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【感想】水星の魔女 Season2の感想

(機動戦士ガンダム水星の魔女 Season1およびSeason2のネタバレを含みます)

 本記事は、2023年7月2日に最終回を迎えた『機動戦士ガンダム 水星の魔女』Season2およびシリーズ全体の感想を語るものです。リアタイ視聴していた筈なのに最終回からだいぶ経った今頃になって感想文を書いているわけですが、夏休みの宿題を秋冬になってもまだやってるだけだと思ってお納めください。時が経つのが早すぎんのよ。上述の通り、Season1およびSeason2のネタバレ前提で感想を書いていますのでご注意ください。

 水星の魔女、本当に終わっちゃったんだな……と今更ながら実感しつつこれを書いています。ある程度まとめて見たい&気になり過ぎて続きを待てないという理由から最近は話が完結してからコンテンツに触れるというのが多かったので、ほぼ序盤から最終回までをリアタイ視聴で駆け抜けたのはすごく久し振りでした。
 次回がどんな展開になるかいつもドキドキして、自分であれこれ予想したり他の人達の考察を読み漁ったり、放映期間中はいつもずっと楽しかったな。日曜の17時なんて大体週明けのことを考えてブルーな気持ちになる事の方が多いので、来週も楽しみって気持ちで次の一週間を乗り切れた辺り、正直ほぼ生きる糧と化してましたね。週末に目標や楽しみがあるってQOL的にとても偉大である。
 放送後は毎度何かしらトレンド入りしていたり、最終回後も暫く25話やら26話やらの集団幻覚が大量発生したり。多くの人がコンテンツに触れている、話題性の高さもすごく実感し続けた作品でした。かく言う私もガンダム初心者にも関わらず最終回まで前のめりで視聴し続けられたので、かなり門戸が広かったというかターゲット層を広く設定していたというか、ガンダムというコンテンツへ新規客を取り込むという効果は一定程度あったのだと思います。モビルスーツのことは全然わからなくて、むしろ今でもほとんど分からなくて、それでもすごく楽しく最後まで観ちゃった。ストーリーの転がし方とキャラクターの魅力を求心力にして上手いことカバー出来てたのかもですが、それってすごいことだよね。
 さて、そんな感じでここからが感想です。上述の通り、最後まで観ても尚モビルスーツのことがよく分かっていない輩が書いているため、モビルスーツやら戦闘シーンやらについての言及はほとんどありません。結局「すごーい、かっこいーい!」以外の感想が出てこなかった辺り、やっぱり今時のちびっ子たちの方がちゃんと理解できていると思う。
 ストーリーの流れとか構成に対する感想と、キャラクターそれぞれに関する感想がほとんどです。シーズン1とシーズン2、全体を通した所感になってるかも。あまりにも長すぎたので目次置いておきます、適宜ご利用ください。


 ちなみに前回と前々回の感想はこっち!


