっと新鮮に感じる。
・63頁:下段右、これぐらいラフな装いのオベロンも良いなって思いました。多分マント脱いだらこんな感じだろうけど、立ち絵ではマント脱がないからね、差分が欲しい。
・69頁:上段、これゲーム内で戦闘に負けて落ちていく場面のラフだよね? これだけで本当に泣けてくるくらいグッときた……。
・76頁:険しい顔、格好よくて良い。
・78~79頁辺り:前頁までのしんみりとした心持を力技で全て吹き飛ばされた気がします。秋の森の妖精達とのあったかもしれない交流がかわいーんだよね。
・84頁:上段、ピエタの別パターン案だと思うのですが、こっちパターンのピエタも完成版見てみたいくらい素敵だった。
・85頁:ぐだ子かっこいい!!!
・86~87頁:まるで本当に絵本の一頁のようで素晴らしかった。上からキャストリア見てるオベロンが好き。チカ先生妖精國の絵本描いてくれないかな。駄目?

 うーん、後半に行くにつれ欲望の詰め合わせセットみたいな感想になってしまった。こんな沢山のラフで衣装とか別パターン案とかの可能性を見させられたらそうもなる。これだけのラフスケッチを経て今のオベロンが創られたというのは、沢山の発想の中からエッセンスを抽出していったともある意味言えるんでしょうけれども、「こういう可能性もありましたよ」という単なる没案にしてしまうには余りにもクオリティが高くて勿体なさすぎる。
 それこそ霊衣とか概念礼装とか別バージョン実装とか、マルチメディア展開で本当に絵本とか、きちんとした形で世に出てほしいなあと感じるのでした。強欲? 知ってるよ、願うだけタダでしょ! 人はそれを開き直りという。

おわりに

 FGOのオベロンは自らの言動の結果が捻じ曲がってしまう“大嘘つき”という厄介な性質を抱えていて、だからこそ本当に大切なことやものは絶対に表には出さずに守り通すという人の心の柔らかい部分を的確に抉ってくるとんでもないキャラクターな訳ですけれども、オベロン本でチカ先生の描かれていた伏し目がちなオベロンには、この辺りの言葉には表出されない寂寥感みたいなものがずっとうっすらと漂っていて、すごくさみしいけれどとても素敵だなって最初から最後まで読んでいてずっと感じていました。沢山のスケッチを積み重ねながら、オベロンというキャラクターを理解しようと情を寄せて近付いていく過程に触れられたような気がしました。
 あと、最後に書いていらしたスケッチブックにティターニアを残してきた理由を読んで、泣いてしまった……。ティターニアという物語の中にしか存在し得ない輝ける星を、会えないけど探し続けているキャラクターなのでね、これがティターニアですって明確にしないのは商業展開としても正しい判断なわけですけれども、そこをきちんと情をもって真摯に説明するその姿勢があまりにも優しくて泣けたんだわ。単なるゲーム上の一体のキャラクターとしてだけでなく、たった一人の大切な存在としてオベロンと向き合い、創り上げて下さったんだなというのが感じられてとても良かったです。
 ご自身の漫画の連載とかも抱えていらっしゃるし、くれぐれもご無理だけはしないでほしいなと思いつつ。それでも、オベロンを推す一ファンとしては、今後もオベロン周辺のあれやこれやで新規カットやらなんやらに携わり続けて欲しいなあとか欲深く期待してしまうのでした。
 以上です。

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