【連続小説】騒音の神様 70 花守、リーダーをぶん投げる
偉そうなリーダーは、花守ほどではないが逞しい体をしていた。毎日、重たい荷物を運んでも平気な身体だ。花守にぶん投げられても平気で起き上がる。リーダーは手元にある適当に握りやすい荷物を花守に投げつけた。そしてすぐに殴りかかる。花守は、バチンと強烈なビンタをくらわせた。リーダーの体がぐらつく。花守は、リーダーの体が頑丈なことを自分の攻撃で分かった。リーダーがタックルのように突っ込んで来たところを捕まえ、持ちあげ、トラックが止まる場所まで運び下の地面に投げつけた。荷物が置かれる作業場は、地面から一メートル以上あった。リーダーは、ドカンという音とともに叩きつけられた。花守は作業場から下を見下ろしている。リーダーは起き上がれなかったが、うめき声を出しながら動いてはいた。花守は「仕事するから邪魔するな」と言い、地面で四つん這いのリーダーはゆっくりうなづいた。その間、堺のオッチャンはただあたふたしていた。花守が仕事に戻ろうとすると堺は近寄り、「すまんな、なんか。偉そうなリーダーでな、すまんな、」と言いながら散らばった荷物を片付け始めた。花守は何を言おうか迷ったが、「ちゃんと日当はもらって帰るわ」と言い荷物を運び始めた。しばらく汗をかきながら二人が荷物を運んでいると、離れた場所でリーダーが荷物を運び始めていた。リーダーはその日の終わりまで一言も喋らず黙々と荷物を運び分けた。夕方になると、山のような荷物はすっかり片付けられ、堺のオッチャン花守に「助かった、助かったわ、ありがとうな」と何度も言った。花守は日当をリーダーから手渡しで貰う。リーダーは黙って花守に茶封筒を渡した。花守の日曜日は終わった。
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