ストーリーの感想

 シーズン1のラストの時点でスレッタの抱える精神的な問題が大分根深いというか、ミオリネとの間での倫理的な価値観の相違が浮き彫りになっていたから、これ残り12話で本当に何とかなるのか? 途中でグエルくんに丸々一話使って? と結構不安に感じていた部分もあったのですが、その辺の乗り越えるべき精神的な壁みたいなのも上手いことコンパクトにまとめて全24話できっちり完結させる方向に持って行けてたのは良かったなって思いました。道中でスレッタが闇堕ちせずに、周囲の力を借りながらも真っ直ぐ真っ当に正面から乗り越えられたから1~2話程度の曇らせと試練で終わったのかもね。
 作品全体を通じては、学園モノからスタートしたものの、親世代の因縁とか、地球との関係性とか、終盤唐突に存在感の増した宇宙議会連合とか、回を追うごとに問題の主軸が学園を飛び出して、どんどん話の規模がデカくなっていった印象がある。それだけ主人公たちだけではどうすることもできない歴史的な闇深さというか、物語世界の奥行きというのを視聴者側に感じさせることが出来ていたとは思うけれども、いかんせん24話の内にまとめるには設定として重厚過ぎて本編内では説明が足りずに記号的な要素に留められてしまっていた感があるのがちょっと残念だったなって思いました。あと最後の最後に出現した謎のレーザー送電システムは一体何だったんだ。クワイエット・ゼロ自体が想像していたよりもかなり物質寄りな外観してて如何にもラスボスですって感じだったのに、ラスボスを倒す上位存在を唐突にお出しするな。えっ、存在の伏線あったっけ? って放送当時三度見くらいしましたが、ガンダム有識者の方々がガンダム的にはままある展開だねって結構静観してて、なるほどガンダムってすげーなって思いました。でも確かに上位存在持ち込まない限りクワゼロはどうにもならなかった気がする。
 それと、シーズン2はスレッタとミオリネのすれ違い展開があまりに多すぎたのはちょっと天丼要素が強かったかな。ビジネス的理由で物理的な距離が遠い→顔を合わせて話せば互いの価値観の相違で心の距離が遠い→意図的に距離を置くことにして物理的な距離が遠い……という繰り返しのまま終盤までもつれ込んだのは、キャラクターを群像劇要素に落とし込んで描くにしても主要キャラクターの行動を分散させ過ぎというか、軸として進行している物語の“溜め”にあたる部分が長すぎたなって印象は否めなかったです。西洋骨董洋菓子店という漫画の中に「始まって15分で知り合って付き合って残り1時間45分ずっとケンカしてる」的な恋愛映画の表現があるんですけども、シーズン2通してスレッタとミオリネのすれ違い展開は大方これだなってずっと思いながら見ていた節がある。スレッタが自分で壁を乗り越えてミオリネに逢いに行く、要は22話で互いの気持ちが一つになって最終決戦に臨む盛り上がりに繋げるための展開なのだとは思うけれども、流石に後半戦10話ほぼ物理的距離か心理的距離が遠くすれ違ってるのは長すぎたのでは。まあ、この辺は最終的に互いの薬指に指輪の光るウルトラハッピーエンドという全てのマイナス要素を凌駕する加点を積んで話を締めてくれたので、個人的にはオールオッケーです! 終わり良ければ総て良しなのだ。その意味において、主人公が挫折と成長を通じて戦いに勝利して、母も姉も嫁も何一つ諦めず手放さずに笑顔で物語のラストシーンを締めくくったってのはあまりにもストーリーが強すぎた。すごい。
 そのほかの気になった点としては、放送終了後に視聴者諸氏の嘆いていた「学園モノなのに野球回も水着回もねえ!!!」って部分なんですけども、まあ、これも確かにって感じではある。別に野球回と水着回がピンポイントで見たかった訳じゃないけれど、学園モノの割に学生としてのお遊び要素が薄かったというか、学園内は出自なり所属する企業なりの縮図が常にあって、主人公一味の学園内での行動も起業活動やらモビルスーツ絡みのあれこれが多いし、イベント的な意味での学生らしさはあんまりなかった。これはアスティカシア自体がベネリットグループを前提としているから致し方ない側面もあるとは思うけれども、モビルスーツがメンテ中だから野球で勝敗決めようぜ! っていうトンチキ決闘野球回とかの“抜け”の部分があっても良かったなって思いました。設定として決闘にモビルスーツを必ずしも使わなくて構わないという下地は知っていたとしても、終盤で唐突にフェンシング始められるよりかは良いのでは。もう1クールくらいあれば、この辺の息抜き部分もあったのかもしれないですけどね。それはそれとして、ミオミオとスレッタとエリクトinホッツさんのドタバタ珍道中とか日常回とかは無限に見続けたいので、ゆるギャグ的続編もお待ちしています。

スレッタ・マーキュリー

 問答無用の主人公でしたね。シーズン1の常勝~善性による周囲の行動変容~乗り越えるべき課題の提示、シーズン2の挫折と敗北~成長と自我の獲得~ダメージを負いつつも圧倒的勝利を収めるというストーリーの王道を征くタイプというか、まさに友情・努力・勝利を体現するというか。正道を真っ直ぐに走り抜けて突き進んでハッピーエンドを掴み取る辺りジャンプの主人公的要素が強すぎやしないかこの子。日5ってすげーんだな。上述もしましたが、自分が成長した結果として嫁も姉も母も夢も全部手に入れて笑顔でラストシーンを迎えるのは主人公力があまりにも強すぎるでしょ。
 正直な話、彼女を取り巻く環境、特に出生経緯やら生育環境やらがあまりにもハードモードだったし、信じていた家族と婚約者たちの共謀により決闘で敗北を喫した上で全員自分を置いていくという、今までの常勝環境からの叩き落とし方というか心の折り方がエグすぎて、挫折した時点でワンチャン闇堕ち展開あるんじゃないかってシーズン2は結構恐々としながら見ていました。が。なんというか、杞憂だったというか、立ち直り方があまりにも光属性すぎてものすごく眩しかったですね……。地球寮の面々の存在が大きかったってのは勿論なんですけども、泣いて泣いて落ち込んで、お腹すいて起きて、つまみ食いタヌキがバレて、温かい食事と地球寮の面々の優しさで立ち直って、姉の真意を理解して、それでも家族が好きだから止めに行くしミオリネにも面と向かって逢いに行くって、あんまりにもまっすぐ過ぎて。19話ってミオリネの失意と失墜が深い分スレッタの立ち直り方がより眩しく見えるというか、これまでマイナス要素として見えていた素直さがプラスに転じた瞬間に、これ絶対闇堕ち展開ねーなって確信して安心しました。
 しかし自分の境遇に対する悟り方が振り切れ過ぎてない? 学園壊滅的に破壊されてるし周囲の状況も極限下にあるとはいえ、知らされて間もない自分の出生の経緯をあんなに淡々と語れるってなかなかないぞ。あとその辺からの肝の座り方というか、自らの命を勝負のテーブルに乗せる覚悟の決まり方というか、進むべき道を見定めてからのもう一段ギアが上がった感じが引き返すことのできない結末への道を歩んでゆく主人公感あってとても良かった。
 終盤のキャリバーン搭乗からのバトルは、もう問答無用の格好よさでした。上述もしているんだけどモビルスーツのこととか結局全然理解できないまま最後まで観ていたのに、やっぱり全編通してワクワクドキドキしたシーンってスレッタがエアリアルやキャリバーンに乗って活躍するバトルシーンだったんだよな。キャリバーンには命削って乗ってるから終始苦しそうなのは見てて辛かったけれど、得物が魔女の箒って感じでああなるほど! 水星の魔女! ってタイトル回収というか、やっぱりスレッタこそがタイトルロールだと実感したというか、観る側として非常にカタルシスを感じたりもしました。こらそこゲーミングガンダムとか言わない。むしろあれがあったから最後まで新商品Bだったんだなって納得しかない。

ミオリネ・レンブラン

 シーズン2はマジで激動の人生送ってんなこの子……ってしみじみ思いながら見てしまった。スレッタを取り巻く問題の根底をきっちり見極めているというか、己の善悪の判断基準を母親に委ねている、からこそその依存先を自分にスライドすることは根本的な解決には結びつかないって見抜いている、この辺の本質を見る力がやっぱりすげーなって思うし、その責をスレッタにぶつけずに元凶のプロスペラにダイレクトアタックでレスバしに行くあたりのムーブが最高に格好いいなって思いました。終始自分の闘う土俵を知っている感じが良かったね。しかしばっちばちに嫁姑戦争やり合いすぎじゃないこの二人? こえーのよ。
 シーズン1の終了時点でミオリネの中ではスレッタは特別で大切なたった一人の存在にきちんとなっていたんだなってのが二人の初対面時から考えれば感慨深くもあり、だからこそシーズン2でスレッタを蚊帳の外の安全圏に置くというミオリネの決断は独善的でありつつも、それこそがミオリネがその時点で出来る最大限の愛情表現だったってのが大変しんどかったです。大切なものへの接し方が不器用の権化というか、流石ダブスタクソ親父の娘って感じで見ていてなんとも歯痒かった。大切だからこそ遠ざける、その過程で自分が相手から嫌われても構わない、何故なら嫌われるだけのことをしている自覚があるって三段論法をやめてくれ。かくいうミオリネも結局そのツケを自分で払う結果になるというか、プロスペラの暴走を止められず地球で無用の戦火を起こす引き金を引いてしまうというか、スレッタの心をブチ折った分だけ自分の心もブチ折られていた辺りシナリオ容赦ねーなってドン引きしていました。でもこの辺まではミオリネ自身の行動と選択の結果であって、そしてここまでが彼女一人で到達できる場所の限界だったんでしょうかね。自分の選択と行動に対してなまじ責任感が強いから、自分のせいで起きてしまった出来事を受け止めようとして、受け止めきれずに壊れかけてしまう。いやほーーーんと、スレッタが迎えに来てくれて良かったね……。シリーズ全編を通して「自分一人で全て背負おうとせずに誰かと分かち合おうとする姿勢」「大切な人は鳥籠に入れておくのではなく、危険を承知の上で成長と成功を信じて送り出す覚悟」辺りの精神的な到達点に至ったのがミオリネの成長部分だったんだろうなって思いました。
 個人的にやっぱり好きだったのは、トマトの遺伝子コードに隠されたミオリネママからのメッセージ=クワゼロ停止コードの下り。展開もフラグ立てもベタだしロウジくんのファインプレーがなければ解析されることもなかったという意味での偶発性も否めないけれども、やっぱりこういう展開はアツかった。ミオリネママは本気でミオリネがクワゼロ止めようと思ったら、停止コード打ち込むところまできっと辿り着くって思っていた、ミオリネ自身が解析にまで至らなくてもきっとミオリネを支える仲間たちがそれを成し遂げるだろうと踏んでいたんだろうなって辺りが窺えて良かったですね。ミオリネママも結局謎多き人だったな……。
 さておき。一番最初はトロフィー扱いされてる雁字搦めの自分の環境に嫌気がさして逃げ場所として地球に行こうとしていたのが、最終的に己や己を取り巻く業と真っ向から向き合うために地球に居るってラストシーンにたどり着いたって対比も良かったな。最初は単なる理想郷くらいの気持ちだったんだろうけどね、スレッタと二人でなら自分の宿業と向き合えるって覚悟を持って地球で正しく地に足つけて生きる道を選んだミオリネは、もちろん幸せなことばかりではないだろうし辛いことも多々あるだろうけれども、それでも自分で決めた自分の人生を目一杯生きている感じで見ていて安心しましたね。これからスレッタといっぱい楽しく幸せな日々を一日でも多く過ごしてくれ……。

グエル・ジェターク

 スレッタが大切なもの何もかも全部を一つも溢さずに得ることが出来たタイプだとするならば、グエルは大切なものが悉く自分の手からすり抜けて、それでもたった一つ、家族の繋がりだけは必死で手中に捕まえることが出来たタイプですかね。もう彼に関してはこの作品のもう一人の主人公だとすら思っている。少なくともサブキャラクターなんて立ち位置ではないでしょ。スレッタとミオリネは別々に行動していたりすれ違ったりしていても流石に同じストーリーの中で動いている存在だってのはわかったんだけど、グエルに関しては明らかに別のサブストーリー設定されてないか? って思う場面が多々ありすぎました。特にシーズン2からは結構顕著に。水星の魔女という同じ舞台設定、同じ世界線、同じ時間軸で生きている、けどグエルだけ別のストーリーラインを走っているというか、たまにスレッタ達との物語線が交錯するだけであとは別種の成長過程を辿っている感があったな。
 彼もスレッタやミオリネ同様、激動の人生を送っている組なのはもう見るからに明らかなわけですけれども、グエルの場合はどちらかと言うと成長した結果としてどういう人物像をラストシーンで想定しているかという青写真が先にあって、初出の人物像からいかに最終到達地点に向けた成長過程を辿らせるか、って逆算的に山あり谷ありの人生組まされてる感があった気がする。序盤で調子に乗っていたグエルが中盤で一気に転落していくあたりの流れで、この作品は因果応報はブレずにやりそうというか、自らの行いに対する報いはきっちり受ける系作品なんだろうなって勝手に思っていたんですが、デリングやらプロスペラやらの親世代は目的こそ果たせなかったものの決定的な懲罰は受けずに咎を全部シャディクが持っていってしまった辺りで、グエルのこれは因果応報的展開だったのではなくて成長のための挫折と転落と喪失であって、そこからの人生の指針の獲得と再起による人格変容を狙ってたんだなって認識を改めました。というかスレッタもミオリネもおんなじ感じの成長曲線辿ってんな書き出してみたら。
 それにしてもグエルくん、スレッタを取り巻くあれこれに対してあまりにも健気すぎないか。自分の会社の存続が絡んでいるとはいえ、親の支配から引き離すための八百長決闘に手を貸して、プロスペラの暴走を止められずに引き起こされた惨劇で心が壊れていくミオリネに寄り添って、全てを乗り越えてやってきたスレッタの覚悟を問うて道を譲るって。いくら好きな子のためとはいえ、なかなか出来ることじゃないぞ。彼もこの先たくさん幸せであってほしいですね……本物エラン様と秘書セセリアちゃんとの最後のやりとりが面白すぎたので、是非こちらも若社長のドタバタ珍道中スピンオフをやってほしい。

エラン・ケレス

 4号も5号も本物もそれぞれキャラクターが立っていて非常に良かったですね、おんなじ外見でも三者三様に違う部分が結構明確に表れていた気がする。
 結局エランくん達の中で一番出番が多かったのは5号だったと思うんですが、最初は小物臭のするハニトラ噛ませ要員くらいの位置付けで出て来たのかなって思っていたら、ノレアとの邂逅と離別辺りからびっくりするくらい熱血野郎に変貌してびっくりしました。彼の良さはその図太さと生き汚なさだよね。ノレア暴走辺りで学園外に逃亡せずに学園内に潜伏して地球寮の外からちゃっかりスレッタ達の話を聞いていた辺りのムーブが好きすぎたな。5号がスレッタ達に合流した辺りから、終盤に向けて加速度的に話が進んで面白くなっていったよね。エンディングでちゃんとノレアの描いた景色の場所を探し続けているのも本当に好き。早く見つかるといいねって思う反面、これからも手帳と一緒に旅を続けてほしいとも思ってしまう。
 本物エラン様も登場シーンの短さの割にキャラが立ちまくってておもしれー男でしたね。グエルくんのケレスさん呼び結構すき。ペイル社がAIで次代を選出しているというのも非常に興味深い設定だなって思いましたが、それによって選ばれたエランのパラメーターが見事なまでにモビルスーツに振られてなくて他は完璧ってのがまた面白い。しかし風向き3BBAを出し抜いて水面下でヘッドハンティングの話を受けて颯爽と辞表叩きつけてペイルを去っていくあたり、マジで有能かつ一番風向きを読めていたってオチが美しくて大変良かったです。座る椅子がなかったのではなく、彼は椅子に座る気などなかったのだ……。
 4号もね、どんな形であれ最後にちゃんとスレッタともう一度会えて、言葉を交わすことができて良かったなって思います。5号がスレッタに明かしてくれた4号の末路が内容ほぼカットであっさりしていたから「あれっそれでおしまい?」ってちょっと肩透かし感があったので、最終盤でがっつり再会シーン用意してあって本当に良かったです。ミオリネとシャディク間とはまた違った形の、実り色づく前に摘まれてしまった淡い果実とのお別れって感じで滋味深かったな。最後までありがとう4号。

シャディク・ゼネリ

 おま……お前……お前ってやつはも〜〜〜〜〜!!! 最終回から随分時間が経っている筈なのに、こやつに対する情緒だけがいつまでも完結しないんですけどどうしてくれるつもりなんでしょうかね。ほんと。
 戦争シェアリングによって不利益被ってる地球側への正当な利益分配ってのがシャディクの狙ってたとこなんだろうなという認識でいるんですけど、この辺のシャディクの目的が明らかになる辺りで、水星の魔女という世界の広さやら奥行きやらも同時に提示される、物語世界が広がっていく感じがしましたね。それにしても、シャディクとプロスペラの間では明確なやりとりがないのに、互いの行動が互いの目的を阻害しあうシャドーボクシングの様相になっていたのは草。互いに意味不明なカウンターが思ってもみない方向から飛んでくるのは大変だったでしょうね。どちらにも同情する気はないけれども。
 シャディクの引き起こしたことについては正直庇い立て出来る要素は微塵もなくて、被害の大きさを考えれば捕まえられるのも罪に問われるのも当然ではある。でも、だからといってデリングとプロスペラが裁かれるべきであろう分まで引き取っていく必要はないじゃん……なんで……。彼の生い立ちだって過酷だし、それが裏設定として情報は出てきているけれど、本編内ではこの辺の部分がほとんど明かされることのない辺り、作品の中ではあくまでも同情不要の黒幕としての立ち位置なんだなってのが明確にされていて辛かったですね。シャディクガールズ達をミオリネに託して、ミオリネとの最後の別れの後に去っていく辺りが、生き残った出演者の誰もがカーテンコールに応え眩い照明の元へと出ていく中で一人静かに緞帳の暗闇の奥へと消えていくみたいな感じがしてしんどかった……あのラスト本当にずるいでしょ。
 しかしそれはそれとしてもシャディクくん、シーズン2の間中ずっとミオリネに対して未練あるムーブがちょいちょい入るのも面白い。何でグエルとミオリネの間を割って通るんだ。自分ではミオリネを幸せに出来ないからといって、グエルくんに対しての期待値のハードル高すぎだし勝手に期待して勝手に裏切られて逆上してて草である。この辺はほんとグエルくんお疲れとしか言いようがない。ミオリネとは最初から最後まで実らぬ果実のままの関係性だったけど、互いに互いの気持ちや指向性は理解し合えている関係だったことが更にほろ苦いね。もっと違う設定で、もっと違う関係で出会える世界線が選べたのなら、きっともっと違う未来もあったかもしれないのにね。唐突にPretenderを歌い出すな。

 さて、大体ここまでであらかた語り尽くした感があるので、あとはさっくりとまとめます。相変わらずのスコーン生地感。

エアリアル(と若干プロスペラ)

 エアリアルもといエリクト。シーズン1から想定されていた通り、実態はやっぱりお姉ちゃんでしたね。スレッタに至るまでの他のリプリチャイルドも含まれていて、スレッタも合わせて13人のカヴンの子ってのはネーミングセンスすごいなって思いました。厨二心を擽られる……。それにしてもこの人数を一発で当てたアリヤの占いやっぱり凄すぎない? 彼女は彼女で一体何者なんだ。
 個人的に一番好きだったのは、スレッタが初めてエリクトと邂逅する場面。水星でスレッタと過ごした日々の記憶を語り始めた瞬間に、自分でも引くほどエグいくらい泣きました。エリクトは紛れもなく『ゆりかごの星』でスレッタを気遣っていたエアリアルそのもので、ずっと家族としてスレッタと共に生きてきたんだなって実感したら涙腺が爆発したんだわ。プロスペラも、エリクトの生きられる世界をつくることが最優先ではあったけれども、スレッタのことはきちんと娘として見ていたんだなってわかって良かったな。全体的にのらりくらりしていたからスレッタに対して洗脳一辺倒なのかなって危惧していたし、地球寮に顔を出していた時も何するつもりなんだって身構えていたけど、スレッタが家族から離れても生きていけるような居場所を見極めていただけだったことにびっくり。ちゃんと親心あったんだな……。
 エリクトはプロスペラの復讐を否定してはいなくて、でもスレッタには巻き込まれることなく自由でいて欲しい。この辺のスレッタには過去の因縁に囚われずに自由に生きてほしいという願いにはプロスペラもミオリネも賛同していて、そういった優しさと情が結果としてスレッタを突き放していくという構図は展開として非常にエグいなって観ていて思いました。そうやって突き放した結果として安全圏に置いてきた筈の妹が安全装置無しの激ヤバガンダムことキャリバーンくんに乗って本拠地に乗り込んできた辺り、お姉ちゃんの心境も心配になりました。しかし姉妹喧嘩のレベルが壮絶である。おねえちゃんがモビルスーツだと喧嘩も派手になるのね……。スレッタがお母さんのこと抱きしめてあげたいって言った時に、一瞬寂しげな表情をしてスレッタに道を譲った辺りがすごく好きでした。前述の通り、スレッタとミオリネと小姑エリクトのドタバタ珍道中は浴びるほど観たいので番外編どうぞよろしくお願いします。

ジェターク寮ズ

 というよりもラウダとペトラとフェルシーの話。ラウダくんは終始兄絡みで情緒が滅茶苦茶にされていたイメージがある。というか何で終盤になってからあんな兄弟の回想シーン出してくるの? そりゃ兄に懐くのわかるわ。常に自分の上に兄を置いていて、全ての判断軸の中心には兄がいて、だからこそ変わっていってしまった兄が許せなくなっちゃったってのも分かるんですが、自らシュバルゼッテに乗り込んでその責任をミオリネにぶつけに行こうとする辺り大暴投もいいところである。トレンド上位にところ天の助が入ってしまった辺りで世間の反応速度に笑いました、ボーボボの既出ネタなのはずるいでしょ。ペトラちゃんはペトラちゃんでたった一話の中で負のフラグ立てまくりガールだったので、速攻でフラグ回収が入った辺り、ああ……やっぱり……って感じではあった。一命を取り留めてくれて本当に良かったよ。エンディングでラウダくんとイチャラブしてて何よりでした。ラウダくんも、兄との蟠りを解きほぐした上で、自分のことを大切に想ってくれている相手をきちんと認識して向き合えた辺り、成長を感じましたね。ラウダもペトラも肩の荷が降りた感じで安心しました。幸せであれ。
 で、フェルシーちゃん。きみが超MVPだ。学園襲撃時のチュチュパイセンとの共闘も激アツだったし、本人の意思を尊重して最終決戦まで連れてって良かったね本当に。大体あんな最終盤、姉妹喧嘩の真っ最中に場外乱闘で兄弟喧嘩している時点でもう色々とアレなフラグ立ちまくりだし展開的にも脱落オチの可能性高いよなって半ば諦念と共に経過を見守っていたんですが、まさかのフェルシーちゃんによる消火剤ブチ込み喧嘩仲裁エンドになるとは思ってもみなかったのだ。本当にナイスファイト。あの展開あの流れから、今からでも助かる保険に強制加入させてフラグクラッシュ出来る手腕を持つキャラクターはそうそういないぞ。ジェターク兄弟はフェルシーちゃんにいっぱい感謝してジェターク寮の名誉マスコットにすべきである。ありがとう。

セセリアとロウジ

 この二人も非常に味があって良かったですね。セセリアちゃんは煽り力も高いけどそれに比例するかの如き非常に優秀なサポーターでもあったな。エキシビションマッチ奇襲回で冷静かつ的確に指示が飛ばせるあたり、危機判断能力は結構高そう。あとは何と言ってもセセリア懺悔室。常設ハロに向かって話していたはずが唐突にセセリアちゃん出現するのは絵面が強過ぎるのよ。でもただ単におちょくったり貶したりするためだけに介入した訳じゃなくて、きちんと問題の根本に対するアドバイスはする、まさに飴と鞭を心得ている手腕が流石でした。マルタンくんがセセリアちゃんに振り回されていた辺りのやり取りがものすごく好きだったので、できることならもうちょっとだけ見ていたかったな。
 ロウジくんも地球寮に合流した辺りからのイキイキ感が良かったですね。どう見ても人付き合い苦手そうボーイなのに、モビルスーツ絡んだ時だけ猫まっしぐらになっちゃう辺り、生粋のメカニックって感じで好き。命の危険すら想定されるクワゼロ乗り込みに興味関心以外の動機なしに便乗しようとするのは、流石に判断基準ぶっ壊れてるとしか言いようがないんだわ。あとミオリネのトマトを遺伝子解析してみようという発想は一体どこから来たんだろうな。ノートレットが品質改良した品種だからという単なる興味関心からだったとしても、あまりにもファインプレーすぎる。えらい。少し先の未来でもチュチュパイセンと憎まれ口叩き合いながら仕事してたのも面白かったです。
 ところでこの二人の関係性って結局なんだったんだ???

地球寮

 最初から最後まで光属性でいてくれてありがとう。スレッタの居場所であり続けてくれてありがとう。もう本当に最後の方は地球寮の善性だけが視聴時の心の拠り所みたいになってたわ……。地球寮メンバーに対してはもう言いたいことが山ほどあるんですけど、シーズン2の19話『一番じゃないやり方』が両シーズン通じて一番好きでした。あの辺りの下りは思い返すだけで泣ける。決して一人ひとりが突出した才能を持っているわけでもない、学生らしい価値観や感性を持っている彼らが、一人きりでは解決出来ない悩みや課題をみんなで話し合って意見を出し合いながら、より良い明日へ・より良い未来へと歩いて行こうとする姿が見ていて本当に眩しかったです。多分そういう等身大のひたむきさや優しさがスレッタやマルタン、ニカの心の居場所をきちんと作り上げて、再起させるきっかけになっていったんだろうな。彼らは卒業した後も株式会社ガンダムを通じて繋がっていて、ニカ姉が帰ってくるのをずっと待っていてくれたというのがジンときました。よかったね。成長しても、大人になっても、これからも善き心を持った人たちであり続けて欲しいなと願うばかりです。


おわりに

 ここまでで大体語りたいことは語り尽くした気がします。案の定キャラクターに対する感想が多くなってしまいましたが、それだけ魅力的だったり印象的だったりするキャラが多かったってことかな。敵味方問わずきちんとキャラクターが描かれていて、それぞれのキャラの今後の行動や展開が気になって翌週の放送をいつも楽しみに待ってしまう。両シーズン通じてそういった感情移入できるようなキャラクターメイクがなされていたのは、本当にすごいことだなってしみじみ感じました。ちなみに円盤は最終回終了後に全巻きっちり買ったので、これからたくさん反芻するつもりでいます。
 本編は完結してしまいましたが、放送後に開催された全校集会の円盤も発売決定したみたいですし、まだまだ楽しみは続きそうな予感。今後も新情報いっぱい追加されるといいな。上述してるドタバタ珍道中とか、若社長の奮闘とか、在りし日の学園生活の日常回とか、忘れ去られた野球回と水着回とか、なんか上手いこと劇場版とかでやって欲しい。とっても期待しています。
 今回は以上です!

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